2008年12月31日水曜日

10大ニュース続きです②

学会発表
 6月に米子市に行って学会発表をしました。
 
これは画期的なことなのです、私にとっては。というのは、私は2年目に北海道浦河町にある病院に勤めてから 全く学会発表をしたことがなく、しかも、最初の学会発表(研修医の時)と比べて、指導してくれる人もなく、場慣れもしておらず、心理的にもつらかったです・・・。

  もっというと、直前に子宮外妊娠と緊急手術があったので、余計つらかったです。でも、夫と二人で行けたのは、ありがたかったですが。


12月のフォトリーディングセミナー参加
 これは役に立ちました。
 勝間和代さんご推薦のセミナーだったのですだが、非常によかったです。

 これで12月中には、これまでだけで、8冊は読めていて、いつもの2倍読めているので、今後役に立ちそうです。

 いろいろありましたが、今年本当にこのブログを読んでいただきありがとうございました。

2008年12月30日火曜日

10代ニュースの続きです。

10代ニュースの続きです。仕事がらみが多いですねえ。

 ④JSPP小児精神医学教育セミナーへ参加できたこと
 毎年ながら、これは大きいです。私は何度か書いているように、自分を指導してくれる上司もいないですし、わりと、自分でやっている傾向があるのですから、こうして同じ分野の他の医師たちと出会って、意見を聞くのは本当に勉強になりますし、外来受診している人たちのためになりますから。

 ⑤
子どもの心療内科氏家医院(北海道)を見学できたこと
 来年の参考にしたいです。来年は、子どものショートケア(毎月第1第3土曜日なので短時間だからということ)と取り組んでいくことに、なりそうです。しかも、私が思っているのは中学生で、発達障害のある子どもたちがメインになりそうです。

 ⑥
秋田アディクションを考える会とのつながり
 11月22日に講演をさせてもらったのですが、今後ここの会の皆さんとの交流もどうなっていくのか、楽しみです。


 ⑦勤 務先の精神科病院の改築
 ボロボロだったのだから当然でしょうか・・・。
 でも、地域で恐れられていた病院がここまでハードウェアが変わったのことで、どう受け入れら れていくのかとてもどきどきすします。
 精神科ということでの偏見や、「ちゃんと治療できないくせに」というような批判(今のところ主にネット上でね)に は、なんとか対応していきたいものだと思います。

 ⑧
5歳児健診開始
 5歳という就学前にこそ、発達障害やほかの発達関連のチェックが必要と臨床的に思っていたので、まったくの好機としか言いようがなく楽しく引き受けていますし、来年もしたいです。

2008年12月29日月曜日

10代ニュース;その2

 10代ニュースの続きです。

 ③子宮外妊娠と緊急手術
 今年のメインイベントのひとつでしょう。あまりこういう状況になると思っていなかったので、かなりびっくりしたり、がっかりしたり・・・。

 二人目の子どもはずっとほしかったので、妊娠自体はうれしいのですが、子宮外妊娠とは・・・。当初、早期だったので、妊娠しているかどうか確認できないといわれていたのですが、その日に仕事をして家に戻り、お風呂に入った後からかなり痛みが強くて、眠れなくなりました。それでも、自分で鎮痛剤を飲んでうとうとしたのですが、たった3時間。もう、痛くて仕方無くて、救急外来に受診しました。

 そして翌日も仕事だったのです。その日は痛みもなくて大丈夫だったのですが、翌日の夕方からがひどかったです。

 痛いというか、なにもわからないのです。辛すぎて、何が起こっているのかが分からないのです。そして、歩くこともできず、吐いてばかりいて、その後から意識が遠のいてしまいました。

 そのまま救急車で搬送されて、気がついたら病院です。しかも自分の勤めている病院・・・。

 自分では知らなかったのですが、お腹の中がすごい出血だったらしく、量も半端じゃなかったようです。

 開腹手術は初めてだったのですが、手術後はくしゃみもできないと知りました。もっというと、動くこともできないし、食べられないんです。それが、信じられないくらいつらいのです。なにもできないし、何かしたいという気持ちにもなれない。このまま自分は大丈夫なのかと思ったのですが、次第に回復してきたので、人間って強いなあと実感しました。

 それから、救急車で病院に搬送されて思ったのですが、具合の悪い人にどこがどう具合が悪いのかを厳密に聞きだすのは無理だということです。

 だとしたら今まで、ずいぶん無理なことを押し付けていたものだと思って、この経験もまた自分の肥やしになったと思っているところです。

2008年12月28日日曜日

10代ニュース

 今年も押し迫ってきて、すこしずつまとめてみたくなりました。

 というわけで、10大ニュースを少しずつ書きたいと思います。

 (1)コンサータの使用開始
 日本初のADHD治療薬コンサータが昨年12月に発売開始となって、それ以後私も外来で使えるように、その研修会に行きました。東京に行ったのですが、なんともこんなにたくさんのコンサータを使う医者がいるなんて…と驚いてしまいました。

 1月の東京に、しかも前々日に熱性けいれんを起こした息子を置いて行くなんて、つらかったです。

 (2)とある向精神薬についてまとめられたこと
 ある向精神薬について、その適応外処方ではありますが、まとめて発表する機会がありました。これがとても勉強になりました。適応外なので、外来に来てくれている人には了解をとっていましたが、この薬がもっといろいろと使える可能性があるので、なんとかその適応を広げてほしいということを、発表したのです。

 今もこの薬物の適応外処方は続けているのですが、子どもたちにも使ってもらっている人がいます。子どもにも、適応が広がってもいいのに、そう思っているのですが・・・。

 (3)以降は又明日に…。

2008年12月25日木曜日

代理ミュンヒハウゼン症候群

ついに来たか、という感じの記事でした。

http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=6973 1歳の娘の点滴に「腐った水」混入、母親を逮捕

代理ミュンヒハウゼン症候群と診断されるだろう、このお母さん。記事によると他の子どもも4歳前に死亡しているということです」。
お母さんのコメントがこの診断の決め手ではないかと私は思っています。

母親は混入を認めたが、「死なせるためではなく、子どもが病気になれば、付き添って看病できると思った」と殺意は否認している。

アメリカでは、ずいぶんたくさんのこの症候群の診断を受けた人がいたと、私が医者になって3年目くらいでよく聞きました。そのころ、子どもの虐待について、私もずいぶん示唆をうけて気にするようになったので、この症候群がとても気にかかってしまっていたのでした。

そして、私が医者になって12年目で、日本でもこの症候群がこうしてメディアの俎上に乗るようになったのです。

アメリカを日本が追いかけているという構図はあらゆる点で見られていたと思いますが、以前は20年か30年サイクルだったのでは・・・。でも、こうしてたった10年以内に繰り返しています・・・。

医者になって3年目のとき私は、この症候群はきっといずれ日本でも起こるだろうと思っていたが、ここまで早いとは思医も寄りませんでした。きっと、私の身近にも、このような人がいるのでしょう・・・。

子どものために、何とかこれを未然に防いだり、起こさなくすることは出来ないでしょうか?

それにしてもこの事件で、最初に亡くなった子どもの事件をもっと精密に捜査していたら、展開は変わっていたでしょう。秋田県藤里町の事件との類似を思ったものです。

以下に、Wikipediaから定義の引用です。

代理ミュンヒハウゼン症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

代理ミュンヒハウゼン症候群(だいりミュンヒハウゼンしょうこうぐん、Munchausen Syndrome by Proxy, MSbP)とはミュンヒハウゼン症候群の一形態であって、傷害の対象が自分自身ではなく何か代理のものであるような精神疾患である。

多くの場合傷害対象は自らの子どもであるため、児童虐待と 同列に挙げられることも多い。しかしながら傷害行為自体は患者の目的ではなく、手段として傷害行為に及ぶことで、自らの精神的満足を他者から得ようとして いるものである。子どもが患者の傷害の対象である症例では、患者は傷害を目的として行っているわけではないとはいえ、行為が反復・継続し、重篤な傷害を負 わされる危険があるので、早急に対策を行う必要がある。傷害の対象と患者を隔離すれば、直ちに「傷害」は改善する。

2008年12月23日火曜日

「女性の健康手帳」

[MTpro] 「女性の健康手帳」構想を打ち出す/生涯にわたる健康情�
 
 素朴な疑問ですが、「男性の健康手帳」は、必要ないのでしょうか?私は、言葉の上げ足をとるつもりはありませんが、ただの「健康手帳」ならばそれほど引っ掛かりもなかったと思いますが、「女性の」とついてしまうと、それでいいのだろうかと思える私です。

 職場で、男性の医療者の方たちともちろんあいますが、どうも全体的に忙しすぎて不健康に思います。ストレスもすごいのでしょう。

 それがもしかしたらすべて家族や、極端に言うと患者さんに跳ね返っていくのではないでしょうか?

 そう考えると、とうてい「女性」だけの健康手帳でいいと思えないのですが。どうでしょうか?

2008年12月22日月曜日

医者と依存症と

医療一般 | 医療ニュース | CareNet.com国立病院医師、酔って小田急線止める…「覚えていない」

 多くの人たちは、おそらくこのような行動に関してモラルの問題、とコメントされると思うのですが、私psychoはそうは思いません。

 もちろん、モラルの問題が全くないとも言いませんが。

 おそらく記事のこの方はアルコール依存症なのではないかと思います。そうではなくて、単に罪を逃れるために「覚えていない」と酩酊による記憶喪失(ブラックアウトと言いますよね)を装っているのなら、それはモラルとして相当いけないことですが。

 実は医師は、依存症は多いようです。私の実感ですが。

 アルコール依存症は相当数おられると思います。私もこれまで勤めた病院で数々そう思われる方と会いました。まず、外来の開始時間を守れないのです。そして、すぐに患者さんを怒る、看護師さんに対してキレる、などです。

 一番困るのが、アルコールで酩酊して、事故にあってしまうことです。私が知っている中では、酔って側溝に転落して両足を骨折して手術できなくなった外科系の医師がいます。また、最悪な場合は交通事故で亡くなってしまうこともあります。

 アルコールだけではないと思います。

 新聞記事で以前に読みましたが、10数年前に東京の私立の大学病院で麻薬を過量投与して亡くなったと思しき方がいた、と記憶しています。

 なによりも、Alcholics Anonymus;AA匿名のアルコール依存症者たち、という自助グループを開設した最初のボブの職業が外科医ですから、依存症と医師は深い関連があるのでしょう。

 また、困るのが、なかなか治療を受けないことです。プライドなのか、職を失うかもしれないという不安なのかわかりませんが、医師で依存症と思われる人は多くても、実際に治療を受けているという人に私はお会いしたことがありません。

 この医師不足の中、疾患があったからと言って(アルコールなどの依存症は立派な疾患です)、すぐに解雇されることはあり得ないでしょう。後は、プライドだけ・・・。

 といっても、このプライドが厄介です・・・。もちろん、私にもありますし、プライドがあったほうが医師としてのパフォーマンス向上に役立つでしょうが、この場合はちょっと…。

 どうしたらいいものでしょうか・・・。

2008年12月21日日曜日

「大好き」が増えるということ

 息子と接する時間がかなりあるのですが、彼の人生をみていると、子どもの人生とは「好きなもの」が増えるプロセスなのかもしれない、と感じます。

 生まれて1歳を過ぎるころには、かなり手足を動かせるようになった息子ですが、当初は散歩はあまり好きではありませんでした。それが、今では何回も連れて歩いているうちにずいぶん楽しみにするようになりました。

 消防車も救急車も以前は全然関心を示さなかったのですが、「乗り物絵本」のイラストタッチが彼のお気に召したらしく、以来、消防車・救急車は彼にとっての「大好き」です。

 そして、親である私。最初は、とくに関心を持ってもらえなかった(生後1か月くらいはそう見えてしまいます)のですが、今では「おかあしゃん」がいないと、夜も昼も開けず、昼寝もままならない、というくらい熱烈なラブコールを頂いています。

 そう考えると、外来に来ている子供たちに、どうやって「子供の精神科に来てよかった」と思ってもらえるかどうか。「大好き」の増えるプロセスに、子どもの精神科も参加したいと思います。

2008年12月20日土曜日

ストレスのたまるお仕事?

 「精神科医です」と、自己紹介すると、ほとんどの人が「ストレスのたまるお仕事ですね」と、コメントされます。

 そうでしょうか・・・?私はそんなふうに思ったことはないのですが・・・。

 すごい時は、息子を妊娠していると職場の同僚たちに話した時のことです。同僚たち、と言っても精神科医はひとりもいませんが。ある人が、「なんだか、胎教に悪い外来ですよね」と言ったのです。

 しつこいようですが、私はそんなふうに思ったことはないのです・・・。

 蛇足ですが、胎教に良かったか悪かったかは息子をみてほしいものです。私から見れば彼は、とてもよく育っているので、胎教に悪いということはないんじゃないでしょうか・・・。

 精神科に対して、同じ医療関係者でもこんなふうに実は思っているのだなあと暗澹としてしまいました。

 まあ、確かに、同じ話を長く聞かされると疲れることはありますが、人間という存在の多様性を見せつけられると、私は面白いなあと思えてしまうタイプなので、まったく苦痛ではないです。

 ただ、この年末年始で結構外来が混んでしまっていて(私がついつい年前に皆さんの様子が知りたくて予約を入れてしまったのですが)、そういうときは、「ああ、つらいー」と看護師さんに愚痴るときはありますが。

2008年12月18日木曜日

「アイデアのつくり方」







「アイデアのつくり方」 ジェームズ・W・ヤング著 今井茂雄訳 阪急コミュニケーションズ 777円(税別)



 ア イデアをつくるときは、どうしたらいいのかということがこの薄い本に書かれています。

 それは今まで私がしてきたことではあるので、私にとっては復習が出来 て嬉しい本でした。

 詳細は本文に譲るとして、面白いなと思ったのはアイデアが生まれるためには、資料を集めてアイデアを温める段階(=孵化段階)と、その 後に常に考え続ける段階が必要であるというふたつが必要であると言うことでした。

 アイデアを温めるために、たとえばシャーロック・ホームズは音楽会に行く など、アイデア以外のことをふと考える必要がある、ということです。

 なおかつ、常に考え続けるという、この葛藤・・・。でも、そのとおりなのです。そこが アイデアを出す難しい点でしょう。この本を読んでいると、その葛藤がアイデアの栄養であるのではないか、と思えてきます。

2008年12月16日火曜日

「私たち、発達障害と生きてます」


書評「私たち、発達障害と生きてます」 高森明、木下千紗子、南雲明彦、高橋今日子他著 ぶどう社 1700円(税別)

 発 達障害の当事者の人たちが、診断されるまで、診断される前後の困難、サバイバルなどについてその人なりの視点で書いた本です。

 特に興味をひかれたのは、アスペルガー症候群の当事者である高森明さんが、章の間で書いているコラムで「中途診断者の魅力的な側面」と題して書いている点です。

 中途診断者は、私の外 来にもたくさん来ますが、子どもの時から支援を受けているわけではないので、なかなか本人ご自身も、周りも受け入れがよくなくて、私は対応に苦労している 側面があるのですが、これを肯定的に受け止めている次の一文がとても気に入りました。

 「しかし、私は敢えて、早期に診断を受けた当事者とは別の意味で有意 義な人生だったと考えたい。その苦労と引き換えに、中途診断者は実体験を通してマニュアルにはない経験を蓄積していった。マニュアルにはない「生きるため の知や技」を身につけていった。おそらくだれよりも多くの試行錯誤を行わなければならなかっただろう。(中略)文字通り、社会を体全体で味わってきたと 言ってもいいかもしれない。この経験は一つの財産といってもよい」。

2008年12月15日月曜日

小道具

 
 診察室にある、これは、なんでしょう?

