2008年11月29日土曜日
自分はどうしてほしいのか?
このことがはっきりすると、ある程度やることが決まるせいか、気持ちがすっきりするようです。
そんな私も、昨日ガーンとくることに出会いました。職場の人間関係です。
諸先輩から見れば、私のしていることは危なっかしく見えるのかもしれませんし、確かに先輩のいうことを素直に聞くタイプでも私はないので、ひとこともふたことも忠告があるのは私にもわかります。でも、それでも、さすがにそういういい方はないのでは、ということがあったのです。
昨夜からずっともやもやしていましたが、朝起きてから私自身に「自分は、その先輩にどうしてほしいのか?」と問いかけてみました。
すると、話が非常に単純で「ひどいいい方をしたことを伝えて、私に謝ってほしい」ということでした。
こうなると話は簡単です。これを実現するために私はどうしたらいいのか、ということを行動に移せばいいだけですから。さしずめ、私は誰かにこの件を相談することになるでしょう。
今までは、わけのわからないことで延々となやんでいたのです。あの時ああだったから、今になっているのだろうか、などなど・・・。
でも、悩んでいる私も、外来に来てくれる人も同じ人間なわけですから、同じことを聞いたり、同じことをしていけばいいのです。精神科医になって10年以上たってようやくこのことに気が付きました。長い!
2008年11月28日金曜日
腸炎と肩こり・目の疲れ
しかしまた、びっくりするような感覚障害というか、そういうことが起こったのでした。
私は息子からどうも腸炎をうつされたようで、一昨日から吐き気とおなかのごろごろに苦しんでいました。そして、なぜか昨日から肩こりと目の疲れにも悩まされていました。
肩こり、目の疲れは私の人生の長い友人みたいなもので、今に始まったわけではないけれども、昨日は特にひどかったのです。
私の場合、腸炎は疲労が重なるとひどくなります。(蛇足ですが、ここも、すでに「あれ?」と私には思えます。だって腸炎はウィルス感染だから疲労とそう関係あるとも思えないので・・・。確かに抵抗力という意味はあるかもしれないですが)。
それで、昨日は職場で昼休みに、あいている外来のベッドで寝かせてもらいました。
すると、吐き気やおなかのごろごろはほとんどよくなって、同時に、肩こりと、目の疲れも良くなったのです!
これって、皆さんがあることでしょうか?ないんでしょうね・・・。同僚に聞いたら「そんなん、ありか?」と言われましたし・・・(口の悪い同僚なので仕方ないですが)。
というわけで、今後も藤家寛子さんやニキリンコさんの本から、私だけじゃない!という安ど感を頂けそうです。よかった・・・。
2008年11月27日木曜日
アルコール依存症についての講演
最初は、午後のせいか全員眠そうにされていたのですが、後半には皆さん目の輝きが違ってました。やっぱり興味があるみたいです。
ちなみにタイトルは「全ては依存症から始まる」というもので、依存症から派生する疾患を伝えていました。
依存症、この講演では主にアルコール依存症についてでしたが、どんな精神科の病気が関連しているか想像がつきますか?
