2008年7月11日金曜日

「見えない障害」

最近になって、ようやくという感じです。

「見えない障害」救済を 言語や記憶に後遺症 高次脳機能障害

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2008年7月10日】

高次脳機能障害:「見えない障害」救済を 言語や記憶に後遺症 /奈良

 ◇認定条件欠きながら、勝訴も

 交通事故で脳が傷つき、怒りっぽくなったり聞いたことをすぐ 忘れるなど、さまざまな症状が現れる高次脳機能障害は、周りから障害を負ったように見えず、「見えない障害」とも呼ばれている。昨年12月末、札幌市の 20代の女性が交通事故で高次脳機能障害を負ったとして、トラックを運転していた男性に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は男性側の上告を退け、約1億 1800万円の支払いを命じた判決が確定した。女性は脳の損傷の痕跡がないなど、障害認定の条件を欠きながらも、症状から事故で障害を負ったと判断され た。県内でも同様に、条件を欠きながらも障害認定を求めて裁判で争っている人たちがいる。原告の中には、家族や仕事を失い、経済的に追いつめられている人 たちも多い。当事者らに思いを聞いた。【石田奈津子】

 札幌市の女性の裁判では、女性が97年に母親が運転する軽乗用車に乗った際、市内の交差点で男性が運転するトラックに追突され、記憶力や集中力が著しく低下する高次脳機能障害になったとして、加害男性に損害賠償を求めた。

 1審はMRI(磁気共鳴画像化装置)で脳の萎縮(いしゅく)が見られないなど、女性が障害認定の条件を欠いていたことなどから訴えを退けた。

 2審は事故後の症状や日常行動から同障害と認め、男性に約1億1800万円の支払いを命じた。最高裁は加害男性の上告を棄却し、2審の判決が確定した。

 「時々死にたいと思うことがありますよ」。上牧町緑ケ丘1、無職、森英樹さん(57)はつぶやく。

  森さんは03年6月、最寄り駅のJR王寺駅前からミニバイクで自宅に帰宅途中、交差点で男性が運転するミニバイクと衝突した。頭部外傷、首のねんざなどの 後遺症の他、失語症や記憶障害などの症状が現れた。しかし、自賠責法に基づく後遺障害認定では、労働能力の5%が失われたなどとする「14級」にとどま り、高次脳機能障害など、精神面に関する障害は認められなかった。

 「事故後、私は以前の私とは大きく変わりました」と森さんは話す。勤務していた金融機関で客との約束を忘れてしまう、筋道を立てて話せない、感情を抑えられない--といった症状に悩まされ始めた。

  「自分にとって衝撃だった」のは、事故後、勤務先でとった自分の行動。周りからは「温厚な性格」といわれてきたという森さんだが、仕事上のちょっとした口 論から5歳年上の男性の先輩を怒鳴りつけ、突き飛ばした。「感情が高ぶってコントロールできなかった。今までなら考えられないことだった」と振り返る。

 家族との関係も壊れた。事故当時、森さんは妻と長男夫婦らと同居していた。05年4月、復職を巡って妻と口論。頭を殴り、床に転倒させてしまった。幸いけがはなかったが、妻とはその後、協議離婚した。

 仕事も辞めざるを得なかった。今は、障害基礎年金などを受給し、一人で暮らしている。「次男の子どもがこの先月生まれたのに、何もしてやれない。働けるのなら働きたいが…」と話す。

 森さんは、このような症状は高次脳機能障害の特徴で、自分の後遺障害は5級以上だとして、昨年4月、男性を相手に損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。男性側は「事故と障害との因果関係はない」として争っている。

 最高裁へ上告し、認定を求めていた女性もいる。御所市、無職、根比恵美子さん(59)。06年1月、最高裁で敗訴が確定した。「悔しい。あの事故で私の人生は変わったのに…」とため息をつく。