 正解はコルクタイルです。いったい何に使うか、というと、外来に子供が来てくれたときにつかいます。子どもたちは、椅子になんて座っていられないのです。それは、ADHDとか、発達障害があるかどうかは、関係なくどこでも遊びたがるのです。

 ベッドの上でもいいのでしょうが、落ちてしまいそうで怖いのです。

 というわけで、このコルクタイルの登場!です。

 たいがい、男の子がブロックで遊び、女の子がぬいぐるみでごっこ遊びです。これで遊んでくれているあいだに、私はお母さん、お父さんとお話です。

 このコルクタイルで遊んでもらうと、意外な一面をみることもできます。けっこう器用なんだ、とか、お母さんというイメージに対して肯定的なんだ、とかです。

  というわけで、診察時の私のお気に入りです。

2008年12月14日日曜日

セレンディピティ


書評 「起きていることはすべて正しい」勝間和代著 ダイアモンド社 1500円(税別)

 この本では、勝間和代さんがどのようにして生きているかということが詳細に書かれていて、今後の私の人生の送り方で参考になりました。

 おそらく、どの人が 読んでもそのような読み方が可能かと思います。

 私は中でも、一章のメンタル筋力の鍛え方について書かれている点がとても面白いと思いました。というのも、 自分がこれまで人生を送ってきていても、勝間さんが言うメンタル筋力(打たれ強さとにていると、勝間さんは表現しています)がかなり必要であったからで す。

 そして、これを鍛えることで、勝間さんがえてきたような成功を、単に知識ではなくて、技術や行動にできるということです。

 これがなかなかできそうでで きないものですが、この本を読むことでそれができていくことだろうと思い、今後の自分の人生が楽しみになってきました。

2008年12月13日土曜日

非寛容

m3.com :強まる“非寛容”への懸念 香山リカのココロの万華鏡

 このブログを読んで、あまり関係ないかもしれませんが昨日外来に来てくれた人を思い出しました。正確に言うと、その方の体験というべきでしょう。
 
 その方は、医療関係者で、うつ病で日勤しかできないという診断書を出しています。そのことを、暗に非難している一部の人が職場にいるそうです。その方は、昨日の外来で「くやしい」と声を詰まらせて泣いていました。

 その方が医療関係者なので、職場の人も医療関係者なのです。情けないというか、人のことを考えないで、自分だけの基準で生きていけると思いこんでいる人がいるんだなあと、がっくりくるやら、新しい考え方に驚いたというべきか・・・。

 今職場でその人が日勤だけしかできないとしても、その人がもしも仮にいなくなったら、病床も減らさないといけないのです。医療を提供する基準が満たされないわけですから。だとしたら、自分の職場が縮小したりしないために、その人が働きやすくする様に環境を整えるのが職場の同僚や仲間というものではないでしょうか?それがわからない、という人のことが、私はわかりません。

 まあ、そんなこんなで、非常に怒りつつ書いているのですが・・・。

 もしもこういうことがもう一度あったら、その職場に勧告というか、労働基準についてどうでしょうか、などと管理職と話をしたいくらいなんですが。

 こんなふうに非寛容な状況が続くなんて、つらいものです。

 

2008年12月12日金曜日

発達障害の人の「パニック」

 わりとすぐにパニックになってしまう発達障害の小学生が私の外来に来ています。昨日も来てくれました。

 男の子なんですが、彼の悩みは、学校でみんなと一緒に授業を受けたいのに、パニックがあるのでそうできないということです。

 彼のいいところはかなりの集中力。ただ、それがかなり集中してしまい(彼によると集中しすぎ)、読書をしていると、制限時間を告げる声が聞こえないくらいです。そうしているうちに、授業になってしまい、気がついたときにパニックになってしまうということなのだそうで・・・。

 私としては、そんなに頑張って学校になじまなくてもいいんじゃないかと思う面もあります。でも、彼の希望は学校でみんなと一緒にいたいということなのです。

 私が、これはつらいだろうと思うことは、学校になじめないことで彼の自己評価が低くなっていると思える点でした。

 私の意見だけど、という前提で次のような話はさせてもらいました。

 学校へはおそらくあと10年くらいいくだろうと思うけれども、そこになじむことに頑張りすぎて、あなたのいい集中力がある点などを押し殺すのは、どうなんだろうなあ、ということ、透明人間になれるようなレインコートとかあればいいけどなあという話でした。

 パニックの話の間中、彼は落ち着かない様子で、廊下と診察室を出たり入ったりしていました。最後には私の話を聞いてうつむいていたのでした。

 何かもうちょっと力になれればいいのですが。

 彼の診察は次回が、学校と3回目の話し合いです。解決策がでなくても、関係者と仲良くなれることもひとつの方法、と以前の上司が教えてくれたことを思い出しながら、向き合いたいのです。

 

2008年12月11日木曜日

親子

 患者さんの親御さんたちと、よくお話しさせていただいてます。

 親御さんたちは、ご本人が病気なので、たとえ成人していても心配で心配で仕方ないと言う方が多いのです。それはそうだろうなあと思うのです。私が同じ立場でも、そう思うでしょうから。

 ただ、心配が高じて子ども扱いしてしまうことも多いのです・・・。

 こうなってしまうとどうしても、患者さんご本人と親御さんとの関係があまりよくならないことが多いのですね・・・。

 患者さんご本人にしてみると、「親がうざったい」ということになるのです。親御さんにしてみると、「心配してるのに!」となってしまって、けんかになったり・・・。

 そうかと思うと、親御さんが私に「親の言っていることは正しいですよね!?」と私に仲裁を求めたり・・・。

 うーん、むずかしいです。

2008年12月8日月曜日

コスト

 東京の、とある研修会に参加しました。

 そのときに、昼食で有名料亭のお弁当が出ました。その時には、そこがそこまで有名とは知らなかったのですが、先入観なく頂いてみて驚きました。

 私が普段頂いている食事のほうが、おいしかったのです。

 私の食べるものは、夫や私自身、そして、家事をお願いしている人が作ります。時に、実家の母が応援に来てくれますが。

 その、どれもの味が今回頂いたお弁当を上回っていたのです。これは大変な驚きでした。

 私は地方に住んでいるせいか、東京の情報や東京で作られたものをとてもありがたがる傾向があったのですが、自分の周辺のほうがもしかしたら、いいものがあるのかもしれない、そんなふうに思えたのです。もちろん、好みはあるでしょうけれども。

 そう考えると、情報やものを求めてわざわざ東京へ行くことが疑問に私は思えました。

 ただ、人が集まっているといいことも多いので一概には言いきれないと思いますが・・・。

 地方は、自然も多いし、食物は新鮮だし、情報はネットがあるし、東京との比較で不利な点が減ってきているのではないかなあと実感してしまいました。

 そして、うがった見方でしょうが、東京はそういう意味でコスト高な場所になっているような気がしてしまいました。

2008年12月6日土曜日

こころやすらぐところ

 とあることで、東京に来ています。3泊4日です。

 いつ来ても、刺激の多いところだなあと思います。人も多いし、お店も多いし、情報も多いところです。それがいいところだと思います。

 ただ、普段がそのようなところに生活していない私としては、東京に来るだけで疲れる感じでした。まして、今回は直前に風邪をひき、インフルエンザの予防接種をして、おそらくそれが原因でじんましんが起こりそうになっての上でなので、余計にそうでした。

 でも、探せば心やすらぐところがあるのです。カフェグルッペというところです。http://www.gruppe-inc.com/

 こういう感じのお店が好きなのです。味があまり濃くなくて、素材そのものの味がよいというところ。一階の自然食品店も、私の好きなドライフルーツが充実していて、いいです。

 こういうところを、近所にも作れたらなあ・・・。

 妄想ですが。

 ただ、外来に来てくれている人の中で、農業をやりたいということで頑張っている人がいるので、その人が中心になってくれて、農業・加工・販売・カフェ、なんてやってもらえたら・・・いいなあ・・・。

 他力本願な妄想ですが。


2008年12月4日木曜日

箱庭療法の砂

 勤務先の精神科病院で、箱庭療法をやっています。

 それって、何?と言う方が多いので、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%B1%E5%BA%AD%E7%99%82%E6%B3%95にアクセスしてみてください。写真もあって、とってもわかりやすいです。

 もっというと私がやるわけじゃないのです。臨床心理士の先生にお願いしています。


 ただ、けっこう面白いのが、発達障害のこどもたちは(特に男の子)その箱庭の砂を投げたり、ゴミ箱へ捨てたり、砂の感触を楽しんだりするのです。

 こういうふうに、感覚が多少過敏だったり、過敏すぎてつらいことがある人たちも、この砂は好きなんだなあと思うと、ほっとします。

 でも、心理士の先生たちに投げつけるのは、やめて欲しい・・・。もちろん彼らに悪気はなくて、心理士の先生たちも楽しんでいるのですが、箱庭療法直後の先生たちが髪が白くなっていると、私が驚いちゃって、ドキドキするから困るのです。

2008年12月3日水曜日

ゲームやテレビの悪とは

 最近、息子と二人で通勤途中に名作童話のテープを聞いています。これは私が子供のころに聞いていたものです。

 息子もそう嫌いではないらしく、じいっと聞きいっています。

 ただ、意外と教育的にどうかと思うものもあるのです。あくまでも私としては息子にそのようなことを伝えたいと思わないので、私見に過ぎないですが。

 たとえば、「アリババと40人の盗賊」。簡単に殺しちゃったり、死んだりするんですよね。アリババの兄さんが殺されたり、アリババの召使が盗賊を油で殺しちゃったり。盗賊が出るから仕方ないのでしょうけど。人って、簡単に殺せちゃうんだって、伝えたくない・・・。

 ただこう考えて思ったのですが、別にゲームやテレビだけが暴力や殺人のシーンを伝えていたわけではないのですよ。口伝えのアラビアンナイトでも、こういう描写があったのです。だから必ずしもゲームやテレビ・ビデオだけが悪いわけではないと私は思うのですが。

 まあ、口伝えは単に聴覚に訴えるだけかもしれませんが、ゲームやテレビは視覚、聴覚と訴える部分が多いといえばそうですねえ・・・。

 とりあえず、「アリババと40人の盗賊」はお蔵入りにしたいです。

2008年12月2日火曜日

年齢

 昨日書いた、「竜の眠る星」」という作品ですが、確か高校生の頃に単行本で読みました。

 しかも、昨日書いたブログにちょっと出てきた「ブレードランナー」という映画は1982年公開なんですね。私は、公開直後ではなくて、数年たってから高校生の時に観ました。

 ここまで書いてびっくり。

 年取ったなあ・・・。1980年代なんて、昨日だと思っていたのに、20年以上前なんですね。いや、もうすぐ30年前ですか。

 そうかあ、2000年代生まれの外来に来てくれる子たちがいて、仰天していましたが、彼らにすれば私のほうが仰天ですね。

2008年12月1日月曜日

ロボットが・・・。


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2008/11/28(金)

No.M005676

ロボットが高齢者介助を行うようになる日は近い

米国では、高齢者が直面する介助者不足の問題を解消するために、ロボットが利用される日がそう遠くないという。米マサチューセッツ大学アマーストAmherst校のRod Grupen氏らが開発中のロボットuBOT-5はその一つ。

uBOT-5は、人の目や耳を模した無数のセンサーが常に周囲を監視し、人の転倒や無反応などの異常を察知して救急車を呼ぶなどの対応をするようプログラムされている。ロボットの腕は両方とも2.2ポンド(約1キロ)の重さの物を持ち上げることができ、高いところの物を取る、床から物を拾う、うつ伏せになってベッドの下へ入ることも可能。

また、権限をもつ利用者なら誰でもインターネット回線を通じてロボットの中に「入る」ことができ、映像と音声で相手と会話しながら、ロボットを動かして物を拾うなどの簡単な作業もできる。現在の試作型は1台6万5,000ドル(約620万円)だが、販売時には1台5,000ドル(約47万5,000円)となり、あとは毎月のインターネット接続料程度の出費になるものとGrupen氏は予想している。

高齢者や身体障害者の介助をするロボットの必要性は高いとGrupen氏は指摘する。国勢調査によると、米国では65歳以上の人口が2030年には2倍になり、その3分の2が長期的な介助を必要とすると考えられる。一方で看護師や介護者は不足しており、専門家は2020年には看護師が80万人不足すると予測している

このほかにも、米マサチューセッツ工科大学(MIT、ボストン)では、命令一つで病院や養護施設内のある場所から別の場所へ利用者を運ぶことのできる「自律的車いす(autonomous wheelchair)」が開発中である。この車いすは、初めて施設に来た時点では何も知識をもたないが、スタッフが電源を入れ、各部屋を移動しながら人に話すのと同じように口頭で案内することによって、あらゆる場所から場所への経路を覚えるという。その後、車いすを使用する脳卒中や四肢麻痺の患者が「451号室へ」などというだけで、理解してその通りに動くことができる。この車いすは2年以内にボストン地区の養護施設で試験利用される予定だという。

米ジョージア工科大学(アトランタ)では、Charlie Kemp氏率いる研究グループが、介助犬に着想を得た介助ロボットを開発している。ロボットが行うのに適した仕事は何か、どのような方法で指示を出せばよいか、実際にどのように仕事をこなすか、という3つの疑問を解決するのに、介助犬の仕事がヒントになったという。このロボットは、引き出しを開ける、ドアノブを回す、灯りをつけるといった仕事をこなす。

利用者はレーザーポインターを用いて指示を出し、介助犬の場合と同じように、ドアノブにタオルを結びつけるなど、ロボットが仕事をしやすいよう部屋に工夫をする。優れた介助犬には及ばないが、介助犬購入費用(1万6,000ドル、約150万円)や何年も待たねばならない状況を考えれば需要はあるはずだとKemp氏は述べている。

[2008年11月18日/HealthDayNews]
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(以下、psycho)

 「竜の眠る星」(清水玲子)という漫画をご存知でしょうか?ロボットが人間とかかわっておりなす物語なのだが、これを読んだころ私が思ったのは、ロボットが人間の代わりをするというのはいずれ起こるなということでした。

 果せるかな、映画では「ブレードランナー」などそういう状況が生まれ、そして、医者になったとき、介護スタッフの人手不足を知った時に、この漫画を思い出しました。

 ただし、介護ロボットのメリット、デメリットを推し量る必要はあるでしょう。メリットは、単純作業に強いということかもしれません。体交や、水分をどのくらい摂取したかを管理するのは得意かもしれないのです。デメリットは応用が利かないこと。今日は体調が悪そうだから食事内容はこういう風に・・・などとは難しいでしょう。

 人とロボットでどんなふうにバランスを取ってやり取りできるかが、ロボットと一緒に介護する上でポイントじゃあないかと思うのですが・・・。

 私が生きているうちに、介護ロボットが現れるかもしれません。そのときには、「竜の眠る星」のエレナのような素敵なロボットから介護されたいのですが・・・。どうなりますか・・・。

 

2008年11月29日土曜日

自分はどうしてほしいのか?

 外来に来てくれた人達がトラブルに会った、と私に話してくれたとき、私はよく「じゃあ、○○さん(その方の名前)は、どうしてほしいのかなあ?」と聞きます。

 このことがはっきりすると、ある程度やることが決まるせいか、気持ちがすっきりするようです。

 そんな私も、昨日ガーンとくることに出会いました。職場の人間関係です。

 諸先輩から見れば、私のしていることは危なっかしく見えるのかもしれませんし、確かに先輩のいうことを素直に聞くタイプでも私はないので、ひとこともふたことも忠告があるのは私にもわかります。でも、それでも、さすがにそういういい方はないのでは、ということがあったのです。

 昨夜からずっともやもやしていましたが、朝起きてから私自身に「自分は、その先輩にどうしてほしいのか?」と問いかけてみました。

 すると、話が非常に単純で「ひどいいい方をしたことを伝えて、私に謝ってほしい」ということでした。

 こうなると話は簡単です。これを実現するために私はどうしたらいいのか、ということを行動に移せばいいだけですから。さしずめ、私は誰かにこの件を相談することになるでしょう。

 今までは、わけのわからないことで延々となやんでいたのです。あの時ああだったから、今になっているのだろうか、などなど・・・。

 でも、悩んでいる私も、外来に来てくれる人も同じ人間なわけですから、同じことを聞いたり、同じことをしていけばいいのです。精神科医になって10年以上たってようやくこのことに気が付きました。長い!