- 児童虐待
- DV
- うつ病
- 不安障害
- 摂食障害
- けいれん発作
- 幻覚妄想状態
- 胎児性アルコール症候群
- 心的外傷後ストレス障害
- ADHD
などなどです。この話をすると、皆さん、目が違ってきました。
2008年11月26日水曜日
書評「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル著
書評「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル著、高橋啓訳 ソフトバンク文庫 780円(税別)
だれしも「売れたら」と思っている何かがあるように思います。
私の場合は、意味は若干ずれるにしても、精神科が「売れたらいい」と思っています。
この本 は、何らかの商品が世に出て人気を博するにはどのような要素が関与して働いているのかを検証しています。
その中で私は直接の環境、背景について書かれたと ころが気になりました。
特にp208の模擬監獄の話がとても気になりました。看守役と囚人役を割り当てて、監獄をこしらえるというたったそれだけで、人の 行動が驚くほど変わるのです。
これを、私が「売れたらいい」と思っている精神科に当てはめるとどうなるでしょう。もっというと、べてるの家のある北海道浦 河町と他の場所の違いがさらにわかるのではないでしょうか。
そう考えると、何度も繰り返して読まなくてはと思える本です。
2008年11月25日火曜日
2008年11月24日月曜日
書評「自閉っ子は、早期診断がお好き」
書評「自閉っ子は、早期診断がお好き」藤家寛子著 花風社 1600円(税別)
ニキリンコさんと対談をされていた藤家寛子さんのエッセイです。「そうだったのか!」の連続でした。
アスペルガー症候群の方は何人にもお会いしたことがあ りますが、その人の世界を語ってもらってはいなかったと改めて思いました。
藤家さんは世界はシナリオ通りに動いているわけではない、ということに気付いた 時、パニックになってしまったのです。
そして、こう思います。
「どうして今頃わかったのだろう。誰かもっと早く教えてくれたらよかったのに。(中 略)おそらく、子どものころに障害が発見されて、認知の仕方を軌道修正するのは、こんな失敗をしないようにするためだ。ところが、私はなんの指導も受けて いなかった」。
早期診断の必要性が痛いほど伝わってくる部分で、私も一緒につらくなりました。
でも私も実はそんなふうにある年頃まで思っていましたし、発 達障害があってもなくても、そういうことはあるのでしょうけれども、そこからどうやって違う見方をみにつけていけるのかを、私もガイドできれば、と実感しまし た。
2008年11月23日日曜日
依存症
おそらく、参加している方のほとんどが依存症の当事者か、その家族、そして依存症の人たちとかかわる病院関係者だったからでしょう。皆さん、心が広いのです。
私のつたない講演はともかく、午後にはA市でマック(アルコール依存症の中間施設)が立ち上がった記念のセミナーがありました。
新潟県からマックの人たちが応援に来てくれていて、メンバーの人たちがお話をしてくれていたのです。よかったです。その正直さがほんとうに、素敵だなあと思って、私は気持ちが洗われるのでした。
とくに、施設責任者の方のお話がたどたどしくて、そこが本当によかったです。ここだと、見栄も世間体もないし、安心できるのです。
そして、私も依存症になっても安心だなあと思って帰宅しました。
2008年11月22日土曜日
肥満児の動脈は中年並みに老化している
うーん、恐ろしい。
しばしば私もブログにしていますが、5歳児健診では肥満も問題になります。
実感として、肥満の子どもは自尊心があまり高くないです。だから、物事に積極的になれないですし、周りからからかわれて、自分がいやになりがちですし、どうしていいのかわからないという感じがあります。
でも、我が家の息子も4カ月検診で同僚の小児科医から「どうしたの、こんなに太って!!」と言われてしまいました。だって、飲みたいだけ母乳もミルクも飲ませなさい、と小児科で指導してるじゃないですか・・・と声が小さくなりましたが・・・。たしかに、カウプ指数(大人のBMIと思ってください)が、20を超えているのはまずいですよ。でも、いいのかなって思ってたのに・・・。私に衝撃が走りました。
でも今は、それほど太っていないので、ちょっと安心です。手足が細くなり、お腹だけがぽこーんという感じです。
将来的に、肥満にならないようにしてあげたいのですが・・・。
私も、どうしていいのかなあと思ったりしています。
2008年11月21日金曜日
失敗
他にもブログがあって、その役割分担を考えているうちに日々の忙しさにまぎれてしまいました。今は、それもある程度決まり、何とかやっています。
それにしても昨日はへこみました。
