2009年9月25日金曜日

「どっちも嫌なんです」

 かれこれ彼女とは5年の付き合いです。お会いした時は高校生でした。

 彼女の最初の主治医は私ではありませんでした。その医師は彼女の激しい幻覚妄想状態と、死に近いのではとはらはらするようなリストカット(全身をリストカットするので、リストと言う単語が正しいかわかりませんが)、過食・嘔吐、解離状態、思考障害、全く常識的と言えない(とカルテにありました)ファッションをみて、「統合失調症」と診断したようです。

 彼女は障害年金を受給していて、その診断名も「統合失調症」です。

 でも私は彼女にお会いして、3,4年後から彼女の診断は発達障害ではないか、と感じていました。激しい幻覚妄想状態やリストカットは、状況になじめなくなった発達障害の人にも見られるし、解離状態も自分を守るために発達障害の人たちはよく講じる方法です。思考障害は認知的に偏りがあるという意味かもしれないし、ファッションは好みだし・・・(当初はゴスロリ、でした。最近はミニスカートをどこまで短くできるかに凝っているようです)。

 つい先日、この話を彼女としました。それでニキ・リンコさんの本を勧めました。

 先週は、リストカットがことに激しくて、ひさしぶりに全身でしたし、過食・嘔吐も一日10回やっていたそうでした。救急外来にも受診して、本人も家族も大変だったようです。

 そしてつい最近の受診でした。

 彼女「ニキ・リンコさんの本、読みました。当てはまり過ぎて。特に、いつトイレに行ったらいいのか分からないってところ。トイレに行きたいのはわかるけど、いつ行ったらいいのか、と言うあたりが・・・」。
 私「そうかあ。ところで、読んでみてあなたにとって、統合失調症と発達障害と、どっちの方がいわれて楽って、あるのかしら?」
 彼女「どっちも嫌なんです。嫌です」。

 それはそうだよなあと、はた、と思いました。どっちにしても彼女にとっては自分をコントロールできるようになる方法を即教えてくれるものではないからです。

 統合失調症も発達障害も医者が彼女の気持ちを聞いてつけたものではないし、いわば彼女の気持ちを度外視してかってに医者がくっつけた邪魔ものでしかない・・・。

 それでも、発達障害かと思っている、と言った私に、ニキ・リンコさんの本をわざわざ買って読んで「当てはまっている」と言ってくれた彼女は、すごいと改めて思いました。

 ちょっとぶっきらぼうでとっつきにくいといえば、そうなんですが、彼女は精一杯私がどうしてそう考えたのか、知ろうとしてくれたのです。

 うれしかったし、こういう気持ちを活かしたいなあと思えました。

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