2008年11月28日金曜日

腸炎と肩こり・目の疲れ

藤家寛子さんやニキリンコさんの本で、彼女たちアスペルガー症候群の感覚障害について読んで、これは、私にもある!とびっくりしたことは、過日書いたとおりです。
 
 しかしまた、びっくりするような感覚障害というか、そういうことが起こったのでした。

 私は息子からどうも腸炎をうつされたようで、一昨日から吐き気とおなかのごろごろに苦しんでいました。そして、なぜか昨日から肩こりと目の疲れにも悩まされていました。

 肩こり、目の疲れは私の人生の長い友人みたいなもので、今に始まったわけではないけれども、昨日は特にひどかったのです。

 私の場合、腸炎は疲労が重なるとひどくなります。(蛇足ですが、ここも、すでに「あれ?」と私には思えます。だって腸炎はウィルス感染だから疲労とそう関係あるとも思えないので・・・。確かに抵抗力という意味はあるかもしれないですが)。

 それで、昨日は職場で昼休みに、あいている外来のベッドで寝かせてもらいました。

 すると、吐き気やおなかのごろごろはほとんどよくなって、同時に、肩こりと、目の疲れも良くなったのです!

 これって、皆さんがあることでしょうか?ないんでしょうね・・・。同僚に聞いたら「そんなん、ありか?」と言われましたし・・・(口の悪い同僚なので仕方ないですが)。

 というわけで、今後も藤家寛子さんやニキリンコさんの本から、私だけじゃない!という安ど感を頂けそうです。よかった・・・。

2008年11月27日木曜日

アルコール依存症についての講演

 昨日は、とある公務員の方たちの健康増進講演でした。

 最初は、午後のせいか全員眠そうにされていたのですが、後半には皆さん目の輝きが違ってました。やっぱり興味があるみたいです。

 ちなみにタイトルは「全ては依存症から始まる」というもので、依存症から派生する疾患を伝えていました。

 依存症、この講演では主にアルコール依存症についてでしたが、どんな精神科の病気が関連しているか想像がつきますか?
  1.  児童虐待
  2. DV
  3. うつ病
  4. 不安障害
  5. 摂食障害
  6. けいれん発作
  7. 幻覚妄想状態
  8. 胎児性アルコール症候群
  9. 心的外傷後ストレス障害
  10. ADHD

などなどです。この話をすると、皆さん、目が違ってきました。

2008年11月26日水曜日

書評「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル著





書評「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル著、高橋啓訳 ソフトバンク文庫 780円(税別)

だれしも「売れたら」と思っている何かがあるように思います。
私の場合は、意味は若干ずれるにしても、精神科が「売れたらいい」と思っています。

この本 は、何らかの商品が世に出て人気を博するにはどのような要素が関与して働いているのかを検証しています。

その中で私は直接の環境、背景について書かれたと ころが気になりました。
特にp208の模擬監獄の話がとても気になりました。看守役と囚人役を割り当てて、監獄をこしらえるというたったそれだけで、人の 行動が驚くほど変わるのです。

これを、私が「売れたらいい」と思っている精神科に当てはめるとどうなるでしょう。もっというと、べてるの家のある北海道浦 河町と他の場所の違いがさらにわかるのではないでしょうか。

そう考えると、何度も繰り返して読まなくてはと思える本です。




2008年11月25日火曜日

綱渡り

 ちょっと今ホッとしています。

 というのも、26日の講演原稿が仕上がったからです。

 22日も講演で、続いたのですが、結構綱渡りで何とかなりました。今後は、講演予定があってもなくてもパワーポイントで作っておいたほうがいいのかなあと思いました。

2008年11月24日月曜日

書評「自閉っ子は、早期診断がお好き」






書評「自閉っ子は、早期診断がお好き」藤家寛子著 花風社 1600円(税別)

 ニキリンコさんと対談をされていた藤家寛子さんのエッセイです。「そうだったのか!」の連続でした。

 アスペルガー症候群の方は何人にもお会いしたことがあ りますが、その人の世界を語ってもらってはいなかったと改めて思いました。

 藤家さんは世界はシナリオ通りに動いているわけではない、ということに気付いた 時、パニックになってしまったのです。
 そして、こう思います。
 「どうして今頃わかったのだろう。誰かもっと早く教えてくれたらよかったのに。(中 略)おそらく、子どものころに障害が発見されて、認知の仕方を軌道修正するのは、こんな失敗をしないようにするためだ。ところが、私はなんの指導も受けて いなかった」。
 早期診断の必要性が痛いほど伝わってくる部分で、私も一緒につらくなりました。

 でも私も実はそんなふうにある年頃まで思っていましたし、発 達障害があってもなくても、そういうことはあるのでしょうけれども、そこからどうやって違う見方をみにつけていけるのかを、私もガイドできれば、と実感しまし た。

2008年11月23日日曜日

依存症

 昨日はA市で講演でした。そんないい内容でもないと思うのですが、皆さん、とてもいい方でそう言ってくれたのです。

 おそらく、参加している方のほとんどが依存症の当事者か、その家族、そして依存症の人たちとかかわる病院関係者だったからでしょう。皆さん、心が広いのです。

 私のつたない講演はともかく、午後にはA市でマック(アルコール依存症の中間施設)が立ち上がった記念のセミナーがありました。

 新潟県からマックの人たちが応援に来てくれていて、メンバーの人たちがお話をしてくれていたのです。よかったです。その正直さがほんとうに、素敵だなあと思って、私は気持ちが洗われるのでした。

 とくに、施設責任者の方のお話がたどたどしくて、そこが本当によかったです。ここだと、見栄も世間体もないし、安心できるのです。

 そして、私も依存症になっても安心だなあと思って帰宅しました。

2008年11月22日土曜日

肥満児の動脈は中年並みに老化している

肥満児の動脈は中年並みに老化している 医療一般 | 医療ニュース | CareNet.com

うーん、恐ろしい。

しばしば私もブログにしていますが、5歳児健診では肥満も問題になります。
実感として、肥満の子どもは自尊心があまり高くないです。だから、物事に積極的になれないですし、周りからからかわれて、自分がいやになりがちですし、どうしていいのかわからないという感じがあります。

でも、我が家の息子も4カ月検診で同僚の小児科医から「どうしたの、こんなに太って!!」と言われてしまいました。だって、飲みたいだけ母乳もミルクも飲ませなさい、と小児科で指導してるじゃないですか・・・と声が小さくなりましたが・・・。たしかに、カウプ指数(大人のBMIと思ってください)が、20を超えているのはまずいですよ。でも、いいのかなって思ってたのに・・・。私に衝撃が走りました。

でも今は、それほど太っていないので、ちょっと安心です。手足が細くなり、お腹だけがぽこーんという感じです。

将来的に、肥満にならないようにしてあげたいのですが・・・。
私も、どうしていいのかなあと思ったりしています。

2008年11月21日金曜日

失敗

 ずっとブログをかけずにいました。ご心配かけました。

 他にもブログがあって、その役割分担を考えているうちに日々の忙しさにまぎれてしまいました。今は、それもある程度決まり、何とかやっています。

 それにしても昨日はへこみました。

 ある外来受診されている人の学校の先生とお話しさせていただいたのですが、そのお話の中でその人が
  1. 大きい音を怖がる。
  2. 男性を怖がる。
  3. 男性から誰かが叱られているところをみると泣いてしまう。
  4. DV家庭に育った。
というのを聞いたからです。
 
 その人は、外来で
  1. リストカットをしてしまう。
  2. 全然眠れない。
  3. 興味を何に対しても持てない。
と言っていたのです。うつ病を私は疑っていました。

 ところが、学校の先生方の話を総合するとこの人の診断が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)となってしまいます。御両親は離婚されていて、おかあさんは虐待しているわけではないので、現在は安心できる環境のようですが・・・。

 あー、この人から信用されるような付き合いができてなかった!そして、話を聞き出せなかった!と後悔しきりです。

 学校の先生は、「私も、リストカットのことはつい最近教えてもらったので」と、私を慰めてくれましたが、医者として10年以上やっていたのに、このていたらくかと思うと情けなくて・・・。

 まだまだです。初心に帰って、もっと話しやすい雰囲気や状況を私が作らなくては。

2008年11月19日水曜日

女性医師の継続的就労に向けての取組み

産科医療のこれから: 女性医師の継続的就労に向けての取組み�

私psychoは産休・育休あわせて半年取りました。その後、復帰しました。

そのときに、いま外来に来てくれている人達は、近隣の精神科に行ってもらったり、勤務している総合病院の心療内科では、開業している先生にきてもらったり、という状況で、乗り切りました。

私は、医局とはつながりがないので、そのぶん別なつながりで周囲の人に産休をもらいました。

私はとてもラッキーだと思います。日経メディカルなどを読めば、私の状況がかなり恵まれていると、実感できます。

でも、近隣の女医さんたちとお話しすると、これがラッキーでは少子化のままだろうという結論になります。私も、サポートしますので、どんどん産休と育休をとれたらいいのに、と思います。

2008年11月17日月曜日

健診の意義

 今日は、五歳児健診に行ってきました。

 前回9月30日と同じスタッフメンバーでした。その中で、行政関係の人に、この検診で私が最近気がついたことを話しました。

 5歳児健診で、就学時の方針が決まることが多いと私は思うのです。だから、逆算して、3歳児健診である程度親御さんたちに、なんとなく発達障害の可能性を伝えるようにしてほしい、ということです。

 私の実感では、就学=学校での生活というのは、発達障害の子供たちにとっては結構ハードルが高いようなので、5歳児健診で特別支援を要請するかどうかが選択肢の中にあれば、学校が楽しくなる可能性があると思えるからです。

 もっというと、サポートの先生がクラス全員の子どもたちのサポートに入れる感じだといいなと思うのです。そうなれば、もっと発達にばらつきのある子どもたちも、楽しく暮らせるだろうと思うからです。

 そんなふうにして5歳児健診を活用してほしい。そう思っているのですが・・・。実際はこの健診に反対している小児科の先生も多く、むしろ幼稚園や保育園単位で園のお医者さんが実行したらいいという意見もあるようです。ただ、私にしてみると、幼少期の私のように幼稚園にも保育園にも行っていない子供はどうなるのかと不安になるのですが。

 いずれにしても、子どもたちのために、健診制度を整えたいものです。

 

2008年11月16日日曜日

おゆうぎ会

 おゆうぎ会、昨日だったのです。

 その直前にビデオカメラを買いました。あんまり直前過ぎて、昨日の早朝4時に起きて操作できるように説明書を読んで、ぎりぎり間に合いました。

 息子を一生懸命撮って、その前に私は自分の座っている膝なんかを撮っちゃったりして・・・。後で見て、これは何だろうと思って、笑いましたが。

 終わったら、もうビデオの操作でいっぱいいっぱいだったのでくたびれちゃいました。

 息子は、緊張して踊れなかったようです。でもいいのです。それもかわいいという親バカですから。

2008年11月14日金曜日

目に見える効率を追いすぎると、大切なものを見失う


目に見える効率を追いすぎると、大切なものを見失う。:NBonline(日�

別のブログ(http://d.hatena.ne.jp/riesakakida/20081027)に、以前に書いたことを思い出しました。

確かに効率を求めることは必要です。けれども、行きすぎるとそのときに失うものがあるのです。

効率を求めすぎると、精神障害を持つ人はいらない、そういう発想に行きつくように思えて、こわいです。ナチスドイツはそうでした。

おそらく、効率を求めることを突き詰めると、ある時点から効率が目的となってしまい、いったい何のために効率的になることが必要だったのか、わからなくなるのではないでしょうか。言い古されたことだとわかっていますが、そう思わずにいられません。

私自身の考え方が、効率を求めすぎないようにと日々思っているのです。

そのために私がしていることというほどのことでもないですが・・・。

私は日課を作ってそれをこなすようにして暮らしています。冒頭にある本で、藤家寛子さんが著書「自閉っ子は、早期診断がお好き」(花風社)で書いておられたように、日課があると楽なのです。効率的に文献を読めるし、勉強も効率が上がりますから。


   

ただ、息子と一緒だと、日課をこなすのがままならないことがしょっちゅうあります。

もうそんな時は、「日課をこなすばっかりだと、新しいことに出会えないから、それで息子もしくは神様が、日課じゃなくて別なことしなさい、って言ってるんだ!」と言い聞かせて、心の平穏を保つのです。