ある外来受診されている人の学校の先生とお話しさせていただいたのですが、そのお話の中でその人が
- 大きい音を怖がる。
- 男性を怖がる。
- 男性から誰かが叱られているところをみると泣いてしまう。
- DV家庭に育った。
その人は、外来で
- リストカットをしてしまう。
- 全然眠れない。
- 興味を何に対しても持てない。
ところが、学校の先生方の話を総合するとこの人の診断が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)となってしまいます。御両親は離婚されていて、おかあさんは虐待しているわけではないので、現在は安心できる環境のようですが・・・。
あー、この人から信用されるような付き合いができてなかった!そして、話を聞き出せなかった!と後悔しきりです。
学校の先生は、「私も、リストカットのことはつい最近教えてもらったので」と、私を慰めてくれましたが、医者として10年以上やっていたのに、このていたらくかと思うと情けなくて・・・。
まだまだです。初心に帰って、もっと話しやすい雰囲気や状況を私が作らなくては。
2008年11月19日水曜日
女性医師の継続的就労に向けての取組み
私psychoは産休・育休あわせて半年取りました。その後、復帰しました。
そのときに、いま外来に来てくれている人達は、近隣の精神科に行ってもらったり、勤務している総合病院の心療内科では、開業している先生にきてもらったり、という状況で、乗り切りました。
私は、医局とはつながりがないので、そのぶん別なつながりで周囲の人に産休をもらいました。
私はとてもラッキーだと思います。日経メディカルなどを読めば、私の状況がかなり恵まれていると、実感できます。
でも、近隣の女医さんたちとお話しすると、これがラッキーでは少子化のままだろうという結論になります。私も、サポートしますので、どんどん産休と育休をとれたらいいのに、と思います。
2008年11月17日月曜日
健診の意義
前回9月30日と同じスタッフメンバーでした。その中で、行政関係の人に、この検診で私が最近気がついたことを話しました。
5歳児健診で、就学時の方針が決まることが多いと私は思うのです。だから、逆算して、3歳児健診である程度親御さんたちに、なんとなく発達障害の可能性を伝えるようにしてほしい、ということです。
私の実感では、就学=学校での生活というのは、発達障害の子供たちにとっては結構ハードルが高いようなので、5歳児健診で特別支援を要請するかどうかが選択肢の中にあれば、学校が楽しくなる可能性があると思えるからです。
もっというと、サポートの先生がクラス全員の子どもたちのサポートに入れる感じだといいなと思うのです。そうなれば、もっと発達にばらつきのある子どもたちも、楽しく暮らせるだろうと思うからです。
そんなふうにして5歳児健診を活用してほしい。そう思っているのですが・・・。実際はこの健診に反対している小児科の先生も多く、むしろ幼稚園や保育園単位で園のお医者さんが実行したらいいという意見もあるようです。ただ、私にしてみると、幼少期の私のように幼稚園にも保育園にも行っていない子供はどうなるのかと不安になるのですが。
いずれにしても、子どもたちのために、健診制度を整えたいものです。
2008年11月16日日曜日
2008年11月14日金曜日
目に見える効率を追いすぎると、大切なものを見失う
目に見える効率を追いすぎると、大切なものを見失う。:NBonline(日�
別のブログ(http://d.hatena.ne.jp/riesakakida/20081027)に、以前に書いたことを思い出しました。
確かに効率を求めることは必要です。けれども、行きすぎるとそのときに失うものがあるのです。
効率を求めすぎると、精神障害を持つ人はいらない、そういう発想に行きつくように思えて、こわいです。ナチスドイツはそうでした。
おそらく、効率を求めることを突き詰めると、ある時点から効率が目的となってしまい、いったい何のために効率的になることが必要だったのか、わからなくなるのではないでしょうか。言い古されたことだとわかっていますが、そう思わずにいられません。
私自身の考え方が、効率を求めすぎないようにと日々思っているのです。
そのために私がしていることというほどのことでもないですが・・・。
私は日課を作ってそれをこなすようにして暮らしています。冒頭にある本で、藤家寛子さんが著書「自閉っ子は、早期診断がお好き」(花風社)で書いておられたように、日課があると楽なのです。効率的に文献を読めるし、勉強も効率が上がりますから。
ただ、息子と一緒だと、日課をこなすのがままならないことがしょっちゅうあります。
もうそんな時は、「日課をこなすばっかりだと、新しいことに出会えないから、それで息子もしくは神様が、日課じゃなくて別なことしなさい、って言ってるんだ!」と言い聞かせて、心の平穏を保つのです。