 根比さんは95年6月、自らが経営する喫茶店の前で、高専生が運転するミニバイクにはねられた。深夜、客を見送っていたところだった。救急車で県立医科大に運ばれ、後日、別の医院で歩行障害、味覚・きゅう覚低下などの診断を受けた。

 事故で根比さんはさまざまな障害を負った。右手の握力が失われ、タバコを持つ手もふらつく。きゅう覚と味覚が失われたため、何を食べてもおいしいと思わなくなったという。

  他にも変化が出てきた。新しい言葉を覚えられない、自分がしたことを忘れてしまう--などだ。「やかんを火にかけていても、そのことを忘れる。きゅう覚も 味覚もないから、気づいたらやかんが真っ黒」。何十人といる僧侶がお経を唱える夢を何度も見るようになった。今は精神安定剤や睡眠薬など1日12錠の薬を 飲んで眠る。

 根比さんも事故後、自賠責法に基づく後遺障害の認定を求めた。認定は労働能力の14%が失われたなどとする「12級」にとど まった。根比さんは高次脳機能障害で7級が妥当として、2000年12月に奈良地裁葛城支部に提訴。以来、裁判で争ってきたが、結果は最高裁での棄却だっ た。問題点は「意識障害が軽度など、高次脳機能障害の判定基準に当てはまらない」という点だった。

 高次脳機能障害は、脳が事故の衝撃で傷つき、認知障害や人格変化を起こす。典型的なな症状としては、注意力や集中力の低下、新しいことが覚えられない、感情や行動の抑制が効かなくなる、的確な言葉が出にくいなどがある。

  高次脳機能障害の認定には3条件あり、(1)MRIやCT(コンピューター断層撮影)などの画像で、交通事故による脳の損傷が認められる(2)事故後、刺 激を受けても反応しないなど、意識障害が一定時間継続した(3)現在、高次脳機能障害に当たる症状がある---のすべての条件を満たす必要がある。

 同障害の患者を多く診てきた「やまぐちクリニック」(大阪府高槻市)の山口研一郎医師は「高次脳機能障害は時に、MRIなどの所見に表れないこともある」と主張する。山口医師が今までに診てきた患者約270人のうち約30人は(1)(2)の症状がなかったという。

 根比さんのケースも同様だ。「頭を強く打ち、傷はないにもかかわらず、事故後様子がおかしいという人がいる。私の検査結果を全国に広げて考えると、事故後、障害が生じても、高次脳機能障害と認められていない人は10%ほどいるのではないか」と話す。



(以下、psycho)

交通事故による外傷やけがで、これまでには予想もできなかったことがおこるのです。

私は、高次脳機能障害の方には外来であったことはありません。でも、自分がそのような人を見逃しているかもしれないし、今後外来でお会いするかもしれないと思ってはいます。

精神科の中には、本当は高次脳機能障害で、精神症状があるという人も多いのではないかと思います。そういう人たちに対して、障害年金が10級台というのは、私にとっては信じられないことです。

障害年金でしか生活を立てられないこともあるだろうし、そうなったら、どうなるのだろうと不安でしかないのに、受給額があまり高くない状態になるなど、考えると自分ならば怖いです。

私の外来にも、交通事故でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまった、高校生の女の子が来てくれてます。私は、極端に言うとこの人も高次脳機能障害に陥ってしまったかも、とおもっていました。いえ、今もその考えはぬぐえません。

交通事故後に、性格が変わったなあと家族も本人も話されるのです。

確かに、少しずつ良くなったのですが、このあとどうなるかなあと思っています。
彼女の診療費は、事故によるもので保険(加害者の方の)で賄われています。

交通事故、つらいです。

2008年7月7日月曜日

EMDRを導入するにあたって

勤務先の病院で、一緒に働いているスタッフをEMDRの研修会に推薦することになって、その時に必要になった、EMDR導入の企画書のようなものを以下に掲載します。


EMDRをなぜ導入すべきと考えるか?