書くと、つまらないことで当たり前のように思えるかもしれませんが、そうしない頃はイライラしどおしだったので。

そうすると本当に思いがけないことが起こって、楽しかったり、別なうれしさがあるのです。

私は、これを「息子もしくは神様からのプレゼント」と言っていて、日課が消化できないときに、ぶつぶつ言ってます。

これ、意外と私にはあってました。

2008年11月13日木曜日

家族とは



クロスする感性〔第13話〕 ソウル・ファミリー,魂の家族

宮地尚子=文
 一橋大学大学院教授・精神科医ケンブリッジ・ヘルス・アライアンス客員研究員


1年間の滞米生活が終わり,日本に帰ってきて1か月。あっという間に日常に埋もれてしまっている。  
 帰国当初は,駅の改札の人の流れにうまく乗れず,恐怖を覚えたり,エスカレーターの真ん中で立ち止まって,後ろからつつかれたりした。また,白々と夜が明けるのを眺めながら,時差ぼけの冴えた頭で,どれだけ技術革新が起きても時差と季節の逆転だけは残り続けるなあと,地球規模で(?)ものごとを考えたりしていた。  けれども時差が治るにつれ,大学院の入試やら,冬学期の講義準備やら,依頼原稿の執筆やら,次々と仕事が迫ってきて,のほほんとしていられなくなった。
 米国から持って帰った数十冊の本は,なんとか古い本を移動させて書棚に納めたが,資料は一つの大きな袋に入ったまま,必要なものだけそのつど取り出している状態だ。  
 とにかく,今済ませなければいけないことから済ませるしかない。そのためには,米国で考えていたことや,日本に帰ったらしようと思っていたこと,調べようと思っていたことなどは,とりあえず棚上げにするしかない。落ち着いたら手をつけるつもりだが,たぶんずっとこんな調子で仕事がふりかかってきて,落ち着くなんてなさそうだな,意識的に時間を作るしかないな,と思う。 滞米生活を振り返る もちろん,米国で学んできたことや考えてきたことは,必ずしもまったく新しい形で仕事になっていくのではなく,同じように見える仕事の内容に深みを与えたり,新鮮な見方が加わるという形で役立つには違いない。また自分がいた場所を離れて,外から見直す機会を得られたことには大きな価値があったと思う。これまで自分がしてきたことを相対化し,これからの方向性を,その場の限られた視野からではなく俯瞰的に,長い目で考えることができるようになった。  
 久しぶりに会った人たちから「アメリカはどうだった?」「目的は達成された?」「研究は成果が上がった?」「有意義な1年だった?」「充実した毎日だった?」と口々に聞かれる。やっぱり有意義で充実してなきゃいけないんだなあ,のんびり,スカスカじゃだめなんだなあ,そういうのは「無駄」とみなされるんだなあ,とひそかに反発を感じながら,でもまあ素直に質問を受け取ることにする。  あらためて振り返ると,けっこう忙しく,充実していたとも言える。ボストンで私の受け入れ責任者となってくれたトラウマ臨床の第一人者,ジュディス・ハーマン史とは毎月濃密なディスカッションができたし,研究会に参加して専門領域全般の知識をアップデイトすることもできた。自分の研究についても洞察が進み,さらなる問いが生まれた。ニューヨークとカナダでは学会発表をしたし,ペルーにも行った。
 そしてこの1年で新著を(3冊も!)出した。「偉いぞ,自分!」と褒めてやってもいい気がする。  
 うーん,でももう少しじっくり考えてみる。この一年間でいちばん大きな収穫って何だろう。後々まで残るものって何だろうと。そうすると,今リストアップしたようなことは表面的なものに思えてくる。
 そして,一つだけ選ぶならあれだな,マイクとトムとの交流だな,と思う。 二つの大きなダイヤモンド 
 今回,ハーバード大学が私の受け入れ機関だったのだが,家族の都合もあり,私はニューヨークの郊外に生活の拠点を置いていた。そして,月に2度ほどボストンに行っては数日間過ごし,研究会に参加したり,研究に関連する人に会ったりしていた。  
 ボストンではマイクとトムの家に居候していた。彼らは,私にとってはソウル・ファミリー=魂の家族のようなものだ。  彼らは二人ともカウンセラーで,性的虐待を受けた男性のセラピーを専門にしているので,私の研究テーマとぴったり合う。
 彼らと知り合ったきっかけも,2001年にニューヨークで行われた,男性の性被害についての学会だった。マイクは元・人類学者で,若いころはマーガレット・ミードの弟子だったという変わり種である。トムは大学でソーシャルワークを教えている。二人は私より10-20歳近く年上で,ゲイ(同性愛者)で,10数年来のカップルである。マサチューセッツ州では同性間の結婚が認められており,彼らも結婚している。  
 彼らと一緒に過ごしていると,自然とゲイの友だちが増える。彼らの住むジャマイカ・プレインという地域は性的マイノリティに寛容で,ゲイの多いおしゃれな街として知られている。隣の家にはマーサとキムというレズビアンのカップルが住んでいる。マーサは精神科医,キムはソーシャルワーカーで,私がいる間に,タイラーという男の赤ちゃんを養子にした。以前から養子斡旋機関に登録していたのだが,ある日突然電話がかかってきて,赤ちゃんが生まれたけど,お母さんが育てられないからどうかと言われ,急きょテキサスかどっかに迎えに行くことになったという。それ以来,やれ,首が据わった,ハイハイしだした,熱を出した,と大騒ぎをしながら二人で仲良く育てている。マイクやトムも,おじさん気取りでタイラーくんをかわいがっている。  
 同性愛者たちをめぐる日本の状況といかにかけ離れているかをつい忘れて,ボストンの話をすると,みんなに驚かれる。けれども,ボストンでは彼らの生活があまりに自然で,無理がなくて,同性愛という「特殊性」はほとんど意識に上らない。そして,家族を作っていくことの意義もごく当たり前のように受け入れられる。  
 同性愛者どうし一緒に住みたければ勝手に住めばいいのに,なぜわざわざ結婚という制度が必要なのか,という議論もある。でもマーサとキムのように一緒に子どもを育てたいと思えば,ある程度の制度は必要になるだろう。またトムは2年ほど前に大動脈弁閉鎖不全がみつかり,大手術を受けた。もしその数年前にマサチューセッツ州が同性間の結婚を認めず,彼らが結婚の手続きをしていなかったら,マイクはただの友人としかみなされず,トムの病気や手術について病院から何の情報も与えられず,術後に付き添うことも許されなかったに違いない。  
 言うまでもなく,私は彼らがゲイだから居候させてもらっていたわけではない。二人ともとても気が合うから,そして彼らもそう思ってくれるから一緒にいただけである。とはいっても女性にとって,異性でありながら,自分に性的な眼差しを向けてこないゲイの男性は,貴重な存在でもある。ずっと以前に観た外国映画に,「ゲイの友人を持つのはダイヤモンドを持つようなものよ」というせりふがあった。とすると,私は大きなダイヤモンドを二つも持っていることになる。 成長過程とファミリーの再構成 ジャマイカ・プレインは自然が多く,マイクやトムと池のまわりや森林公園を散歩しながら,よくとりとめもなく話をした。カウンセラーなのだから当たり前ではあるが,二人とも話を聞くのがうまい。私が英語で表現できない複雑なことも,適切な問いで明らかにしてくれる。そして甘やかしはしないが,とても褒めてくれる。私が日本での臨床再開について相談したときも,「君に診てもらえる患者さんはラッキーだと思うよ」という励まし方をしてくれて,びっくりした。  
 人は皆,親や家族を選べない。産み落とされた人間関係の中で成長するしかない。けれども20代,30代以降の人間の成長とは,自分なりの感性を磨き,波長の合う人たちとつながり,ソウル・メイトやソウル・ブラザー,ソウル・シスターとして関係を育みあい,血縁も国籍も性的指向も抜きにしたソウル・ファミリーを作っていくことなのかもしれないと思う。  マイクとトムだけでなく,私のソウル・ファミリーは世界に広がっている。そのことの有り難さを思うと,呆然とさえする。タイラーくんの場合は,産み落とされたときからソウル・ファミリーの中にいるのかもしれない。そして血縁でつながった家族も,成長の中であらためてソウル・ファミリーの一員として,選び直されていくのかもしれない。

宮地尚子 1986年京府医大卒。医療人類学と出会い,89年から3年間,米国に留学する。帰国後,医学部の教員を経て,2001年より現職。07年秋より1年間,フルブライト上級研究員として再び渡米し,暴力被害者のトラウマ治療で名高いケンブリッジ・ヘルス・アライアンスに所属(客員研究員)。近著に『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房),『医療現場におけるDV被害者への対応ハンドブック』(明石書店,編著),『性的支配と歴史――植民地主義から民族浄化まで』(大月書店,編著)。


(以下、psycho)


 この記事を読んで、宇仁田ゆみ著「うさぎdrop」を思い出しました(冒頭のイメージ)。
 
 この本自体は、かなり面白い。祖父の隠し子を、孫が育てるという、何がなんだか分からないようなものだけど、それは絵にすると違ってくるのです。
 
 この記事では、同性愛のカップルが養子をかわいがっているくだりがあって、子どもをかわいがるという、それが共通点です。そもそも日本では養子をということも特殊と言えば特殊ですが。
 家族とは、もともともてるけれども、あえてもとうとすることも出来ると思います。
 家族をあえてもとうとすること。それを、日本はもっとプラスに評価していいのではないでしょうか?



2008年11月11日火曜日

「おかあさんががんになっちゃった」

書評「おかあさんががんになっちゃった」 藤原すず著 メディアファクトリー 950円(税別)

 マンガです。
 
 まえがきにもあるように、がんを克服した本ではありません。

 でも、著者の「おかあさん」は本当に満足した暮らしをしていったのではないかと思 える本でした。
 
 家族の苦労、治るためなら何でもしたい、してあげたいという気持ちが書かれている本です。

 特にこの本では、がんセンターのかかわりがとても よくて、主治医の松本先生が、ユニークで楽しく、でも「治療ができなくてくやしい」と心情を吐露したり、と、とてもすてきにえがかれています。
 
 そして、お かあさんのがんの受け止め方、とてもいいなあと思いました。「(がんが)消えなくてもいいんですよ。このままの大きさでずっといても。がんも私の一部ですからね。あんまり嫌ってもね」。

 どうして、お母さんががんになったのか、と逡巡する著者。そして、そのお母さんとの日々を大切に過ごしていくのです。あとがきも秀逸です。

2008年11月10日月曜日

書評 「3つの真実」




書評 「3つの真実」 野口嘉則著 ビジネス社 1238円(税別)
 
 この本はビジネス書でしょうし、 ほとんどの人はそのような目的で読むと思います。

 しかし、私は興味が惹かれた点は、違いました。

 この中で主人公の家族にうつ病、不登校があったのです。つ まり私は、これらの疾患を持つ人の家族で、その人たちにどのように接するか、その人たちがもしもこの主人公のような物質的成功や効率主義を重んじる人の場 合、どのように話をすればいいのかをこの本から読み取れたのです。

 そうすると、主人公には家族のうつ病や不登校を「理解せよ」と進言したり、彼の態度を非 難してはいけないのです。この中に登場する老人のように、相手に心を開いてもらうために、どうしたらいいのか・・・。

 いえいえ、「相手に心を開いてもら う」ことはできないのです。なぜなら、「心を開く」のは相手だからです。
 相手からいかに、信頼してもらうか。一言ではまとめられないですが、それがこの本に書かれていると私は思っています。

2008年11月9日日曜日

オバマさん

(2)シカゴ オバマを鍛えた貧民街:NBonline(日経ビジネス オンライ

 私は基本的には、政治、ことに自分の国以外の政治には興味をあまり持っていません。自分の仕事は精神科医だからと思っているからです。

 その良否は、それぞれの意見があるでしょうが、それはとりあえず保留です。

 そんな私は、新アメリカ大統領のバラク・オバマさんのことが気になっていました。知り合いでも何でもないのですが、オバマさんが地域活動をされてそこから大統領になろうとしたことを、知ったからです。冒頭の記事はそれを読みやすく、リアルにまとめてくれたもので、読んでいて改めてオバマさんへの期待が高まり、好感が強くなりました。

 この記事のタイトルも気に入ってしまったのです。

 というのも、私は精神科医として北海道浦河町のべてるの家のメンバーに鍛えられたと思っているからです。自分がどれほどの精神科医か、といえばまだまだのレベルですが、確かに新前を鍛えるのにはふさわしい場所でした。

 べてるのメンバーは、自分の思いをどんどん相手に伝えます。私に対する批判ももちろんありましたし、当時は新前だから批判があって当たり前とはとらえられず、自分自身が否定されたような勘違いも多々ありました。

 そのうちに、人の話を聞くのは面白いものだな、と思えたのです。私自身は新前ですから、特に何ができるということもないのですが、話を聞いていくことはできました。すると、相手の大事にしているものがよくわかり、それを自分も理解したと伝えていくことを繰り返していました。

 妙なことですが、そうしているうちに、相手が変わるのです。

 この記事では、オバマさんは当然精神科医ではないので、話を聞くことだけがいいとは思わずに別の手法で相手とさまざまな地域活動をしたということが書かれていますが、基本は同じかもしれないと思えました。

 オバマさん、昨日のニュースで娘さんのために犬をお探しされていると聞きました。ただ、その条件が(1)娘さんのアレルギーを悪化させないこと(短毛種がいいのではないでしょうか、と私は思いましたが)
(2)施設に待機している雑種の犬であること
ということでした。

 我が家の犬の系統をお勧めしたかったのですが、(1)にはマッチしましたが、残念ながら(2)にはあてはまらず・・・。

 それはさておき、冒頭の記事でオバマさんには意外かもしれませんが、私は共通点を勝手に感じてました。

2008年11月8日土曜日

マイナートランキライザーと依存症

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎


 言葉を失うような不幸な事件が大阪で起きた。
 小学校の児童殺傷事件。今回は、この事件で話題になっている精神安定剤について考えてみたい。 

 事件直前の精神安定剤服用は否定されたようなので、事件への薬の影響を云々(うんぬん)できる段階ではない。ただ、精神安定剤は、本当に必要な人だけでなく、非常に乱用されている薬である。
 病院にかかっている人のほぼ3分の1は、なんらかの精神安定剤を使っている。
例えば睡眠薬はすべてこの仲間だ。精神安定剤のために、かえって精神が不安定になっている人も本当に多いのだ。

 
 精神安定剤には、精神分裂病に使う系統=神経遮断剤と、不安や強迫感などを主体とする神経症(ノイローゼ)に使う系統=抗不安剤がある。


 前者は以前、メジャートランキライザー(強力安定剤)と呼ばれたように、文字通り効果も副作用も強力。
 一方、後者は、マイナートランキライザー(緩和安定剤)と呼ばれたが、では「軽い」「やさしい」だけかと言うとそうではない。非常に早く効く強力な睡眠剤もこの系統の中にあり、名前に似合わず、その害は重く大きい。


 例えば、10年ほど前にも問題になったトリアゾラム(商品名ハルシオンなど)。飲み始めは素早く眠れ、目覚めもよいためやみつきになりやすい。高価格で裏取引もされている。

 だが3時間ほどしか効かないから夜中に目覚め、かえって眠れなくなる。常用すると効く時間は短くなり、必要量が増し、依存症になりやすい。昼間も判断力や記憶力が落ちて、イライラや不安が募り、興奮しやすくなる。高齢者は痴ほう症状が現れることもある。

 依存症になって、急にやめると、禁断症状として痙攣(けいれん)や幻覚まで生じる。アルコールとそっくりだ。


 深酒で本当に記憶がなくなることがあるように、この系統の睡眠剤を飲むと、途中目覚めた時など、一見ふつうに行動しているのに、本人はしたことを全く記憶していないことがある。「前向き健忘」現象だ。

 米国では、依存症になった人による射殺事件も起きた。
英国やオランダではすでに禁止したが、日本では依然ごくごく一般的な薬だ。
安定を求める薬が社会の安定を脅かす、そんな「薬害」に早く気づいてほしい。



(以下、psycho)

 外来に受診している人たちの中で、最近明らかにある特定のマイナートランキラーザーを処方するのはまずい、という状況に久しぶりになりました。

 他の病院から私の外来を紹介されてきてくれている10代の女性なのですが、ある特定のマイナートランキライザー(仮にHとします)があれば、安心するし、パニック発作も起きないという人でした。別の症状もあって、ずっと県内のあらゆる精神科病院に受診した人です。それで、新しい薬は絶対に嫌で、H出なくては駄目、と言っていたのでした。

 自分が間違っていたらいいなと思うのですが、これは、もしかしたらHという薬の依存症ではないのだろうかと思うのです。

 その薬がないと、安心して暮らすことができず、だんだんと飲む回数が増えている(一日で)ということです。さらに、私はそのHという薬を頓服でしか処方していないので、それでは足りないと言って、もっと出してほしい、と話してくれているのです。

 余計なお世話だろうなと思いつつ、依存症になってしまったらお互い辛すぎるので、依存症になる可能性があってと話してみました。

 「そういう依存症になる可能性があるのだから、私はこの薬を出すのが怖いし、出したくないんですが」私がそういうと、その人は依存症の人が必ず言ってくれる言葉を出しました。
 「私は、そんなことにはなりません」。

 いったい何回くらいその言葉を聞いたでしょう。その言葉を信じて、何回くらい薬を処方して、依存症の病をさらに深くして私は後悔したでしょう。

 私はため息をついて言いました。
「その言葉を信じたいけれども…。そうはならない人ばかりで、・・・。私もつらいところで・・・」
かなり歯切れが悪かったのですが、仕方ないとしか言い訳が思いつきませんでした。

 その人はその時は別な薬を飲んでみると言って外来から去りました。次の予約の時にどうなるんでしょうか。今も不安です。

2008年11月7日金曜日

早期教育がはじまる!?