書くと、つまらないことで当たり前のように思えるかもしれませんが、そうしない頃はイライラしどおしだったので。
そうすると本当に思いがけないことが起こって、楽しかったり、別なうれしさがあるのです。
私は、これを「息子もしくは神様からのプレゼント」と言っていて、日課が消化できないときに、ぶつぶつ言ってます。
これ、意外と私にはあってました。
2008年11月13日木曜日
家族とは
クロスする感性〔第13話〕 ソウル・ファミリー,魂の家族
宮地尚子=文
1年間の滞米生活が終わり,日本に帰ってきて1か月。あっという間に日常に埋もれてしまっている。
宮地尚子 1986年京府医大卒。医療人類学と出会い,89年から3年間,米国に留学する。帰国後,医学部の教員を経て,2001年より現職。07年秋より1年間,フルブライト上級研究員として再び渡米し,暴力被害者のトラウマ治療で名高いケンブリッジ・ヘルス・アライアンスに所属(客員研究員)。近著に『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房),『医療現場におけるDV被害者への対応ハンドブック』(明石書店,編著),『性的支配と歴史――植民地主義から民族浄化まで』(大月書店,編著)。
2008年11月11日火曜日
「おかあさんががんになっちゃった」
マンガです。
まえがきにもあるように、がんを克服した本ではありません。
でも、著者の「おかあさん」は本当に満足した暮らしをしていったのではないかと思 える本でした。
家族の苦労、治るためなら何でもしたい、してあげたいという気持ちが書かれている本です。
特にこの本では、がんセンターのかかわりがとても よくて、主治医の松本先生が、ユニークで楽しく、でも「治療ができなくてくやしい」と心情を吐露したり、と、とてもすてきにえがかれています。
そして、お かあさんのがんの受け止め方、とてもいいなあと思いました。「(がんが)消えなくてもいいんですよ。このままの大きさでずっといても。がんも私の一部ですからね。あんまり嫌ってもね」。
どうして、お母さんががんになったのか、と逡巡する著者。そして、そのお母さんとの日々を大切に過ごしていくのです。あとがきも秀逸です。
2008年11月10日月曜日
書評 「3つの真実」
書評 「3つの真実」 野口嘉則著 ビジネス社 1238円(税別)
この本はビジネス書でしょうし、 ほとんどの人はそのような目的で読むと思います。
しかし、私は興味が惹かれた点は、違いました。
この中で主人公の家族にうつ病、不登校があったのです。つ まり私は、これらの疾患を持つ人の家族で、その人たちにどのように接するか、その人たちがもしもこの主人公のような物質的成功や効率主義を重んじる人の場 合、どのように話をすればいいのかをこの本から読み取れたのです。
そうすると、主人公には家族のうつ病や不登校を「理解せよ」と進言したり、彼の態度を非 難してはいけないのです。この中に登場する老人のように、相手に心を開いてもらうために、どうしたらいいのか・・・。
いえいえ、「相手に心を開いてもら う」ことはできないのです。なぜなら、「心を開く」のは相手だからです。
相手からいかに、信頼してもらうか。一言ではまとめられないですが、それがこの本に書かれていると私は思っています。
2008年11月9日日曜日
オバマさん
私は基本的には、政治、ことに自分の国以外の政治には興味をあまり持っていません。自分の仕事は精神科医だからと思っているからです。
その良否は、それぞれの意見があるでしょうが、それはとりあえず保留です。
そんな私は、新アメリカ大統領のバラク・オバマさんのことが気になっていました。知り合いでも何でもないのですが、オバマさんが地域活動をされてそこから大統領になろうとしたことを、知ったからです。冒頭の記事はそれを読みやすく、リアルにまとめてくれたもので、読んでいて改めてオバマさんへの期待が高まり、好感が強くなりました。
この記事のタイトルも気に入ってしまったのです。
というのも、私は精神科医として北海道浦河町のべてるの家のメンバーに鍛えられたと思っているからです。自分がどれほどの精神科医か、といえばまだまだのレベルですが、確かに新前を鍛えるのにはふさわしい場所でした。
べてるのメンバーは、自分の思いをどんどん相手に伝えます。私に対する批判ももちろんありましたし、当時は新前だから批判があって当たり前とはとらえられず、自分自身が否定されたような勘違いも多々ありました。
そのうちに、人の話を聞くのは面白いものだな、と思えたのです。私自身は新前ですから、特に何ができるということもないのですが、話を聞いていくことはできました。すると、相手の大事にしているものがよくわかり、それを自分も理解したと伝えていくことを繰り返していました。
妙なことですが、そうしているうちに、相手が変わるのです。
