2008年12月16日火曜日

「私たち、発達障害と生きてます」


書評「私たち、発達障害と生きてます」 高森明、木下千紗子、南雲明彦、高橋今日子他著 ぶどう社 1700円(税別)

 発 達障害の当事者の人たちが、診断されるまで、診断される前後の困難、サバイバルなどについてその人なりの視点で書いた本です。

 特に興味をひかれたのは、アスペルガー症候群の当事者である高森明さんが、章の間で書いているコラムで「中途診断者の魅力的な側面」と題して書いている点です。

 中途診断者は、私の外 来にもたくさん来ますが、子どもの時から支援を受けているわけではないので、なかなか本人ご自身も、周りも受け入れがよくなくて、私は対応に苦労している 側面があるのですが、これを肯定的に受け止めている次の一文がとても気に入りました。

 「しかし、私は敢えて、早期に診断を受けた当事者とは別の意味で有意 義な人生だったと考えたい。その苦労と引き換えに、中途診断者は実体験を通してマニュアルにはない経験を蓄積していった。マニュアルにはない「生きるため の知や技」を身につけていった。おそらくだれよりも多くの試行錯誤を行わなければならなかっただろう。(中略)文字通り、社会を体全体で味わってきたと 言ってもいいかもしれない。この経験は一つの財産といってもよい」。

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