英語力つくと「省エネ脳」 学習期間で活動に差
このニュースについての掲示板

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2008年11月6日】

 小学1年から英語を学んだ中高生は、中学から学び始めた生徒より、脳が働かなくても英語を理解できるとの研究結果を酒井邦嘉(さかい・くによし)東京大准教授(言語脳科学)らがまとめ、5日付の米科学誌に発表した。

 酒井准教授は「英語力がつくほど、考えなくても答えが出る『省エネ脳』になることを示している。6年以上、英語に接する重要性を示唆するものだ」と話している。

 小学1年から毎日英語の授業を受けた中高生12人と、中学から勉強を始めた18人を対象に、脳血流の変化を測る機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使い、英語の文法問題を解いている最中の脳の活動を調べた。

 両グループの成績の平均値に大差はなかったが、中学からのグループでは、成績の良い生徒ほど文法をつかさどる左脳の中枢の活動が活発化。逆に小学校からのグループは成績の良い生徒ほど活動が盛んでなかった。

 英語習得の初期にはこの文法中枢の活動が高まり、英語力が定着するほど文法中枢を使わなくても英語を処理できるようになってくるためだとみられる。

注)米科学誌はHUMAN・BRAIN・MAPPING


(以下、psycho)

 この記事を読んだお父さん、お母さんたちは、「やっぱり、早期教育は大事だ」と感じる可能性は高いのでしょう。そして、早期教育に英語を、という潮流が主流となるのかもしれません。

 私はどっちでもいいや、といういい加減派なので、あまりそう感じないのですが・・・。

 ただ、普段外来で来てくれる人たちとお話ししていると、気になるのですが、ほとんどの方の抱いている感想です。
 「発達障害は、治りますよね?訓練で、普通の子たちと同じようになるんですよね」というものです。

 現在の発達障害のとらえ方としては、一言では「一生もの」です。ただ、発達障害になぜなるのか原因が分からない以上、どんなふうになっていくのかは予想と、これまでの諸外国での研究や報告の蓄積でしかわかりません。だから、「治る」かもしれませんが、おそらく前述の研究から考えて「一生もの」の可能性が高いのです。

 ただ、日本だけなのか他の国や文化圏がそうなのかわかりませんが、「人間、鍛えれば、勉強すれば、頑張れば、望ましい方向に変化する」という思考が、非常に多いように思います。

 発達障害が「治る」、しかも「療育して」「頑張れば」「治る」という考えは、そういうところからきているのでしょう。

 早期教育も、人間が人生の「早期」で、「頑張って」「鍛えれば」「望ましい方向に変わる」と考えているからできることでしょう。

 それはそれで素晴らしい考えです。でも、それだけでいいのかな、と私は思ってしまうのです。

 じゃあ、今暮らしている発達障害の人たちは、頑張らなかったの?療育しなかったの?という疑問がわきます。そんなはずはないんです。頑張らなかったのでもないし、療育しなかったわけでもないでしょう。

 早期教育や、「頑張れば望ましい方向に人間は変化する」という考えだけを推し進めるのは、辛くはないかなと思うのです。

2008年11月6日木曜日

誤診って…

シリーズこころ これ、統合失調症?
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20081029-OYT8T00167.htm

医師の問診不十分で誤診


統合失調症と誤診された患者に処方された1か月分の薬。抗精神病薬など13種類にのぼった

 妄想や幻覚が表れる統合失調症で、治療を受けている患者は約70万人にのぼるとされる。一方、うつ病など心身の不調で受診したところ、統合失調症と誤診され、適切な治療を受けられない例も少なくない。

 東京都の男性会社員(55)は、その一人。2005年秋、ひどいだるさや不眠に悩まされ、仕事の集中力も低下してきた。

 そればかりではない。「社内での会話を盗聴されているのではないか」とおびえ、妻(48)を「スパイじゃないか」と疑いさえした。

 近くの病院の精神科を受診した。待合室で数枚の問診票を渡され、現在の心理状態に一番近い項目を選ぶように言われた。「被害妄想がある」といった項目に「○」印をつけた。

 診察室に入ると、30歳代と思われる男性医師は、開口一番言った。

 「統合失調症ですね」。医師は、いくつか質問し、男性会社員が盗聴を恐れていることを聞き出すと、すぐに薬を処方した。診察は10分間ほどで終わった。

 抗精神病薬や抗不安薬などを飲み始めた。

 薬の影響か、体重が半月で7キロ増えた。勤務中も、だるさは一層ひどくなり、仕事に身が入らない。ますます気分が落ち込み、「日々、寄る辺ないさみしさに悩まされた」という。通院から1年たったころには、妻に「死にたい」と漏らすようになった。

 統合失調症は、妄想、幻覚、まとまりのない会話、目的を持たない行動、意欲の欠如などの症状が、1か月以上続く場合などに診断される。思春期から青年期に発症することが多いが、妄想を主体とするタイプは、30歳代以降に発症することもある。

 妄想は、理屈に合わない、奇異なものになるのが特徴で、周囲は何もしていないのに「盗聴器で常に監視されている」「内臓を他人のものとすべて入れ替えられた」などと信じ込む。

 この男性の訴えは、一見、統合失調症の典型的な妄想のように見える。

 「自分では幻覚や妄想がひどいとは思えず、統合失調症と言われてもピンとこなかった。でも、専門家がそう言うのだから、間違いないだろうと思った」と男性は振り返る。

 統合失調症の診断には、症状や、生活歴や仕事内容などについても十分に問診し、発症までの経過などを聞くことが必要になる。

 男性には、「盗聴器」や「スパイ」の恐怖を、実際に身近に感じた経験があった。ところが医師は、それを尋ねなかった。

(2008年10月29日 読売新聞)


(以下、psycho)

 子どもの精神科を志向しているためでしょうか、私は、問診票をみただけで診断をすることはほとんどありません。

 というか、それだけじゃわからないような医者ですから・・・。魔法使いじゃないし。もしも魔法使いだったら、こういうつらさ自体を起こらないようにしているでしょうし。

 閑話休題。

 子どもは成長するので、今の診断が後で変わるというのはよくあることです。ADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されていた子どもが、数年後にPDD(広汎性発達障害)という診断になっていたということも、そうそうないことではないようです。もちろん、私だけでもないようです。

 よっぽどつらそうな大人の方の場合は、お話しやすくするために少量の内服薬を試してもらってから、詳しく聞くということを私はします。でも、あんまりしたくないです。どんな状況かわからないのに、お薬での治療を始めてしまうと、後戻りできないような気分に私はなるので、したくないですし、避けてます。

 私の場合は、お話を聞いて、そして、心理検査をします。かかわる時間を増やさせてもらうという側面もありますし、内科ではある程度問診した後で、検査の計画を立てて検査をしますから、同じような感じでやります。外来を受診された方たちも、この方式は意外と受け入れやすいようです。

 診断を間違うということは、病院関係以外の職種の方の場合考えにくいことかもしれませんが、なくはないです。医者も人間ですから。

 私は、大事なことは間違いを気付けるシステムを作ること、と思っています。そのシステムの一つの方法として、心理検査は大事だなと思っています。

 他にもいろんなシステムがあると思うので、もっと知りたいなと思っています。

2008年11月5日水曜日

発達障害もサービスの対象 障害者自立支援法

発達障害もサービスの対象 障害者自立支援法


記事:共同通信社 提供:共同通信社 【2008年11月4日】

 厚生労働省は31日、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害者について、障害者自立支援法の対象として明確に位置付ける方針を、社会保障審議会障害者部会に示した。

 発達障害は先天的な脳の機能障害で、現在も障害者自立支援法の対象となっているが、自治体によっては同法に基づくサービスの支給対象として認めていないなど、対応にばらつきがある。

 厚労省は今後法改正や通知などで位置付けを明らかにし、発達障害者がサービスを受けられるよう徹底したい考え。

 また、事故や病気などによる脳の損傷で記憶力や思考力が低下する高次脳機能障害についても、精神障害として同様の対応を行う方針。

▽障害者自立支援法

 障害者自立支援法 地域での自立と就労支援を目的とし、身体、知的、精神障害者への福祉サービスを一元化した。2006年4月施行。以前の「支援費制度」では障害者の所得に応じた負担(応能負担)だったが、財源確保などのため、サービス利用料の原則1割負担(応益負担)に転換した。1カ月の負担上限額が設けられ、通常は3万7200円。低所得者は年収などに応じて2万4600円と1万5000円、生活保護世帯ではゼロとなっている。負担が以前より重くなった人も多いため批判は根強く、独自の軽減策を設けた自治体もある。


(以下、psycho)

 私は、自分の外来では独断かもしれませんが、とっくに自立支援を適用してました。というのも、発達障害の子どもたちは、私のところへくる段階でかなり、精神的な症状を起こしていることが多いからです。

 具体的には、抑うつ症状(うつ病と似た症状です)、幻覚妄想状態(もともと被害的に発達障害の子どもたちはなりやすいのですが、それがかなり高じた状態)、不安状態(不安が強くて、極端な場合は家から出られない、など)という症状が主です。

 彼らが発達障害であるから、精神障害の自立支援法の適用にならないというのは、単なる言葉の問題と私は捉えているのです。だから、外来で受診の際に最初に、親御さんたちに自立支援の適用になることを伝えて、継続的に外来にきてほしいということを伝えます。

 かなりの親御さんは「ああ、そういう制度があるんですか。ならよかった」と言ってくれますが、中には「うちの子供はそんなに重症なんでしょうか?」と不安になる場合もあるようで・・・。

 難しいなと思っていますが、できる範囲で使いたい法律です。

 だから私からすると、「遅いよ!」という気持ちでいます。

2008年11月4日火曜日

糖尿病治療と精神科治療の共通点

なくそう・減らそう糖尿病 第10部・患者の心理的葛藤/3 


記事:毎日新聞社 提供:毎日新聞社 【2008年10月31日】

なくそう・減らそう糖尿病:第10部・患者の心理的葛藤/3

 ◇チーム医療で成果

 糖尿病患者が医師の期待通りの食事制限やインスリン注射を実行してくれない場合がある。改善に向け、糖尿病外来のある長岡中央綜合病院(新潟県長岡市、531床)は、約10年前からチーム治療で成果をあげている。

 チームは八幡和明・副院長を軸に糖尿病の専任看護師16人(外来3人、病棟13人)、薬剤師4人、管理栄養士6人で編成されている。毎週1回、会議を開き、チーム全員が患者の状態を把握。それぞれの立場で、だれもが助言できるようになった。

 退院した患者が数カ月後に外来に訪れた場合、入院時の担当だった病棟の看護師が外来に現れ、「体調はどう?」と会話を始める。「日ごろから交流があると、性格的に打ち解けにくい患者も、チームのだれかに心を開く」とベテラン看護師の丸山順子さんは話す。

 さらに、メンバーは週に2回、患者やその家族とランチをともにする。患者と自由に会話をする中で、普段は気づかない患者の食事の仕方、考え方などが分かってくる。「ざっくばらんに話をしていると、患者さんも本音を言う。アドバイスしやすくなる」(丸山さん)という。

 糖尿病の治療では、患者が自ら自己管理の重要性に気づくことが大切だ。八幡さんは「患者と同じ目線で治療に当たらないと、なぜ患者が血糖値の管理につまずくのか気づきにくい」と語り、患者との接点が多いチーム医療の効果を強調する。

 八幡チームの一員だった瀧澤香織さん(36)は2年前、魚沼病院(新潟県小千谷市)に移った。糖尿病の専門医はいなかったため、自己管理がうまくできない患者も外来に来ていた。長岡中央綜合病院での経験を生かし、医師や栄養士、薬剤師、リハビリの担当者でチームをつくった。それ以来、スタッフが患者にきめ細かく指導したり話しかけるようになった。

 瀧澤さんは「患者へのアドバイスが具体的になり、双方のコミュニケーションも増えた」と語る。

 チーム医療は人材育成でもある。【小島正美



(以下、psycho)

 以前にとある製薬会社の主催する糖尿病に関するセミナーに出席したことがあります。そのときは、ネットでだったのですが(形式がネットを介しての研修でした)、天理よろづ相談書病院で糖尿病治療にかかわっておられる石井先生をはじめとした、スタッフの方たちからお話を聞けました。

 精神科治療と似ているなと思えたのです。とくに、
(1)長期にわたってフォローするので、患者さんもスタッフも無理をしないというスタンス
(2)「どういう気持であったのか」ということをメインに据えて話をするという姿勢
(3)問題点を指摘するよりも、問題点をもっている人にどんなふうに肯定的にかかわれるかという点
です。

 ただ、こういう方法はまだまだ他のところに伝わるまでに至っていないようで、「他のところ」で精神科医をしている私でさえ、その場の流れにのまれてしまって、症例検討の際に患者さんの問題点を指摘する、ということをしてしまっていました。

 どうしたら、こういうことをうまい具合につたえていけるのか・・・とその時からずっと考えています。

 そういう意味で冒頭の記事は、うまく伝わっている例だと思えるのです。どうやって、奈良県の天理市から新潟県の長岡市にうまく伝わったのか・・・、「伝染」しえたのか・・・と思います。

 あ、前文の「伝染」は、今マルコム・グラッドウェル著「急に売れ始めるにはワケがある」(ソフトバンク文庫)を読んでいるせいでしょう。

2008年11月3日月曜日

子宮頚がんワクチンの開発。

2008/10/31(金)

子宮頸癌(がん)ワクチンの安全性を確認

承認から2年になる子宮頸癌(がん)を予防するためのワクチン(商品名:Gardasilガーダシル、※日本では未承認)が安全であることが、米国当局により報告された。

米国疾病管理予防センター(CDC)は、11-12歳からこのワクチン接種を受けるよう勧めている。Bloomberg(ブルームバーグ)ニュースによると、CDC予防接種安全対策室は、過去2年間に少女および若年女性を対象に実施された37万回のワクチン接種について調べた結果、血栓をはじめとする重篤な症状が引き起こされるとのエビデンス(根拠)は認められなかったとしている。一方、予防接種が不特定多数との性行為を助長すると懸念するグループなど、このワクチンを批判する団体は、Gardasilの安全性に疑問を呈し、性感染症の予防になるというような誤った認識を女性に与える可能性があると主張している。

Gardasilは、性行為により伝播し、子宮頸癌の原因となる4種類のヒトパピローマウイルス(HPV)を予防するワクチンである。今回の研究は、3回のワクチン接種のうち少なくとも1回を受けた少女および若年女性19万人の医療データを、別のワクチンを受けた女性またはワクチンを受けていない女性のデータと比較したもの。米フィラデルフィア小児病院のPaul Offit博士は今回の結果について、「心強い結果。このワクチンが安全ではないとの一般的認識がある。否定的な情報に対抗する重要な知見である」と述べている。

CDCの報告によると、11~17歳の少女のうち推定25%がこのワクチンを接種しているとされ、新しいワクチンの1年目の接種率としては極めてよい結果であると、CDCのLance Rodewald博士は述べている。この調査は少女のみを対象としたものであるため、実際はもっと多くの若年女性がワクチンを受けていると思われる。Rodewald氏によると、Gardasilは極めて忍容性が高く(well-tolerated)、若年齢で接種すれば少なくとも6年は予防効果が持続するという。また、このワクチンによって米国で子宮頸癌による死亡が年間4,000人減少すると期待されている。

副作用の1つに失神(fainting)があるとされ、米食品医薬品局(FDA)は先ごろ製造元のメルク社に対し、接種後15分間は失神がないか医師が患者を監視するよう勧める警告を添付文書に追加するよう求めた。7月には、接種部位の痛みや吐き気など、Gardasilによる8,000例の副作用(副反応)の報告がCDCに提出されたことが報道された。死亡例は15例の報告があり10例が確認されているが、いずれもワクチンによるものではないとCNNは報じている。CDCの研究結果の発表を受けて、メルク社はワクチンの必要性を強調する声明を発表している。

[2008年10月22日/HealthDayNews]
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(以下、psycho)


 もしも私に娘がいて、このワクチンをうけると言い始めたら、複雑な気持ちになるだろうなあと思います。。

 接種しなければ心配な反面、接種しなくてはならない状況なんだなあと思うとそれもまた心配。おかしな男にだまされていやしないかと、気になりすぎてしまうことでしょう。

 性的に大人になったと喜んでばかりいられない気持ちになってしまうでしょうし、さみしい気持ちとともに、その娘の将来を憂う気持ちが出てきそうです。

 幸いかどうかわかりませんが、私には男の子しかいないので、子宮頚がんの心配はしなくてはいいのですが、それはそれで心配。

 最近は男の子でも、性的虐待の被害者になりうるそうですし、いじめなんかも男の子同士のほうが陰湿なようですし。


 でも、子どもをもつって、心配することが多いことがいいのかもしれませんが・・・。




 


2008年11月2日日曜日

研修医制度を振り返る

医療維新    2008年10月31日トップに戻る    レポート    初期臨床研修制度◆vol.2
医師の質、「向上していない」が7割
スーパーローテーション方式へは一定の評価 
村山みのり(m3.com編集部)
   


Q.2 2004年に必修化された臨床研修制度により、以前の研修制度時と比べて初期研修終了後の医師の質は向上したと思いますか

 「そう思う」「ややそう思う」を暖色、「あまりそう思わない」「そう思わない」を寒色で示した。「初期研修終了後の医師の質が向上した」、または「やや向上した」とする回答は、大学病院勤務者で約2割、それ以外の医療機関・施設勤務者で約3割にとどまっており、大半の回答者が「そう思わない」「あまりそう思わない」としている。大学病院勤務者では、「そう思う」と回答したのはわずか3%だった。


Q.3 現行制度ではスーパーローテーション方式が必須となっていますが、幅広い知識が身に付く一方で、後期研修以降、専門とする予定のない診療科も必ず研修をしなければならないことについて問題視する声も多く聞かれます。この方式について、どうすべきであると考えますか  