この記事では、オバマさんは当然精神科医ではないので、話を聞くことだけがいいとは思わずに別の手法で相手とさまざまな地域活動をしたということが書かれていますが、基本は同じかもしれないと思えました。
オバマさん、昨日のニュースで娘さんのために犬をお探しされていると聞きました。ただ、その条件が(1)娘さんのアレルギーを悪化させないこと(短毛種がいいのではないでしょうか、と私は思いましたが)
(2)施設に待機している雑種の犬であること
ということでした。
我が家の犬の系統をお勧めしたかったのですが、(1)にはマッチしましたが、残念ながら(2)にはあてはまらず・・・。
それはさておき、冒頭の記事でオバマさんには意外かもしれませんが、私は共通点を勝手に感じてました。
2008年11月8日土曜日
マイナートランキライザーと依存症
浜 六郎
言葉を失うような不幸な事件が大阪で起きた。
小学校の児童殺傷事件。今回は、この事件で話題になっている精神安定剤について考えてみたい。
事件直前の精神安定剤服用は否定されたようなので、事件への薬の影響を云々(うんぬん)できる段階ではない。ただ、精神安定剤は、本当に必要な人だけでなく、非常に乱用されている薬である。
病院にかかっている人のほぼ3分の1は、なんらかの精神安定剤を使っている。
例えば睡眠薬はすべてこの仲間だ。精神安定剤のために、かえって精神が不安定になっている人も本当に多いのだ。
精神安定剤には、精神分裂病に使う系統=神経遮断剤と、不安や強迫感などを主体とする神経症(ノイローゼ)に使う系統=抗不安剤がある。
前者は以前、メジャートランキライザー(強力安定剤)と呼ばれたように、文字通り効果も副作用も強力。
一方、後者は、マイナートランキライザー(緩和安定剤)と呼ばれたが、では「軽い」「やさしい」だけかと言うとそうではない。非常に早く効く強力な睡眠剤もこの系統の中にあり、名前に似合わず、その害は重く大きい。
例えば、10年ほど前にも問題になったトリアゾラム(商品名ハルシオンなど)。飲み始めは素早く眠れ、目覚めもよいためやみつきになりやすい。高価格で裏取引もされている。
だが3時間ほどしか効かないから夜中に目覚め、かえって眠れなくなる。常用すると効く時間は短くなり、必要量が増し、依存症になりやすい。昼間も判断力や記憶力が落ちて、イライラや不安が募り、興奮しやすくなる。高齢者は痴ほう症状が現れることもある。
依存症になって、急にやめると、禁断症状として痙攣(けいれん)や幻覚まで生じる。アルコールとそっくりだ。
深酒で本当に記憶がなくなることがあるように、この系統の睡眠剤を飲むと、途中目覚めた時など、一見ふつうに行動しているのに、本人はしたことを全く記憶していないことがある。「前向き健忘」現象だ。
米国では、依存症になった人による射殺事件も起きた。
英国やオランダではすでに禁止したが、日本では依然ごくごく一般的な薬だ。
安定を求める薬が社会の安定を脅かす、そんな「薬害」に早く気づいてほしい。
(以下、psycho)
外来に受診している人たちの中で、最近明らかにある特定のマイナートランキラーザーを処方するのはまずい、という状況に久しぶりになりました。
他の病院から私の外来を紹介されてきてくれている10代の女性なのですが、ある特定のマイナートランキライザー(仮にHとします)があれば、安心するし、パニック発作も起きないという人でした。別の症状もあって、ずっと県内のあらゆる精神科病院に受診した人です。それで、新しい薬は絶対に嫌で、H出なくては駄目、と言っていたのでした。
自分が間違っていたらいいなと思うのですが、これは、もしかしたらHという薬の依存症ではないのだろうかと思うのです。
その薬がないと、安心して暮らすことができず、だんだんと飲む回数が増えている(一日で)ということです。さらに、私はそのHという薬を頓服でしか処方していないので、それでは足りないと言って、もっと出してほしい、と話してくれているのです。
余計なお世話だろうなと思いつつ、依存症になってしまったらお互い辛すぎるので、依存症になる可能性があってと話してみました。
「そういう依存症になる可能性があるのだから、私はこの薬を出すのが怖いし、出したくないんですが」私がそういうと、その人は依存症の人が必ず言ってくれる言葉を出しました。
「私は、そんなことにはなりません」。
いったい何回くらいその言葉を聞いたでしょう。その言葉を信じて、何回くらい薬を処方して、依存症の病をさらに深くして私は後悔したでしょう。
私はため息をついて言いました。
「その言葉を信じたいけれども…。そうはならない人ばかりで、・・・。私もつらいところで・・・」
かなり歯切れが悪かったのですが、仕方ないとしか言い訳が思いつきませんでした。
その人はその時は別な薬を飲んでみると言って外来から去りました。次の予約の時にどうなるんでしょうか。今も不安です。
2008年11月7日金曜日
早期教育がはじまる!?