FDAは2004年に「抗うつ薬治療を受ける自殺傾向の児童及び青少年に対する公衆衛生諮問」 を発表し、SSRIによる治療のリスクを警告した。その後、2008年6月16日にさまざまなランダム化比較対照試験に基づいて抗てんかん薬に伴う自殺リスクの統計のまとめと評価の最新版を5月23日にインターネットで公開した。

 また、

高齢認知症患者では、抗精神病薬治療開始から30日以内の入院または死亡のリスクが大きいことが、大規模試験で示されたと、発表されている。

この知見は、『Archives of Internal Medicine』2008年5月26日号に発表された大規模地域住民レトロスペクティブ(後ろ向き)コホート研究によるものだ(カナダ)。

つまり、北米圏では、精神疾患に対する薬物療法に関するリスクが近年クローズアップされている。

また、アメリカ合衆国(米国)における医療費の高騰が精神科病床数を減少して、社会的入院を減らし、短期間による治療を地域で行うことにより、減じていった。さらに、米国での、医療保険会社では、認知行動療法などの非薬物療法が、支持される傾向が指摘されている。

上記のことから考えて、米国の精神科治療の流れがメインとなっている本邦において、いずれ精神科薬物療法に変わり、認知行動療法などの精神療法が第一選択となっていくことが予想される。

以上から、EMDRを導入していくことは、今後本邦において重要性を持つものと考えられる。よって、このことをもって、EMDRを導入すべきと推挙する。

(以下、psycho)

上記の記事も私が書いたのですが…。

EMDRとは、(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理)は、最近マスコミなどでも取り上げられることの多くなったPTSD (Post Traumatic Stress Disorder:外傷後ストレス障害)に対して最も効果的 と言われて、大変注目されている治療方法です(日本EMDR学会HPより)。

記事にも書いたように、今や米国やカナダという北米圏では薬物療法よりも、他の治療法が精神科では模索されているのです。

確かに副作用は少ないようにみえるし、短期間で終了できそうだし、よいと思います。まだまだ、効果や副作用はわからないことも多いですが。

米国やカナダがやっているから、というよりも、いずれ体にあまり負荷をかけない治療法として、確立していきそうなのです。

日本のこれまでは、精神科も同様に、北米圏のトレンドを引き継いでいることが多いです。だとすれば、当然、EMDRも導入される可能性が高いですし。

EMDR、頼りにしたいものです。

2008年7月6日日曜日

手術後

 私は6月に手術をしました。

 子宮外妊娠だったので、卵管も取りました。それは、仕方ないと私は思っています。というか、そうとしか考えられないです。

 その直後は体の異変を感じなかったのですが、復職すると最近、疲れるとおなかをこわすという事態が発生しました。

 意外でした。私は、今までそんなことがなかったので。

 あと、やたらにトイレが近くなった感じです。

 子宮外妊娠で、緊急手術するとこういうことが起こるのでしょうか?

2008年7月5日土曜日

体に「悪い」こと

嗜好品は体によくないのがいいのでしょう。例えばタバコ、でしょう。

≪喫煙が中年期の記憶障害のリスクにつながる可能性がある≫

提供:Medscape

大規模プロスペクティブ(前向き)コホート研究によれば、喫煙は中年期の記憶障害と認知機能低下のリスクを増大させる。

【6月12日】大規模プロスペクティブ(前向き)コホート研究であるWhitehall IIのデータ分析で、喫煙は中年期の記憶障害と認知機能低下のリスクを増大させることが示された。

この知見はフランス国立保健医学研究所(ビルジュイフ、フランス)のSéverine Sabia, MScらが『Archives of Internal Medicine』6月9日号に発表した。Sabia 氏がMedscape Psychiatryに語ったところによれば、喫煙歴のない被験者に比べて喫煙者は、その他の交絡因子で調整しても、記憶試験のスコアが最下四分位域にな るリスクが37%高かった(単語20語のうち想起できるのが5語未満である傾向が強かった)。