「ストレート方式との選択性とすべき」との回答が約半数を占めるものの、スーパーローテーション方式を続行すべきであるとする回答もほぼ半数となっており、この仕組みが課題を含みつつも一定の評価を得ていることがうかがえる。
 「続けるべき」とする回答者が大学病院の方が若干少なくなっており、Q.2の回答結果の反映とも考えることができる。
 自由意見としては、「スーパーローテーション期間を延長すべき」「短縮すべき」の両方の声があったほか、「内科系ローテーション、外科系ローテーション、ジェネラリストローテーションなどパターンの多様化を」などの意見も上がった。


(以下、psycho)

 医師の質が向上していないのに、現行の研修医制度を続ける必要があるのかないのか、という問題を提起したいのかもしれませんが、いくつか検討すべき点があると思います。

 まず、研修医制度が始まってからだいたい4年くらいしか続いていないのです。つまり、医師免許を取得して4年目くらいの医師が最初の研修医制度卒業生になるわけです。

 自分がその年次の医者だったころを考えると、まだまだ心もとないとしか言いようがない時期でしたから、まだまだ医師の質が云々といえるのかどうか、疑問な時期ではないでしょうか。

 そして彼らを評価するのは、年齢のいった指導医なわけです。

 つまり年齢によるバイアスがかかっているのではないか?ということでもあり、評価する人の違いもあるのではないか?ということを考えてほしいということです。

 次に、ストレート方式と現行の研修医制度の違いもまた比べるのが難しいのではないかと思います。私は、変則的な研修制度を受けた人間だと思います。最初は、全然精神科を考えておらず、小児科を偶然研修の第二選択として選び、第一選択、いわゆるストレート方式の頃の「医局」に入った場所は全然別の場所でした。

 自分がいい医者かどうかは謎ですが、精神科医としてはある程度は治療できる部分があるようです。ただし、私は採血ですらできない人ですし、まして中心血管栄養IVHもできません。それでいいかどうかということでしょう。

 私個人としては、不自由は感じていません。内科と連携させてもらっていますし、採血検査も看護師さんがメインでやってもらえるからです。

 私は何をしているのか。

 つまり私は、外来に受診した人たちに対して「安心感」を渡しているだけです。そして、薬の依存にならないように、ゆっくりと病院以外の世界が生活の比率に高くなるようにしているということです。私は、それでいいと思っています。

 逆に、内科の医師で「安心感」を渡せたらそれはそれでいいと思っていますが、なかなかそういうことにはいかないようです。その理由はよくわかりません。

 研修医制度については、まだまだよく論議していくことが大事と思いますから、こういう集計や提言は大事だと思いますが、単純比較はできないと思います。

2008年11月1日土曜日

書評 藤家寛子×ニキ・リンコ「自閉っ子、こういう風にできてます!」





書評 藤家寛子×ニキ・リンコ「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社、1600円;税別)


  今では自閉っ子たちが活躍している場が全くなくはないので、そのために彼らがどのような考えをもっているかがわかることが増えた、そう思います。

 この本は、そういう本の 一つだと思うのですが、花風社の浅見さんと藤家寛子さんとニキ・リンコさんとの対談は、対談、という堅苦しさはなくて、読んでとても楽しめます。
 本文で浅見さんも言って おられるように、自閉っ子たちの身体的な障害(おもに感覚障害や認知の障害)は、彼らとの付き合いも長い私でさえ、想像したことがないくらいすごかったのです。
  冒頭からいきなり「『雨ニモ負ケズ』は、やっぱり雨が痛いからできたんだと思った」という・・・。驚きというか、いきなりのフックでした。

 そして、もっと 驚いたのが、ニキ・リンコさんが反抗期のことを読んで、親にその通りに反抗してみた、というくだりです。
 私も同じだったから。
 自閉っ子はスペクトラム障害と いって、きっちりと自閉っ子とそうでない子が分けられるわけでもないから、私もそうだったんだ!と納得してしまいました。そういう発見が楽しい本です。

2008年10月31日金曜日

書評「ダイバーシティ」




 書評 「ダイバーシティ」 山口一男著 東洋経済新報社 1800円(税別)

 この本は二つの部分から成り立っています。前半はフアンタジー、後半は教育劇でゼミの場面を扱っています。

 好みがあるでしょうが私は前半が好きです。

 他 の人が持ち合わせているものをもたない主人公ミナが数々の論理パズルを解き明かしつつ、魔法使いに会ってそれを手に入れるという内容です。
 
 数々のパズルの 中には多くの困難が含まれています。その中で、うっそうとしたさびしい森を通るとき、ミナは幻覚を観るように昔のことを思い出してしまい、そのざわめきに より、孤独感に追い詰められます。

 その時に、ミナは「私はひとりぼっちじゃない。人は自分がひとりぼっちになることを恐れて、自分のことしか考えなくなる から、かえってひとりぼっちになるのです。私は、自分がひとりぼっちになるとは思わない。私はひとりぼっちは怖くはないし、自分のことだけを考える人間 じゃない。だから私は、絶対に、ひとりぼっちにはならないわ!」と口にします。

 この場面が、自分と自分の周りとの関係を肯定的にとらえ、人との関係を気付 くという意味をあらわしているのではないかと思えるのです。

2008年10月30日木曜日

禁煙治療は苦しくない!

「やめたい」葛藤1年半 結婚も決まり笑み 新薬が効果、禁煙外来 「ニッポンの現場-記者がゆく」
このニュースについての掲示板

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2008年10月28日】

 公共の場で禁煙が進み、歩きたばこも違反金の時代。厚生労働省の調査では、喫煙者のうち女性は3人に1人、男性は4人に1人が「やめたい」と考える。それでもやめられない人向けに「禁煙外来」を設ける病院が増え、全国で7000を超す。禁煙の最前線を訪ねると、新薬も開発され、効果を挙げていた。

 「喫煙者の半分はたばこが原因で早死にするといわれてます」

 年間100人が受診する大阪府豊中市の「薗はじめクリニック」。1時間半のカウンセリングは衝撃的な言葉で始まった。薗はじめ院長から「どんなの吸ってるの」と聞かれ、「軽い」と思っているたばこを見せる。「軽いのでも体への影響は大差ない。喫煙にはきちんとした治療が必要」。熱く語る説明に納得。何枚ものうろこが目から落ちた。以来3カ月、何とか吸わずにすんでいる。

 「熱狂的阪神タイガースファン」という豊中市の会社員斉藤久美子(さいとう・くみこ)さん(32)の喫煙歴は十数年。1日1箱、多い時で2箱。薄い化粧にTシャツ、スカート姿の斉藤さんは「映画やライブの途中も抜け出して吸った」と振り返った。

 「やめてほしい」。禁煙のきっかけは付き合って2年の彼氏のひと言だった。出産への影響も頭をよぎった。

 「やめる、やめる」。軽く応じた。でも、やめられなかった。車で出掛ける時は、何度も「トイレに行きたい」と止めてもらい、隠れて吸った。「やめなきゃ」という思い。吸い続ける現実。1年半、葛藤(かっとう)した。

 そんな時、禁煙した友達に勧められて、6月、意を決し「最後のとりで」と考えてクリニックを訪れた。問診でニコチンの依存度を調べ、カウンセリングを受ける。健康への悪影響や、やめられない医学的理由を聞き、飲み薬の治療を選んだ。

 以前は、ほおと歯茎の間に挟んで粘膜からニコチンを摂取するガムや、シールを張り皮膚からニコチンを摂取するパッチが主流だったが、ニコチンを含まないのに、吸いたい衝動を抑えられる飲み薬が開発され、非常に効果を挙げていた。

 初診の最後、薗院長がにっこりほほ笑んだ。「やめられるまで付き合いますから」。迷いが吹き飛び、一歩目を踏み出す勇気をもらった。

 飲み薬による治療は、薬の摂取量を増やすため、最初の1週間は準備期間としてたばこを吸いつつ薬を飲む。この1週間が「一番しんどかった」。「本当にやめられるんだろうか」。何度も不安に襲われた。

 そして7月1日、禁煙開始。彼氏から毎朝「頑張れ」とメールが届いた。くじけそうな時は院長の顔を思い出し、大好きなタイガースの応援歌で自らを励ました。

 禁煙日記も力をくれた。「どうなるかドキドキする」「禁煙開始、今のところ大丈夫」。不安に押しつぶされそうになっていた時を思い出し、自分を奮い立たせた。

 もちろん、つらさはあった。でも努力や苦労とは感じなかった。「葛藤していた時の方がよっぽどきつかったから」

 10月、規定の5回の受診を終えた。たばこは一切口にしていない。肌が柔らかくなり、口臭も気にならなくなった。

 「彼氏と海に行った時も『トイレはええん』って聞かれた。ライブも最後まで見続けることができた」と満面の笑み。「たばこが障害になっている部分があった」という結婚も決まった。

 「すべてから解放された気分。禁煙って怖くないやん」

▽禁煙外来

 禁煙外来 たばこをやめたい人向けの専門外来。精神面の支援やニコチンガム、ニコチンパッチ、ニコチンを含まない飲み薬などを使って治療する。禁煙への費用は健康保険対象外で患者の全額負担だったが、2006年4月から、ニコチン依存度などの基準を満たす患者には保険適用が認められた。厚生労働省の検証調査では、規定の5回を受診した場合の禁煙継続率が、途中でやめた人より高く、効果が認められた。


(以下、psycho)

 この記事の通りのことが起こっているらしいのです。具体的に言うと、「禁煙(治療)は、苦しくない」のですよ!

 このことは10月18日に参加した産業医研修で、会場にいた禁煙治療を経験された方がお話しされていました。その時は私は半信半疑だったのです。「えー、そんなことってあり?!だとしたら、今までの苦労はなんだったのかなあ」という気持ちでした。

 今までの苦労は、しなくてもいい苦労だったのかもしれません。

 確かに、新しい治療方法が続々と最近出ていますし。たとえば、ニコチンパッチにしてもおよそ考えられなかった時代も長かったですし。

 ニコチンパッチといえば、PTSDの人に処方していたことを思い出しました。その人は女性でレイプの被害を受けた人でした。「たばこを吸っているときには、安心していられる」といった彼女に、私は「体に悪いから」という善意でニコチンパッチを処方しました。こうして書いていると、これでよかったのか、と当時の私に問いかけたい気持ちになります。

 PTSDの治療はうまくいっていたか、それさえもあまり自信がありません。私は転勤で彼女と会えなくなりましたし。

 禁煙治療と一口に言ってもいろいろあるのです。

2008年10月29日水曜日

育児不安

 昨日の外来で、3歳の男の子が再度外来に来ることになりました。以前から、多動や発達の遅れなどを主訴にしていた方です。

 と言っても、本人がそういう訴えをしていたのではありません。もっと言うと、親御さんたちでもありません。具体的には、その周りの人がそういう訴えをしていたのです。だから、親御さんたちも病院受診をためらっていました。

 それはそうだろうと思います。私は以前にこの方のお父さんに会ったのですが、かわいがってるなあというのが一目でわかるのです。一緒に遊んだり、一緒にいて話を聞くのが楽しいという方でした。私にはあんまりそういう穏やかな様子では接してくれませんでしたが、周りから言われての病院受診ですから、当然ですし、彼との関係性を見せてくれただけで私はよかったですし。

 ただ、お母さんが以前からなんとなく、子どもと接するのが苦手、ということをぽつぽつと話しておられました。ただ、お父さんがかなり子どもさんの受診を強烈に嫌がり始めたので、いったん中止せざるを得なくなりました。

 その後、別のきっかけで受診再会の運びとなったのです。それが昨日のことでした。

 子どもさんのほうは、落ち着いてきたなあという感じでした。ひとりで穏やかにブロック遊びをし、うまくできた「作品」を見せてくれるのです。「なかなか、かっこいいね」と私が言うと、照れてしまいました。かわいい・・・。

 ただ、お母さんは泣いていました。「自分はこの子がかわいいと思えないし、接し方もうまくない」とさめざめと泣くのです。

 事情を詳しく聞くと、「できちゃった結婚」でなぜか産婦人科医にまで入籍のことで説教されてしまいやり切れない気持ちになったこと、こどもさんが産後すぐに保育器に入るほどの重症となってしまい、全然授乳ができなくてとてもさみしかったこと、初めて授乳したときに看護師さんにこてんぱんに叱られて泣きあかしたこと、2,3か月目にあまりに育児ばかりでつらくなってしまい、人に子どもさんの世話を頼んで外出したところ、夫(子供さんのお父さん)にひどく叱られてしまったこと、をとつとつと語るのです。

 「それって、誰でもあることだと思うよ。若くしてお母さんになったんだし、そういうことあっていいのに」と私が言うと、ますますさめざめと泣くのです。

 実は私はこの方のことがちょっと苦手でした。おそらく、この方自身も発達障害があるのかもしれないのですが、全然コミュニケーションが取れない感じだったのです。

 でも、「なんとかしたい」というこのお母さんの気持が伝わってきて、とりあえず、いっしょに今後もお話をしていくことにしました。一応、お母さんには宿題を・・・。

 それは、叱ってしまったことを書いて、フォローをどうしたか日記にしてもらう、ということです。できるかどうか、まず、やってもらって、ということにしました。

 次回、またお会いできるのが楽しみになりました。

2008年10月28日火曜日

帰宅

 昨日、帰宅しました。家に帰ると、ほっとする・・・。息子も同じのようです。

 家に着くなり、自分のお気に入りの車のおもちゃで遊び、おばあちゃんに話をして、夕食にしました。その後、入浴。

 実家では全然お風呂になりませんでした。どうも実家のお風呂がコンパクトなのが気に入らないらしく・・・。家は、少し広めなので、それが彼の気に入っているのかもしれません。

 息子の入浴方法で結構笑えるのが、お風呂の最後に洗面器にお湯を張ってお尻だけつかることです。私は「尻湯」と呼んでいます。これも彼がお気に入りの行動です。途中で制止すると、彼は怒るのですが、寝る時間などを考えると制止せざるを得ません。

 昨日は、制止して怒ったのですが私には効果ないと知るや否や、うつむいて後ろを向きました。笑えます。

2008年10月27日月曜日

「たまりば」の西野さん

朝、いつものように早朝から、ネットを見ていました。

ゆっくりと婦人公論11月7日号を読みながら、やっていました。なぜ、婦人公論を買ったのか?といえば、ですね・・・。

昨日、ぜんぜん意図せずにコンビニに入って、読み物を買おうとしたときにこれしかなかったので購入したのです。

よかった。それは、知人の西野博之さんが記事で出ていたからです。とはいえ、しばらくお会いしていないので、西野さんは私のことは忘れたと思いますが・・・。

7年位前にお会いしたかなと思います。当時から「たまりば」をやっておられて、今もそう。以前と変わらないことをしておられます。ほっとしてしまいました。。

なんだか、西野さんが出ていただけでほっとしてあまり記事を読んでいないと気がつきました。急ぎ、読むこととします。信田さよ子さんの記事もあったのだし。

2008年10月25日土曜日

デイケア見学;その2

 今回のデイケア見学で、参考になった点が本当に多かったです。

 具体的には、デイケアに参加するハードルを高く設定することという点でした。つまり、年齢層と疾患を極力均質化して、場に共通点をもたらすということです。これが、この氏家医院のデイケア成功のポイントだと痛感しました。

 自分がこれまで使用としていたデイケアとぜんぜん違っていると思えたのです。つまり、ある程度以上に医療が恣意的にかかわっているといっていいかもしれません。そして、そのことで場に安心感と安定感をもたらしているのです。

 私自身は今まで、自分の体験した場として「べてるの家」を参考に考えていました。私から見て、べてるは雑多というか、多様性があるがゆえに安心感と安定感につながっていると思ったのです。しかし、これは各メンバーにそれまでに成功体験が多いからこそ起こりうることだと今回実感したのです。子供たちの中には、というかほとんどがそのような人との交流において成功体験がないか、薄いのですから、私にできることとしては、氏家医院でのアイディアがしばらくはいいのかもしれないと思いました。