英語力つくと「省エネ脳」 学習期間で活動に差 | |||||||
このニュースについての掲示板 | |||||||
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この記事を読んだお父さん、お母さんたちは、「やっぱり、早期教育は大事だ」と感じる可能性は高いのでしょう。そして、早期教育に英語を、という潮流が主流となるのかもしれません。
私はどっちでもいいや、といういい加減派なので、あまりそう感じないのですが・・・。
ただ、普段外来で来てくれる人たちとお話ししていると、気になるのですが、ほとんどの方の抱いている感想です。
「発達障害は、治りますよね?訓練で、普通の子たちと同じようになるんですよね」というものです。
現在の発達障害のとらえ方としては、一言では「一生もの」です。ただ、発達障害になぜなるのか原因が分からない以上、どんなふうになっていくのかは予想と、これまでの諸外国での研究や報告の蓄積でしかわかりません。だから、「治る」かもしれませんが、おそらく前述の研究から考えて「一生もの」の可能性が高いのです。
ただ、日本だけなのか他の国や文化圏がそうなのかわかりませんが、「人間、鍛えれば、勉強すれば、頑張れば、望ましい方向に変化する」という思考が、非常に多いように思います。
発達障害が「治る」、しかも「療育して」「頑張れば」「治る」という考えは、そういうところからきているのでしょう。
早期教育も、人間が人生の「早期」で、「頑張って」「鍛えれば」「望ましい方向に変わる」と考えているからできることでしょう。
それはそれで素晴らしい考えです。でも、それだけでいいのかな、と私は思ってしまうのです。
じゃあ、今暮らしている発達障害の人たちは、頑張らなかったの?療育しなかったの?という疑問がわきます。そんなはずはないんです。頑張らなかったのでもないし、療育しなかったわけでもないでしょう。
早期教育や、「頑張れば望ましい方向に人間は変化する」という考えだけを推し進めるのは、辛くはないかなと思うのです。
2008年11月6日木曜日
誤診って…
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20081029-OYT8T00167.htm
医師の問診不十分で誤診
妄想や幻覚が表れる統合失調症で、
東京都の男性会社員(55)は、その一人。2005年秋、
そればかりではない。「
近くの病院の精神科を受診した。待合室で数枚の問診票を渡され、
診察室に入ると、30歳代と思われる男性医師は、
「統合失調症ですね」。医師は、いくつか質問し、
抗精神病薬や抗不安薬などを飲み始めた。
薬の影響か、体重が半月で7キロ増えた。勤務中も、
統合失調症は、妄想、幻覚、まとまりのない会話、
妄想は、理屈に合わない、奇異なものになるのが特徴で、
この男性の訴えは、一見、
「自分では幻覚や妄想がひどいとは思えず、
統合失調症の診断には、症状や、
男性には、「盗聴器」や「スパイ」の恐怖を、
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子どもの精神科を志向しているためでしょうか、私は、問診票をみただけで診断をすることはほとんどありません。
というか、それだけじゃわからないような医者ですから・・・。魔法使いじゃないし。もしも魔法使いだったら、こういうつらさ自体を起こらないようにしているでしょうし。
閑話休題。
子どもは成長するので、今の診断が後で変わるというのはよくあることです。ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されていた子どもが、数年後にPDD(広汎性発達障害)という診断になっていたということも、そうそうないことではないようです。もちろん、私だけでもないようです。
よっぽどつらそうな大人の方の場合は、お話しやすくするために少量の内服薬を試してもらってから、詳しく聞くということを私はします。でも、あんまりしたくないです。どんな状況かわからないのに、お薬での治療を始めてしまうと、後戻りできないような気分に私はなるので、したくないですし、避けてます。
私の場合は、お話を聞いて、そして、心理検査をします。かかわる時間を増やさせてもらうという側面もありますし、内科ではある程度問診した後で、検査の計画を立てて検査をしますから、同じような感じでやります。外来を受診された方たちも、この方式は意外と受け入れやすいようです。