中年期での認知機能低下
「認 知機能低下が始まるのがまさに中年期であるということを考えれば、このリスクはきわめて重要だ」とSabia氏は記している。この年齢層でこうした連関が あるというエビデンスは、将来の認知症のリスク因子である症状発現前の認知機能の障害と低下の病理発生に喫煙が関係するという説を支持するものと言える。
人口の高齢化が進み、認知症の高齢者の増加が予測されるので、修飾可能なリスク因子を特定することが重要だと氏は記してお り、さらに「今回の我々の結果によれば、喫煙は中年期の認知機能に有害な影響があると言える。(しかし)禁煙から10年経つと、認知機能に対する喫煙の有 害作用はほとんどなくなる」とも述べている。「したがって、公衆衛生の広報は全年齢の喫煙者を対象にしなければならない。」
著者らによれば、最近のメタアナリシスにおいて喫煙は認知症のリスク因子であることが結論づけられているが、喫煙と認知機能(思考、学習、記憶)との関連性を調べる研究は、被験者が追跡外来に再訪しなかったり、喫煙関連疾患で死亡する者が多くいるために、困難である。 その反面、中年期でのリスク因子がその後の認知症にある役割を果たすというエビデンスが増えつつある。

禁煙が記憶を損なう?
研究グループは、中年者の喫煙歴と認知機能との関連を調べた。
健 康と疾患における社会経済的傾向を検証することを目的としたWhitehall II研究のデータを研究グループは分析した。Whitehall IIの登録者は、1985年から1988年までの調査開始時(第1期)に35歳から55歳であったロンドンの公務員10,308例(男性6895例、女性 3413例)である。
Sabia氏によると、認知機能の評価は第5期に行った。この時点での被験者の年齢は45歳から68歳(平均55.5歳)であり、その5年後の第7期での被験者の年齢は50歳から74歳(平均61歳)であった。

第5期には5388例、第7期には4659例から、記憶、推論、語彙、意味的・音声的流暢性の検査で認知機能のデータを得た。
喫煙の評価は、調査開始時と第5期に行った。調査開始時の平均喫煙本数は1日に14本であり、1日に吸う本数が5本未満である者が25%、1日に1箱から2箱吸うヘビースモーカーが25%いた。ただし、氏によると1日に2箱よりも多く吸う被験者は27例しかいなかった。

4つの重要な知見
この研究の重要な知見は4つあると、著者らは記している。
第 1に、中年期での喫煙は記憶障害と類論能力低下に連関していた。第5期では、性別、年齢、社会経済的差、健康習慣、健康法で調整すると、現在の喫煙者は喫 煙経験のない者に比べて認知機能の成績が最下四分位域に入るリスクが37%大きかった(オッズ比は1.37、95%信頼区間[CI]は 1.10 - 1.73)。
第2に、長期間喫煙していた元喫煙者(研究が開始する前に喫煙を止めた者)は喫煙者に比べて、語彙成績低下と発話流暢性低下のリスクが30%少なかった。
第3に、中年期での禁煙には、飲酒量の減少、身体活動の増加、フルーツや野菜の摂食量の増加といった健康習慣の改善が伴って見られた。
第 4に、喫煙者は非喫煙者に比べて、第7期まで(平均追跡期間 17.1年間)に死亡する傾向が大きく、認知検査を受ける傾向が小さかった。このことは、検査を受けていない者の中に認知機能が低下している者が含まれて いて、後期中年期における喫煙と認知機能との関係が過小評価されている可能性があることを示している。
他の研究により、軽度の認知障害を有している者は臨床的症状から診断できる認知症に進行する速度が速いことが示されていることから、以上の知見は重要であると著者らは記している。