 昨日の午後のデイケアで知った「お絵かきしりとり」も、素敵なお土産になりました。これ、ほんとに面白いです。

2008年10月24日金曜日

デイケア見学;その1

 昨日は氏家医院のデイケア見学1日目でした。

 デイケア見学、といいましたが実際には、作業所もあり、さまざまです。不登校の子たちが成人して以降もサポートする体制をとったということを院長先生がお話してました。たしかに、成人したからいきなり社会へ、というのは難しいでしょうし。

 デイケアで出会った発達障害の人たちのいきなりの人懐っこさも好きで、楽しめました。そして、作業所の喫茶店で働く元不登校の皆さんの料理のうまさや、一緒に働く人に気持ちを寄せる様子も、すごくいいなあと思えました。

 とくに、作業所の喫茶店はサービス業ですから、作業所のメンバー間の業務の振り返りなど欠かせないのです。それを彼らは、日誌をつけての情報共有という形にしていました。少し見せてもらったのですが、材料やレシピ、それに「○○くん、腰痛あり!立ち仕事させないこと!」ということも書かれていて、じーん・・・。

 息子にも、こういう青年になってほしいものです。

2008年10月23日木曜日

北海道へ

 今日から、札幌にある氏家医院http://www13.ocn.ne.jp/~ujiieiin/のデイケア見学のためにきたわけです。

 北海道へは昨日到着しました。久しぶり。意外に寒くない・・・。こんなにたくさん着込んできた私って、何?!という感じ・・・。

 例年10月末ならかなり寒いはず。私が住んでいたころはそうだったのです。でも、今年はやはり異常気象なのでしょうか・・・。

 とにかく今日からのデイケア見学、楽しみです。
 

2008年10月22日水曜日

虐待は日常に潜んでいるのかも

入院中の6歳男児を虐待 傷害容疑で母親逮捕
このニュースについての掲示板

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2008年10月21日】

 入院中の6歳男児に病室内で暴力を振るってけがをさせたとして、京都府警宇治署は21日、傷害容疑で、京都府宇治市の看護学校生の母親(30)を逮捕した。

 府警によると、男児は衰弱状態で入院。のどにやけどのあとがあり、後遺症で食事や水分を十分取れなかった可能性があるという。同署は、母親が熱湯を無理やり飲ませるなど日常的に虐待していた疑いもあるとみて調べている。

 母親は「しつけのためにやった」と供述しているという。

 調べでは、母親は今年2月から3月にかけて3回にわたり、大阪府高槻市の病院に入院していた男児を病室やエレベーターホールで殴ったりけったりし、顔などに軽傷を負わせた疑い。

 虐待に気付いた病院が3月ごろ、宇治児童相談所に連絡。相談所が男児を一時保護し、5月に府警に虐待を告発していた。男児は京都府内の児童養護施設で生活している。

 保育園に通っていた昨年夏ごろにも、園の関係者が体に傷あとがあるのを見つけたという。

 保育園の関係者は「1月ごろ、母親が『食道に炎症を起こした』と申し出て退園手続きを取った」と話している。

(以下、psycho)

 ちょうど雑誌CREA11月号の「30代で母になる」を読んでいました。当然ですが、育児の絶賛記事が満載です。

 たしかに育児は楽しいです。私も、こんなかわいい人から強烈にラブコールされるなんて生まれて初めて、と思います。

 ただ、そればかりではないです。残念と言えば、残念ですが。

 あまりだだこねられると、「あー、もう」と思うこともしばしばです。憎らしいというか、イライラするという感じでしょう。思い通りに動いてくれない子供がいると、その子供もさることながら、自分のことももっとイライラする感じです。

 虐待、というか、暴言であれば私もやってしまったことが多々あります。子供ではなく、その周りの物にあたってしまうのです。

 ただ、その時の子どものおびえた表情は忘れられません。

 そのあとは私は必ず謝ります。「ごめん、悪かった」と。そうすると、子供ってありがたいものでまた許してくれて、私のことを大事な人として一緒にいたがるのです。

 この冒頭の記事のお母さんは、そうは思えなかったのだろうと思います。この人が一番いやだったのは、この人自身なのかもしれません。

 6歳で亡くなってしまうことになったこの子のことを、思うとつらいです。

 

2008年10月21日火曜日

FDAと精神科薬物療法

FDA がうつ病初の経頭蓋磁気刺激装置を承認

提供:Medscape

1種類の抗うつ剤が効かないうつ病成人の治療を目的としたNeuroStar TMS脳刺激装置がFDAの検査に合格した。

【10月8日】1種類の抗うつ剤が効かないうつ病成人の治療を目的としたNeuroStar TMS脳刺激装置がFDAの検査に合格した。

 FDAの検査に合格した初の経頭蓋磁気刺激 (TMS) 装置となる。NeuroStarは埋め込む装置ではなくリスクも「それほど高くない」。そのため、FDAはNeuroStarに単なる「合格」を与えたに過ぎず、正式に「承認」してはいない、とFDAのスポークスパーソンはWebMDに話。

 
 2007年1月のFDA審議委員会でその臨床的有効性が試験で確立されていないと指摘されてから、合格まで2年近い歳月がかかった。TMS治療患者は偽治療患者の2倍の臨床効果を示したようであるが、この効果について委員の一部から「小さい」「境界ライン」「最低限のレベル」「臨床的意義に問題がある」などの意見が出た。


 このように有効性が疑問視されたため、委員会はNeuroStarのリスク/ベネフィット特性が電気けいれん療法 (ECT) のリスク/ベネフィット特性と同等でないと述べた。

 にもかかわらず、FDAは今日、ECTとの「同等性」を根拠にNeuroStarを認可した。

 今回の認可はTMSとECTが同じという意味ではない、とペンシルバニア大学で気分・不安障害プログラムの主任を務める精神科教授Michael Thase, MDは言う。Thase教授はNeuroStarを製造したNeuronetics Incのコンサルタントであった。教授は同社に代わって2007 FDA審議委員会にNeuroStarの臨床データを提出した。

「TMSは有効性、安全性の点でECTと決して同等でない。TMSはECTに比べ有効性は低いけれども、ECTよりかなり安全である」とThase教授はWebMDに話す。

 2つの治療法には重要な違いがある。

 電気ショック療法としても知られるECTは、けいれんを誘発するために電気ショックを用いる。TMSはけいれんや意識消失を起こさず脳の特定部分に微弱な電流を起こすため磁場を用いる。

 ECTは重症うつ病の治療にきわめて有効である。TMSはそれほど強力ではない。軽症うつ病の治療に用いられ、2種類以上ではなく1種類の抗うつ剤が効かない患者で最も効果を発揮する。


 TMSはECTより非常に安全性が高い。ECTと違いTMSは鎮静の必要がなく、外来で行うことができる。


 では、TMSはどのくらい効果があるのか。Thase教授はこれまで治療した患者を通してその有意義な効果を確認してきたし、臨床試験でも効果が認められた、と述べた。「うつ病においてTMSの治療実績は100%成功ではないが、大きな治療効果を支持するエビデンスが研究で認められる傾向にある」という。

 では、やるとすればいつ患者にTMSを試みるのか。

 今回のFDAの合格は、臨床試験で最も成績が良かった患者と同様条件の患者に使用する場合に与えられたものである。つまり、1種類の抗うつ剤では効果がなく、2種類の抗うつ剤をまだ試していない人である。

 「TMSは第一および第二選択治療とECTの中間に位置する」とThase教授は言う。「うつ病が重く入院が必要な患者にTMSを行うことはできないだろう。もちろん、適切な投与量と期間の抗うつ治療を試している人にも不可である」。 
 TMSでは週4~5回、4週間治療を受けなければならない。この間、Thase教授のチームは新しい抗うつ剤を開始し、TMS療法から徐々に離脱していくとのことである。

 情報源:Neuronetics Inc. ニュース発表
ペンシルバニア大学気分・不安障害治療研究プログラム主任精神科教授Michael Thase, MD
Karen Riley、FDAスポークスパーソン
FDA医療用具審議委員会神経治療機器パネル、2007年1月26日会議録
FDA「神経治療機器パネル会議要約」 -- 2007年1月26日
Neuronetics パネル発表、FDA神経治療機器パネル会議、2007年1月26日

WebMd メディカルニュース: "批判されたうつ病治療機器"


(以下、psycho)

 私の推測ですが、FDAは精神科の薬物療法を追いこもうとしているのでしょう。極論を言いますと(私の推測ですが)、FDAは薬物療法を廃止させようとしていると思います。

 以前にも、FDAからSSRIの危険性が発表されましたhttp://www.fda.gov/cder/drug/antidepressants/default.htm。
 また、認知症の人たちへの薬物療法にも「?」をつけていますし(m3.com http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=79607&categoryId=580&sourceType=SPECIALTY&)、抗てんかん薬に対しても否定的声明を出しています(http://www.fda.gov/cder/drug/infopage/antiepileptics/default.htm)。

確かにアメリカは、国民皆保健ではないので、長期にわたる治療に治療費をかけるのは民間保険会社にとってはあまり歓迎されません。だから、FDAも、精神科薬物療法に対して否定的見解になってしまうのだろうと思います。

 この趨勢は日本に必ず波及する、私はそう思っています。だから、私は日本でも徐々に薬物療法から離脱する方法をとったほうがいいと思っているのです。

 というわけで、明日から出身地のS市へ、子どものデイケアをやっているところへ見学に行くというわけです。

2008年10月20日月曜日

読書会;ハリーと千尋

 昨日は読書会でした。主催の私と夫以外にも数名の方が集まっていただいて、「ハリーと千尋世代の子どもたち」(山中康裕著、朝日出版社)を読みました。

 タイトルを私は実はあまり気にしていなかったのですが、参加した方から「ハリー・ポッターと千尋を比較した部分はこの本にあるのでしょうか」と聞かれて、とっさに探しました。ありました、ありました。p187です。この部分で、二つの作品を比較しています。

 著者によれば、ハリー・ポッターでは「悪」は「絶対悪」であって、外部にあるものだそうです。ところが、千と千尋ではそうではないのです。「悪」とは自分の中にもあり、いうならば、「影」だそうです。

 これを読んで、合点が行きました。私にとって、ハリーはなんとなく一元的で面白みに欠けると思っていたのです。逆に、千尋は登場人物に深みがあって、おもしろい。千尋に登場する湯婆は、結局は子供を溺愛していて、その子供である坊にとっては、悪人ではないわけですから。私は、湯婆に入れ込んでしまいましたし。

 一冊の本を何人かで読むと、こういう発見があって面白いです。読書会のだいご味ですね。

2008年10月19日日曜日

産業医研修;禁煙治療について

 昨日は産業医研修に行ってきました。禁煙治療のための講演会です。講義が2コマで50分。ロールプレイもあって、講義ばかりではなかったです。

 ただ、ちょっと緊張しました。知っている人がいない上に、みんな私の父親くらいの年齢のしかも、「お医者さん」ですから。

 そうなると自分が緊張して、いつもの通りにはいかない気がしてしまいました。

 講義は、まさしく依存症治療のものと一緒!依存症の人たちとのかかわりが、私の今後にも生きるなあと思って、うれしくなりました。

 ロールプレイはちょっとつらかったです。緊張してるなあというのがよくわかりました。できれば、アイスブレークみたいに、お互いを少しほぐせるプログラムがあったらよかったかと思うのですが、自分の講演でもいかに緊張させている可能性があるかとわかりました。

 というのも、私はいつも大体ぶっつけで質問するので。

 最近は禁煙治療と言っても飲み薬があって、これがかなり楽に禁煙できるのだと会場の体験者の方の意見からわかりました。すごい進歩です。もう苦しい禁煙治療はないのかもしれないと思うと、隔世の感があります。

 ただ、私の場合外来に女性が多くて、今後以下のような問題もあるんだろうなあと思いました。妊婦さんと喫煙の問題です。

ニコチンガムは喫煙する妊婦に有用

提供:Medscape

ニコチンガムと禁煙相談の併用により喫煙本数はやや減ったが、禁煙率の低下はみられなかった。在胎週齡と出生時体重は増加した。

【10月3日】喫煙習慣のある妊婦にニコチンガムと禁煙相談を併用することにより喫煙本数はやや減ったものの、禁煙率は減らなかった。
 一方、在胎週齡と出生時体重は増加した、というランダム化試験の結果が『Obstetrics & Gynecology』10月号に報告された。

 妊娠中の喫煙に対する薬物療法の安全性と有効性を検討する必要性がある」とコネチカット大学医学部(ファーミントン)のCheryl Oncken, MD, MPHらは書く。「非妊娠例の試験で、ニコチン代替療法は禁煙率をプラセボの約2倍にする。しかし、妊娠中のニコチン代替療法が安全で有効な禁煙補助療法かどうかについては、見解が一致していない」。

 同試験の目的は、妊婦の禁煙に関して2mgニコチンガムの安全性と有効性を評価することであった。

 毎日喫煙している妊婦をランダムに2mgニコチンガム(n = 100)かプラセボ(n = 94)の6週間投与に割り付け、その後6週間かけて投与量を徐々に減らした。すべての女性で個別の行動相談を行い、喫煙をやめない女性には、喫煙本数を減らすためタバコの代わりにガムを噛むよう勧めた。全試験期間にわたってタバコの暴露指標が収集された。

 両群の年齢、人種/民族、喫煙歴はほぼ同じであった。プラセボに比べて、ニコチンガムは生化学的に有効な禁煙率を達成しなかった。(投与6週後13% 対 9.6%; P = 0.45; 妊娠 32‐34週18% 対 14.9%; P = 0.56)。

 しかし完全な解析で、ニ コチンガムは1日の喫煙本数の有意な低下(ニコチンガム: ?5.7 [SD, 6.0]; プラセボ: ?3.5 [SD, 5.7]; P = 0.035)およびコチニン濃度の低下(ニコチンガム: ?249 ng/mL [SD, 397]; プラセボ: ?112 ng/mL [SD, 333]; P = 0.04)と関連した。さらに、ニコチン群の出生時体重はプラセボ群より有意に重く(3287 g [SD, 566] 対 2950 g [SD, 653]; P < p ="">

「ニコチンガムは禁煙率の上昇につながらなかったが、ニコチンガムの使用により新生児の健康を推し量る2つの重要なパラメータである出生時体重と在胎週齢が増加した」と著者らは書く。

同試験の限界は、精神の健康問題や物質乱用歴があるなど社会経済的に恵まれていない女性が対象集団の主体であったこと、1日の喫煙本数およびバイオマーカーに対する効果が完全解析でしか認められなかったため、ニコチンガムのタバコ暴露減少効果を明確に示すことができなかったこと、である。

「我々は禁煙と喫煙本数減少の両方でニコチンガムの効果を検討したが、喫煙本数減少の促進を目的に妊娠管理でニコチンガムを常用することは推奨されない」と著者らは結ぶ。

 米国立衛生研究所が同試験を支援した。Glaxo-Smith Kline社はニコチンガムを無償提供した。著者のうち数名は開示情報でPfizer、Glaxo-SmithKline、Nabi Biopharmaceuticals、Ortho-McNeil Pharmaceuticals、H. Lundbeck A/S、Forest Pharmaceuticals、elbion NV、sanofi-aventis、Solvay Pharmaceuticals、Alkermes, Inc、Bristol-Myers Squibb各社と様々な金銭関係にあることを明らかにしている

Obstet Gynecol. 2008:112:859-867.Medscape Medical News 2008. (C) 2008 Medscape

 

2008年10月18日土曜日

医師賠償保険

 m3.comから;

    2008年10月16日       
「勤務医のための医師賠償責任保険(医師賠)入門」◆Vol.1
なぜ勤務医に「医師賠」が必要か
 勤務医・研修医個人が訴えられるケースも 
高月清司(IMK高月(株)代表取締役)
   


 ここ数年、医療事故や訴訟関連のニュースが日常的に報道されるようになっている。こうした医療訴訟などに対するリスクをヘッジするのが「医師賠償責任保険(以下、医師賠)」である。これは病院などの勤務医や開業医が加入する保険だが、勤務医の加入率はまだ高くはない。