診断を間違うということは、病院関係以外の職種の方の場合考えにくいことかもしれませんが、なくはないです。医者も人間ですから。
私は、大事なことは間違いを気付けるシステムを作ること、と思っています。そのシステムの一つの方法として、心理検査は大事だなと思っています。
他にもいろんなシステムがあると思うので、もっと知りたいなと思っています。
2008年11月5日水曜日
発達障害もサービスの対象 障害者自立支援法
私は、自分の外来では独断かもしれませんが、とっくに自立支援を適用してました。というのも、発達障害の子どもたちは、私のところへくる段階でかなり、精神的な症状を起こしていることが多いからです。
具体的には、抑うつ症状(うつ病と似た症状です)、幻覚妄想状態(もともと被害的に発達障害の子どもたちはなりやすいのですが、それがかなり高じた状態)、不安状態(不安が強くて、極端な場合は家から出られない、など)という症状が主です。
彼らが発達障害であるから、精神障害の自立支援法の適用にならないというのは、単なる言葉の問題と私は捉えているのです。だから、外来で受診の際に最初に、親御さんたちに自立支援の適用になることを伝えて、継続的に外来にきてほしいということを伝えます。
かなりの親御さんは「ああ、そういう制度があるんですか。ならよかった」と言ってくれますが、中には「うちの子供はそんなに重症なんでしょうか?」と不安になる場合もあるようで・・・。
難しいなと思っていますが、できる範囲で使いたい法律です。
だから私からすると、「遅いよ!」という気持ちでいます。
2008年11月4日火曜日
糖尿病治療と精神科治療の共通点
なくそう・減らそう糖尿病 第10部・患者の心理的葛藤/3 | |||||||
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(以下、psycho)
以前にとある製薬会社の主催する糖尿病に関するセミナーに出席したことがあります。そのときは、ネットでだったのですが(形式がネットを介しての研修でした)、天理よろづ相談書病院で糖尿病治療にかかわっておられる石井先生をはじめとした、スタッフの方たちからお話を聞けました。
精神科治療と似ているなと思えたのです。とくに、
(1)長期にわたってフォローするので、患者さんもスタッフも無理をしないというスタンス
(2)「どういう気持であったのか」ということをメインに据えて話をするという姿勢
(3)問題点を指摘するよりも、問題点をもっている人にどんなふうに肯定的にかかわれるかという点
です。
ただ、こういう方法はまだまだ他のところに伝わるまでに至っていないようで、「他のところ」で精神科医をしている私でさえ、その場の流れにのまれてしまって、症例検討の際に患者さんの問題点を指摘する、ということをしてしまっていました。
どうしたら、こういうことをうまい具合につたえていけるのか・・・とその時からずっと考えています。
そういう意味で冒頭の記事は、うまく伝わっている例だと思えるのです。どうやって、奈良県の天理市から新潟県の長岡市にうまく伝わったのか・・・、「伝染」しえたのか・・・と思います。
あ、前文の「伝染」は、今マルコム・グラッドウェル著「急に売れ始めるにはワケがある」(ソフトバンク文庫)を読んでいるせいでしょう。
2008年11月3日月曜日
子宮頚がんワクチンの開発。
2008/10/31(金)
- 子宮頸癌(がん)ワクチンの安全性を確認
承認から2年になる子宮頸癌(がん)を予防するためのワクチン(
商品名:Gardasilガーダシル、※日本では未承認) が安全であることが、米国当局により報告された。
米国疾病管理予防センター(CDC)は、11-
Gardasilは、性行為により伝播し、
CDCの報告によると、11~17歳の少女のうち推定25%
副作用の1つに失神(fainting)があるとされ、
[2008年10月22日/HealthDayNews]
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(以下、psycho)
もしも私に娘がいて、このワクチンをうけると言い始めたら、複雑な気持ちになるだろうなあと思います。。
接種しなければ心配な反面、接種しなくてはならない状況なんだなあと思うとそれもまた心配。おかしな男にだまされていやしないかと、気になりすぎてしまうことでしょう。