禁煙するのに遅すぎることはない
「この20年間において、喫煙に関する公衆衛生の知識の広報によって喫煙行動が変化してきた」と著者らは記している。今回の研究に基づき、「公衆衛生の喫煙に関する広報活動は全年齢層の喫煙者に対して継続すべきである」と著者らは結論で述べている。

こ の研究は、英国医学研究審議会、フランス研究省、欧州科学財団の支援を受けている。Whitehall II研究は、英国医学研究審議会、英国心臓財団、英国保健安全執行部、英国保健省、米国立心臓肺血液研究所、米国立加齢研究所、米国医療政策研究機構、 John D. and Catherine T. MacArthur財団中年期能力・経済・健康開発研究ネットワーク(Research Networks on Successful Midlife Development and Socioeconomic Status and Health)の支援を受けている。著者のうち2名が資金を受けている。その他の著者の開示情報には、関連する金銭的利害関係はない。
Arch Intern Med. 2008;168:1165-1173.

(以下、psycho)

 私は、禁煙推進派です。タバコはやめてほしいです。個人的には、嫌いなので。

 確かに上記の記事のように、喫煙には体に悪いことが山積みです。だから禁煙しましょう。

 でも私はひねくれ者なのでしょう。そういわれると、本当にそうなのか?と思ってしまいます。もしも、体に悪くて、私のように嫌いな人ばかりであれば、なぜタバコを販売するという仕事がなくならないのでしょう?なぜ、タバコを吸いたがる人がいるのでしょう?

 タバコに関しては、ニコチンという依存物質がありますから、依存症とみていいでしょう。ニコチン依存症もよく知られたことです。そうなってしまうとわかっていても、つい吸ってしまう。吸いたくなってしまう。

 私個人としては、タバコは嫌いですが、人間の「体に悪いことをしてしまう」という心性は、むしろうなづけるというか、心から「そうだよね」と言いたくなる部分です。そして、それがあるから人間だろうと思えるのです。

 世の中、正しいことだらけだと、つらいですから。

 私はいつも肝に銘じているのは、私が個人としてタバコを嫌いであるということであって、医療関係者としてタバコを勧めないということとは違うということです。

 正しいことを、押し付けることはしたくないのです。

 正しいことをいっていると、なんだか自分が偉くなったような錯覚が起ってしまい、自分がダメになりそうな気がするのです。

 いや、こんな「正しいこと」をいっていると、このあと、甘いものの誘惑に耐えられない自分が「悪いこと」をしているという罪悪感にとらわれそうで、余計にそう思うのでしょう。

 正しいことをいえば、いい人とか、正しい人というわけでもないですからね。

2008年7月4日金曜日

高校生の頃からの疑問

 私は、精神鑑定は難しいので、したくないという気持ちでいるのです。それと同じことを書いている記事ではないでしょうか。


 
≪判断分かれる精神鑑定 難しい法的な評価≫

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2008年6月30日】

 茨城県土浦市の3人殺害事件で27日、無罪を言い渡した水戸地裁土浦支部の判決は公判中に行われた精神鑑定を重視、心神喪失で刑事責任能力はないと判断した。だが精神鑑定の扱いをめぐっては最近、裁判所によって判断が分かれている。

 最高裁は4月の傷害致死事件の判決で「合理的な理由がない限り(専門家による精神鑑定結果を)十分尊重すべきだ」とする初判断を提示した。

 東京都渋谷区の短大生殺害、切断事件で兄の元歯学予備校生に対し、東京地裁は5月「死体損壊時は多重人格状態で、心神喪失状態だった」と結論づけた精神鑑定を認定。「殺人を有罪、死体損壊は無罪」とし、鑑定重視の姿勢を示した。