 私自身も関係している、メディカルリスクマネジメント情報連絡協議会の推定では、2004年度の卒後臨床研修制度の必修化以降、研修医に加入を義務付ける医療機関が増えたこともあって、20-30代の医師では60-70%医師賠に加入しているもようだが、40-50代の加入率は50%を割っていると言われている。

 従来は医療事故に対する賠償金などの補償は病院が負担してきた。しかし、後述のように病院が医師の責任分まで賠償金を支払えない時代に入っており、自らを守る手段として勤務医の医師賠への加入価値は高い。

 一方、開業医が日本医師会に加入した場合は強制的に医師賠(日本医師会の賠償責任保険)に加入しているので問題はないが、"医師会離れ"が進んでいるとされる中、開業したら開業の形態に合わせた医師賠に加入する必要がある。また、開業して法人化したり、連携する地域の病院に出向いて診療・治療を行う場合、そこで起きた医療事故には自分の医師賠が使えないケースも出てくるので、業務の実態に合わせて勤務医用の医師賠と重ねて加入するようにしたい。

 1.訴訟件数の増加と賠償金額の高額化

 現在、医療訴訟で新規に提訴される件数は年間1000件前後。ここ数年はほぼ横ばいだが、それでも依然として高い水準にある。また、裁判所が抱える医療訴訟(民事)の係争件数は全体で約3000件とされている。弁護士数が急増している現状から、今後、訴訟件数はさらに増えるとの予測もある。

 診療科別では、従来から外科・整形外科、内科、産婦人科の3部門での訴訟が多かったが、今では診療科に"聖域"はなくなった。例えば、今まで訴訟リスクは低いと考えられていた精神科などでも、うつ病で治療中に発作的に自殺してしまった患者の家族が治療ミスを訴え出るなどのケースで訴訟が増加している。

 精神科医が一番心配するのが、診療中の患者が起こした事件が元で、自分の診察ミスとして責任を追及されるケースだろう(例:2000年の西鉄バスジャック事件では、精神科に入院中の少年が許可を得て外出中に殺人事件を起こしたため、この病院に対して批判が集中した)。しかし、日本の判例では賠償責任は直接責任に限定されるケースが多く、今のところ、こうした事例で精神科医の責任が認定されるまでに至っていない。

 賠償金額の高額化傾向も続いている。その算出の基礎となる平均余命(可働年数)や所得金額が増えるに従い、さらに高額化していくものとみられている。

 例えば、2005年2月、福岡地裁で、陣痛促進剤の過剰投与が元で脳性麻痺が残ったとして、9歳の男児の両親が介護費用なども併せて2億6000万円の賠償請求を求めて提訴している。10年前ほど前までは1憶円を超える賠償請求は稀であったが、最近では2億円を超える賠償請求は珍しくなくなった。

 また、最近の訴訟で特徴的なのは、患者側の損賠賠償の請求金額に近い金額で判決が出るケースが増えている点だ。判決は世論に流される傾向が見られるが、患者=弱者救済の流れから、世間一般に"リッチ層"と思われている医師にとって逆風は当分続くかもしれない。

 2.研修医個人も訴えられ、8400万円賠償金請求

 10年ほど前までは、患者側は医療機関を相手取って提訴していた。つまり訴状では「被告:A病院」となっていた。しかし、最近は関係した医師やコメディカルの名前を被告名に連記し、「被告:A病院、B医師」とされ、「連帯して支払え」と訴えるケースがほとんどだ。研修医についても例外ではなく、卒後臨床研修の必修化に伴い、身分と報酬が確立されたことを背景に、ハッキリと責任を課す判決も増えている。

 例えば、2005年1月の埼玉高裁の判決では、抗癌剤の過剰投与で患者が死亡した事件で、病院に加えて、実際に過剰投与した研修医の責任も認め、計8400万円の損害賠償の支払いを求めている。

 さらに、最近では、勤務医であっても医師個人が訴えられるケースも出ている。

 3.病院賠と医師賠の違いが影響

 個人の医師が加入する医師賠のほかに、病院が加入する「病院賠償責任保険(以下、病院賠)」がある。これは勤務医個人が加入する医師賠に、医療施設としての管理責任をカバーするもので、病院賠の補償内容は個人の医師賠と相違はない。 

 異なるのは保険料の仕組みだ。勤務医が加入する医師賠は個人が何度保険を使っても翌年度以降の保険料は今のところ変わらないが、この病院賠は自動車保険と同様、医療事故を起こし保険金の支払いを受けた場合、次年度以降の保険料に大きく影響する仕組みとなっている。

 従って、全国の病院の7-8割が赤字経営に苦しむとされる中、個人医師医師賠加入を義務付け、なるべく保険料に増減のない医師賠の保険から保険金支払いを受けようとする病院が増えるのは、経営上無理からぬことと言える。

(以下、psycho)

 psychoも医師賠償保険に加入しています。それは、医局を離れてまったくのフリーになったときにこれから絶対に必要になるはずだと思ったからです。

 余談ですが、「ER」というアメリカのテレビシリーズがあります。救急治療室の日々を描いたもので、現在第18シリーズまであります。私が見始めた当時は第5シリーズでした。その時にものすごく印象的だったのは、主人公が尊敬する救急医のDr.グリーンが医療ミスで訴えられていて、なんども、呼び出しをくらっていたことです。

 こんなに消耗することは、したくないと心から思いました。

 もしも医療訴訟で被告になったとしたら、それは感情的にも肉体的にもつらいと思ったからです。

 このシリーズを観た人はわかると思いますが、Dr.グリーン本当にいい医者なんです。それが、このような専門外の裁判に出向くエネルギーを使わされ、本業に影響が出ないわけがないからです。だから綿者できるだけ、医療訴訟に巻き込まれないようにしたい、と思い始めたのでした。

 閑話休題。


 医療訴訟の被告になって、敗訴した場合、私ならば補償額は支払いきれないでしょう。だとすれば、賠償できるような保険に加入するしかないと思ったのです。それが、だれも守ってくれないフリーの医者の処世術だろうと。

 アメリカがすでにそうなっている以上、いずれ日本もそうなる可能性があるのです。だから私はそのようにしていこうと思ったのです。

 個人の責任において施行した医療行為で訴えられる可能性は十分にあるのです。まして私は精神科医なので、「言った」「言わない」の世界に陥りやすい・・・。だとすれば、賠償保険の価値はありそうです。

 私は今のところ、医師会に未加入ですが、県医師会の主催する保険に加入しています。

 自分が誠意を尽くして行った医療行為であっても、何が起こるかわからないし、どういう解釈になるかわからないのです。それは、自分に悪意があったか、なかったではないと思えるので、私は保険に加入しています。

2008年10月17日金曜日

懐かしのセンター試験


センター試験、52万4千人余り出願

2008年10月15日 朝日新聞

 来年1月に行われる09年度大学入試センター試験の出願が14日、締め切られた。大学入試センターによると、同日午後5時までに到着した願書は52万 4478人で、昨年の最終日の同時点より5913人多い。内訳は現役の高校生が昨年より8508人多い42万6931人、高校既卒者らが2595人少ない 9万7547人だった。出願は14日の消印まで有効。


(以下、psycho)


 今から20年ほど前、センター試験を受けました。そのころちょうど今頃、どのくらいの人がセンター試験を受けるのか、びくびくしてました。私が受験していたころは、受験者が50万人に届くかどうかが話題でした。


 そのころの私に言いたいです。何人受けても、あなたのすることは同じでしょう、と。


 センター試験を受けて、20年弱がたったというのに、いまだにそのころの夢をみます。もう、だいたい内容は決まっていて、遅刻するか、マークミスをするか、受験番号を書き忘れるか、です。


 試験はいつもつらく苦しいものでした。しかし、センター試験はかれこれ4回受けたので(psychoは3年浪人してますから)、懐かしいといえば言えなくもないです。


 不思議な試験だったといえば、不思議でした。マークシートというのは、なぜ、関連のない出題であっても一つミスをするとなだれのようにミスの波状効果が起こるのでしょうか。


 私の外来に来てくれるちょうど高校卒業くらいの人たちは、就職したり、進学したり、と、おそらく他の人たちと変わりない進路に悩んでいます。最近特に気になるのが、その人たちの親世代の人たちが、その人たちの進学をストレートに応援できないことです。


 感情論ではないのです。経済面で応援できないのです。それが聴いていて本当につらいです。何とかならないのかなあ・・・。


2008年10月16日木曜日

それって・・・。

向精神薬密輸容疑で逮捕 バッグに1万1千錠


記事:共同通信社 提供:共同通信社【2008年10月15日】

 熊本県警は14日、向精神薬約1万1000錠をバッグに隠してタイから密輸したとして、麻薬取締法違反(営利目的輸入)の疑いで、同県上天草市大矢野町中、無職中田(なかた)ひとみ容疑者(47)ら4人を逮捕した。

 調べでは、中田容疑者は実兄ら3人と共謀して1月10日、ジアゼパムなど3種類の向精神薬をボストンバッグ内の衣類に包むなどして密輸した疑い。通関時に門司税関福岡空港税関支署の職員が発見、押収した。

 県警によると、過去5年に全国の税関が一度に押収した向精神薬としては最多という。中田容疑者の自宅からはほかに向精神薬約3万2000錠や大量の食欲抑制剤、利尿剤などが見つかっており、県警はダイエット用などとして販売していた疑いがあるとみている。

 調べに対し、中田容疑者は「自分で使うためで売るつもりはなかった」と供述しているという。


(以下、psycho)

 それって、依存症になっているというのでは?と最後の一文を読んで思いました。この方が、ジアゼパム依存症で、かつ、摂食障害ならこういう薬を買い求めてくるのは理解できるなあと思いました。

 薬を身近に持っていて、安心したいんだろうなと思いますが。

 余談ですが、自分が使う程度の精神科のお薬をもっていても、この方のように逮捕されません。自分が使うくらいの量って、いろんな種類があるにしても、1日4回飲むと仮定して4×28くらいですよね。それを丸ごと持って歩いているというのも、ちょっと、考えにくいですし。家に置いておく分を差し引くとどんなに多くても、10錠くらいずつだと思われますが。
 仮に1日4回内服することにして、法律で決まっている最大量の90日分処方であったとしても4×90日=360錠くらいですよね。

 だからこの方の持っていたお薬の量がいかに多いか、よくわかります。

 薬が身近だと安心できるんだろうなと思います。繰り返しですが。

 販売目的なら違法です。複数の人がかかわっているので、販売目的だろうなと思えますが・・・。それにしても、どれも依存性の高い薬物です。ジアゼパムは医師が処方することを認められていますが、私は基本的に処方しません。医原性の依存症に自分の外来に来ている人をさせたくないので。

 食欲抑制剤と利尿剤が依存症とどんな関係があるのか、わかりにくいかもしれませんが、これはおそらく摂食障害の人たちが使うのです。
 そして、摂食障害も斎藤学先生がおっしゃっているように、立派な依存症です。

 この人が、自分で使うつもりで購入したのなら、立派にこの人が依存症です。

 もしも販売目的で購入したのなら、日本でそれだけこの薬の需要があるということであり、従来言われているように日本では依存症が少ないというのはまったく現状に即していない意見であるということになるのです。

2008年10月15日水曜日

「なかったこと」の心理

村上春樹と橋本治 (内田樹の研究室)





 内田樹さんのことは、おもしろい人だなあと思っています。私にはうまく言葉にできないことを、言葉にして、まして本にしているからですが。それでいて私の、苦手な学校の先生(大学教授だから)。

 しかし、このブログの何日か前に村上春樹がノーベル文学賞を受賞したとしたらという、予定原稿を渡したというくだりがあって、これはその続きなのです。http://blog.tatsuru.com/2008/10/09_1307.php 

 私の橋本治体験も、内田さんが日本の批評家を嘆いているように、ない・・・。ゼロ。自慢ではないがゼロなのです。

 なかったことにするのには、二つの心理があると思えます。
(1)無視、つまり「おれのほうがすごいから相手にしないよ」という尊大さ、と(2)畏怖です。

 余談だが、私は橋本治を「なかったこと」にしているつもりはないのです。したがって、この(1)も(2)も当てはまらないのです。でも、私は(2)の畏怖というか、すごいものに出会いそうだ、という怖さを橋本治に対してもっていて、だから、近づけないで今に至っているのでした。

 おそらく、内田さんが指摘する日本の批評家は自分では(1)のつもりなのだろうけれども、私から見れば、それはじつは(2)なのです。 
 
 自分のそれまでの蓄積を否定されるような怖さがあって、「なかったこと」にしているのではないでしょうか。内田さんはそれをずばりと指摘していないですが(これが内田さんの優しさといえないでしょうか)、そう言いたいのでは・・・。

 あるものを「なかったこと」にするには、(1)か(2)の態度をとることが多いような気がしてしまいます。そう、その態度は多くは、依存症の人たちがもっているのです。

 彼らも、自らの依存症という病を「なかったこと」にしようとしていますが、結局は、そうはなりえません。(1)のつもりでいても、結局(2)に至ってしまう・・・。

 面白いなあ、と私など彼らを診察していて思ってしまうことがあるのですが、そこが彼らのかわいいところでしょう。かわいい、というと馬鹿にしているように聞こえるでしょうか?では、「素敵」と言いなおしましょう。本当に依存症の人は素敵なのだから。

 それにしても、内田樹さんのブログのトラックバックの方法が分からず、勝手に載せてしまいました。すみません。

 、

 

2008年10月14日火曜日

進化する読書;読書とは何か?




 「読書進化論」 勝間和代著 小学館新書 777円(税別)

 私は幼少時から読書好きだったのですが、最近になって「読書とは何だろうか」と自問することが多くなりました。この本はその問いに答えてくれる一冊になり ました。

 結局のところ、現在の自分にとって読書とは、自分の生活にどれだけ自分が読書から得た知識を反映させられるかだということだと、いうことです。こ の本は、その方向性をp22で後押ししてくれたのでした。

 また、その方法までも、私が言語化できていなかったのですが、書かれています。

 ≪本から得られる知識 の多くは、明日からすぐに役立つようなものばかりでなく、思考の補助になるようなツールであることが大半です。したがって、こういったものには、自分の頭 の中で、タグを作って、「この話は、今すぐ役に立つかどうかわからないけれども、この話に関連ありそうだから、まあこの分類に入れておくか」としまってお くのです≫(p101)。

 この二つの文で、私はずいぶん読書をする精神衛生が得られてホッとしました。

2008年10月13日月曜日

「千と千尋の神隠し」;感想

 ようやく観ました。

 申し訳ないのですが、あまりジブリ映画に共感できないことが多かったのです。あれ、といっても「もののけ姫」だけですが・・・。

 でも、「千と千尋の神隠し」はよかったです。共感できました。

 もっとも共感できたのは、人とのコミュニケーションの大事さを徹頭徹尾伝えている点です。前半で釜爺にお世話になったのに対し、リンが千尋に「あんた、釜爺にお世話になったんだろう。お礼は言ったのかい!?」という場面。

 そして、千尋があらゆる場面で、常にカオナシを自分と同じニーズをもつ「人」として、接している点です。

 これが一番この映画の伝えたいポイントだなと、わかります。特に、カオナシなんて千尋のストーカー化しているんだから、全然相手にしなくてもいいのに、千尋は堂々とカオナシと向き合って、彼にこびない。そして、それでもストーカーになっているのに、カオナシの分まで汽車代を出してあげたりして。

 リンも、千尋が自分と違う世界の人間だとわかっていても、同じニーズをもつ対等さを常に千尋に出し続けている。すごいなあと思います。

 私は、そうだろうか。私自身がそのように誰かにでも接することができるだろうかと、突き付けられながら、説教臭くない。

 楽しめます。また、このブログの8月19日の「ハリーと千尋世代の子供たち」という本も、読むと面白さ倍増ですよ。http://psychopsycho-psycho.blogspot.com/2008/08/blog-post_19.html