書評「虐待を受けた子どものプレイセラピー」 エリアナ・ギル著、西沢哲訳 誠信書房
この本に関して言うと、仕事で使うつもりだったので書評を書こうと思っていなかったのですが、やはり自分のためにこうして書いております。おもしろい、と いう本ではありません。虐待を受けた子どもたちに対して、援助者としてどのようなサポート方法があるかという本です。さりとて、マニュアルと言いきれるほ ど事務的な本ではありません。これは、虐待を受けた子どもたちへのサポートとしてのセラピーに方法論が確立しきっていない、柔軟性のある分野であるからこ そ言えることでしょう。
その中で私がこの本の書評を書こうと思ったのは、数ある虐待支援の本の中で、この本がかなりわかりやすく解離症状の治療について書いているためです。
(9)解離症状の治療
- トラウマを受けた人は解離症状を示すことがある。セラピストは解離症状の存在の有無及びその程度を適切に評価し、解離のプロセスに治療的接近を図らねばならない。
- (子供の解離現象への対応)
- 言葉を作ること;「「何かをしているときに、知らず知らずのうちに気持ちがどこか別のところに行っちゃってるって言うことは誰にでもあることなのよ」→肯定した場合にこの状況に名前を付ける。
- 解離使用のパターンを評価する;最近起こった解離状態について聞く、どんなときに最も怒りやすいのかを聞く。→この後で、解離が起こる場合の類似性について話し合うのもよい。
- 解離状態に至る流れを探る;解離を防衛として用いる傾向のある人は、解離反応を生じるための独自のやり方をもっている。そこで、身体、情緒、感覚、思考に特に注意を払いながら子供に解離を起こしている「ふり」をしてもらうという方法がある。
- 「適 応的である」という説明;解離反応に対する肯定的コメント「人は誰でも、とても怖いことがあったり、あまりにも苦しすぎて気持ちを感じるのが大変な時があ るのよ。そんな時には誰でも、しばらくの間、心がどこか別のところに行ってしまうものなの。そうすることができるのはとてもよいことなのね」
- きっかけを理解する;解離がどんなときに役立つかを子供と話し合うことによって、セラピストは何が子どもの逃避反応を誘発するきっかけとなっているかを把握できる。
- 問 題となる情緒へのアプローチ;子供にとってどのような状況や情緒が問題となるかが同定されたら、それらの状況や情緒をセラピーによって取り扱っていくこと になる。子どもはそれらの徐著を回避したり抑圧しなくていいように、対処術を学ぶ必要がある。(例)特定の感情の外化;「怒りの絵」、「私が最も腹を立て るときは・・・」などのオープンエンドの質問を完成してもらう。
- 逃避反応に変わる行動の探究
- 解離反応の治療の目標は、どのようなときに解離反応を利用するかを自分がコントロールできているのだという感じを子どもが持てるようになること、そして解離反応に変わる別の対処技術を子どもが身につけることである。
このような書き方をしている本は今までほとんど知らずにいたからです。
すべての項目を使ってサポートをと思っています。もちろん、私の依頼している心理士さんのチームがすでにしていることでもありますから、どのようにこれを統合していけばいいのかと、今考えています。
そしてこのように考えるきっかけをくれた本でした。
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