 一方、渋谷区の夫殺害、切断事件で東京地裁は4月、「心神喪失」とした鑑定に縛られず、犯行前後の行動などから「完全責任能力があった」と認定した。

 精神鑑定の扱いについては「精神医学を法的に評価する司法精神医学がまだ確立されてない」(ベテラン裁判官)との意見があり、大きな課題があるのが実情。

 来年5月から始まる裁判員制度では、一般市民が責任能力の有無を判断することになる。鑑定はその指針になる重要な判断基準であり、分かりやすい鑑定が今後ますます求められている。



(以下、psycho)

 精神鑑定を依頼されたことは、私にはないのですが、先輩(大学医局時代の)によれば、難しいそうです。

 「難しい」というのは、形容詞なので、どうしてもお互いが納得できる部分が難しいのですが、精神科的な考え方を、検察や司法関係者に伝えるのが難しいという意味のようです。

 私は、違う意味で難しいと思います。
 精神科的な考え方よりも、加害者がその事件の際に正常な精神状態であったかどうかを、事件後に追跡するのは難しいだろうと思うのです。というか、私はべつに「難しい」ことを考えているわけではないと思います。

 そんな難しいことをするよりも、悪いことをしたら罰を受けるというストレートな原則がいいのではないかと考える単純な私なので、精神鑑定の意味がよくわからないです。

 20数年前の本多勝一著「殺される側の論理」の最初の章で書かれていたのが、脳性マヒの子供への殺人を犯した親の話でした。この人は、心神喪失という名の下で罪状軽減につながったのです。それはでも、おかしいと当時高校生の私は思いました。

 事件当時、精神的に不調なら無罪?でも、やったことは精神的に不調かどうかには無関係でしょう?それをずっと考えていました。

 そして、日垣隆著「そして殺人者は野に放たれる」(新潮文庫)も読みました。これはつい最近ですが。

 高校生の頃の疑問と結論は、結局当時と同じ所へ行きついてしまいました。そして、それでようやく私は納得できたのでした。











2008年7月3日木曜日

社会的入院って、なに?


精神科で問題になっている、社会的入院のお話です。

2008/06/30(月)
《統合失調症9793人のうち417人が退院 厚労省の「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」》

厚生労働省は25日、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」(座長・樋口輝彦国立精神・神経センター総長)を開き、「精神病床の利用状況に関する調査」の速報を報告した。調査対象は、国立病院機構、自治体病院、大学附属病院などの精神科病院1542病院。うち回答提出施設数は996、提出率は64.6%だった。内訳は、自治体病院77(提出率47.0%)、大学附属病院32(同41.6%)、国立病院機構16(同45.7%)、公的病院13(同27.1%)、民間病院(日本精神科病院協会員)858(同70.4%)。それぞれ入院患者の1割を抽出し、2月15日時点と3月15日時点の状況を調査した。
主診断別にみた退院の状況(2月15日時点と1カ月後の比較)は、統合失調症は入院9793人の中退院は417人。認知症疾患は2837人中206人、気分(感情)障害は1078人中217人、アルコールによる精神・行動の障害は733人中114人、その他の精神病性障害は531人中62人だった。退院の割合が大きかったのは、小児期・青年期に発症する行動・情緒の障害が38%で最も多く、次いで生理的障害・身体的要因に関連した行動症候群32%、神経症性・ストレス関連・身体表現性障害27%、気分(感情)障害とその他の精神作用物質による精神・行動の障害がそれぞれ20%の順となっている。

(記事提供:医療タイムス)

(以下、psycho)

 症状は改善して退院しても生活できるが、退院して生活する場がないために入院している状態、それが社会的入院、と私は理解しています。

 精神科の患者さんたちは、社会的入院が多い、それゆえに退院促進が必要である、と言う流れの中で、上の記事が意味を持つのだと思います。これが、内科や外科であればこのようなことは、考えにくいのです。