性的に大人になったと喜んでばかりいられない気持ちになってしまうでしょうし、さみしい気持ちとともに、その娘の将来を憂う気持ちが出てきそうです。
幸いかどうかわかりませんが、私には男の子しかいないので、子宮頚がんの心配はしなくてはいいのですが、それはそれで心配。
最近は男の子でも、性的虐待の被害者になりうるそうですし、いじめなんかも男の子同士のほうが陰湿なようですし。
でも、子どもをもつって、心配することが多いことがいいのかもしれませんが・・・。
2008年11月2日日曜日
研修医制度を振り返る
Q.2 2004年に必修化された臨床研修制度により、
「そう思う」「ややそう思う」を暖色、「あまりそう思わない」「
Q.3 現行制度ではスーパーローテーション方式が必須となっていますが
「ストレート方式との選択性とすべき」
「続けるべき」
自由意見としては、「スーパーローテーション期間を延長すべき」
(以下、psycho)
医師の質が向上していないのに、現行の研修医制度を続ける必要があるのかないのか、という問題を提起したいのかもしれませんが、いくつか検討すべき点があると思います。
まず、研修医制度が始まってからだいたい4年くらいしか続いていないのです。つまり、医師免許を取得して4年目くらいの医師が最初の研修医制度卒業生になるわけです。
自分がその年次の医者だったころを考えると、まだまだ心もとないとしか言いようがない時期でしたから、まだまだ医師の質が云々といえるのかどうか、疑問な時期ではないでしょうか。
そして彼らを評価するのは、年齢のいった指導医なわけです。
つまり年齢によるバイアスがかかっているのではないか?ということでもあり、評価する人の違いもあるのではないか?ということを考えてほしいということです。
次に、ストレート方式と現行の研修医制度の違いもまた比べるのが難しいのではないかと思います。私は、変則的な研修制度を受けた人間だと思います。最初は、全然精神科を考えておらず、小児科を偶然研修の第二選択として選び、第一選択、いわゆるストレート方式の頃の「医局」に入った場所は全然別の場所でした。
自分がいい医者かどうかは謎ですが、精神科医としてはある程度は治療できる部分があるようです。ただし、私は採血ですらできない人ですし、まして中心血管栄養IVHもできません。それでいいかどうかということでしょう。
私個人としては、不自由は感じていません。内科と連携させてもらっていますし、採血検査も看護師さんがメインでやってもらえるからです。
私は何をしているのか。
つまり私は、外来に受診した人たちに対して「安心感」を渡しているだけです。そして、薬の依存にならないように、ゆっくりと病院以外の世界が生活の比率に高くなるようにしているということです。私は、それでいいと思っています。
逆に、内科の医師で「安心感」を渡せたらそれはそれでいいと思っていますが、なかなかそういうことにはいかないようです。その理由はよくわかりません。
研修医制度については、まだまだよく論議していくことが大事と思いますから、こういう集計や提言は大事だと思いますが、単純比較はできないと思います。
2008年11月1日土曜日
書評 藤家寛子×ニキ・リンコ「自閉っ子、こういう風にできてます!」
書評 藤家寛子×ニキ・リンコ「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社、1600円;税別)
今では自閉っ子たちが活躍している場が全くなくはないので、そのために彼らがどのような考えをもっているかがわかることが増えた、そう思います。
この本は、そういう本の 一つだと思うのですが、花風社の浅見さんと藤家寛子さんとニキ・リンコさんとの対談は、対談、という堅苦しさはなくて、読んでとても楽しめます。
本文で浅見さんも言って おられるように、自閉っ子たちの身体的な障害(おもに感覚障害や認知の障害)は、彼らとの付き合いも長い私でさえ、想像したことがないくらいすごかったのです。
冒頭からいきなり「『雨ニモ負ケズ』は、やっぱり雨が痛いからできたんだと思った」という・・・。驚きというか、いきなりのフックでした。
そして、もっと 驚いたのが、ニキ・リンコさんが反抗期のことを読んで、親にその通りに反抗してみた、というくだりです。
私も同じだったから。
自閉っ子はスペクトラム障害と いって、きっちりと自閉っ子とそうでない子が分けられるわけでもないから、私もそうだったんだ!と納得してしまいました。そういう発見が楽しい本です。