 精神科に対する偏見を持つな、といっても、持つ人は持ってしまいます。だからこうして、退院促進するための干渉が必要なのでしょう。

 でも、それも悲しいと思えてしまうのですが。

 もちろん、退院したからといってかならずしもその場所がバラ色の場所ではないと思いますが、その苦労を引き受けて暮らしていくのも、生きていく味なのかもしれない・・・と思ったりします。この考えは北海道浦河町のべてるの家のもので、私がそれに賛同しているのですが。

 確かに、今苦しんでいる人にとって、無責任に響くかもしれません。

 他の疾患のように、よくなったら退院することが当たり前になるには、どうしたらいいか。その一つが上の記事だと思います。
 
 でも、出来ればその退院した人たちがどんな風に暮らしているかも、報告してほしいものです。

2008年7月2日水曜日

高齢者のPTSD

 
私は、そうなる、と思っていた記事でした。



≪高齢患者に対する心的外傷後ストレス障害(PTSD)の評価を推奨≫


ニューヨーク(ロイターヘルス)‐Journal of Clinical Psychiatry誌5月号で発表された研究結果によると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は高齢の被験者において珍しくなく、PTSDの持続期間 の診断はこの集団における抑うつ状態および不安の症状と関連している。

Universitatsklinikum Hamburg-Eppendorf(ドイツ ハンブルグ)のDr. Carsten Spitzerらは、ドイツ人成人3,170名のトラウマへの暴露とそれに続くPTSDのリスクを調べた。

参 加者は、若年群(44歳以下)、中年群(45歳から64歳までの間)、および高齢群(65歳以上)に分類され、PTSDモジュールである Structured Clinical InterviewおよびComposite International Diagnostic-Screenerによる評価を受けた。

全体で被験者1,730名(54.6%)が少なくとも1回のトラウマ的体験を報告した。高齢群のトラウマへの暴露のオッズは、若年群より4倍近く高かった。高齢群のトラウマ的体験の平均回数(2.06)も、中年群(1.31)および若年群(1.34)より有意に高かった。

一 般に、トラウマへの暴露のリスクは、高齢女性と比べて高齢男性で有意に高かった(p=0.012)。しかし、PTSD有病率に性差はなかった。PTSDと 診断された高齢の被験者は、PTSDのない被験者より精神医学的症候群罹患のオッズが有意に高かった(オッズ比=9.10; p<0.001)。抑うつ状態および不安が最も多い病状であった。>


(以下、psycho)

 高齢者のトラウマが今まで全然問題にされていなかったとしたら、それはすごい問題だと思います。私はだいたい外来で高齢の方を診察する機会は少ないのですが、それでも1%くらいはそういう方がおられるのだと思っています。

 これまで、DVの被害にあわれた方(70歳代)、セクハラの被害にあわれた方(60歳代)数名とお会いました。20歳代のころからの被害でしたが、年月がたてば解決するというものでもないですし、今でもそれが継続しているということがほとんどでした。

 どの人も皆、DVとか、セクハラという言葉が一般的になったことで初めて自分の話を同性の私にしてみようと思った、とおっしゃいます。私が生きているのと同じ年月くらい被害にあい続けている方たちがたくさんいると思うと、私に何が言えるのか、何をできるのかと、苦しくなります。

 でも皆さん、「話を聞いてくれて、ありがとう」と言ってくれるのです。もちろん、傾聴すればいいというものではないと私はわかっている・・・つもりですが・・・。

 時々、「昔はよかった」という懐古主義の方がおられます。
 
 私はそうは思いません。今の時代に、こうして、DV,セクハラ、PTSDなどの言葉が生まれて、多くの人が知るようになったことで、自分の苦しみに言葉が与えられて、解決が難しいとしても自分自身に対して自分がおかしい経験をしているわけではないのだという、納得というか、感覚が得られるのがよかったのかもしれないのです。

 そして、よかったはずの昔の方が(特に男性が多いようです)、DVやセクハラの加害者なのですから。

 もちろん、これは私個人の感想でしかないです。
 
 ただ、私の経験がこの感想を作っているといえましょう。