化学療法施行中の癌患者には不眠症が多い
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提供:Medscape
化学療法施行中の癌患者は一般集団より3倍不眠症になりやすいことをある研究が示した。
Crina Frincu-Mallos
【6月13日】(メリーランド州ボルチモア)化学療法施行中の癌患者は一般集団より3倍不眠症になりやすい,という新たな研究結果が出た。
「そもそも癌と診断されたことに伴う生活のストレスレベルに原因があるが,治療から寛解に至るまで不眠症が持続する率は異常に高い」とロチェスター大学医療センター(ニューヨーク州)精神行動医学部准教授のOxana G. Palesh, PhDらは結論する。
寛解中も不眠症率が高いままであることを示した先行研究を踏まえ,Palesh博士らはこう記す。「これら有病率から,行動的要因が疾患要因と相互作用し不眠症率を押し上げていると考えられる」。
博士らの研究結果は,ここSLEEP 2008:第22回米国睡眠学会年次総会で報告された。
不眠の悪影響
一般集団において不眠症は心臓や免疫機能に影響するなど,多くの悪影響をもたらす。現時点で睡眠不足が癌患者に与える影響は完全に分かっていないが,一般集団の場合と同等かそれ以上の悪影響があると予測される。癌患者が不眠症になると治療効果が低下する可能性がある。また,患者の免疫系に対する影響は疾患の増悪と全生存期間にも及ぶかもしれない。
同研究は,ロチェスター大学がんセンターの大規模地域臨床腫瘍(URCC CCOP)研究に参加した癌患者823例の二次解析である。
参加者の平均年齢は56.9 ± 12.6歳,72.4%が女性,88.7%が白人であった。前治療に関しては68.8%が手術を受け,14.2%が化学療法を受け,11%が放射線療法を受けた,とPalesh博士は言う。最も多い癌は49.7%の患者がかかっていた乳癌であった。32%の患者の癌は転移性であった。
Palesh博士らはこの患者集団で不眠症とうつ病の有病率を調べた。化学療法の施行中は不眠が続き,抗うつ剤治療を行っても緩和しなかった,とPalesh博士はMedscape Psyshiatryに話した。
発表でPalesh博士は,化学療法の1サイクル目開始時,76%の癌患者に不眠症が認められたと報告した。過半数の患者は治療中ずっと不眠症のままで,59%は2サイクル目以降も不眠症状を訴えた。45%は4サイクル目に入ってもまだ不眠が続いた。
博士らは癌の診断によって有意差があることも発見した。「興味深いことに,この患者集団では肺癌患者の不眠症率が最も高い」とPalesh博士は言う。大腸癌患者は最も不眠症が少なかった。これは有害事象の少ない化学療法レジメンのせいであろう,と博士は推測する。
「驚くべきは,一般集団と違って,男女の不眠症率に差がなかったことである」とPalesh博士は記す。また,若い癌患者の方が不眠になりやすいという一般集団とは反対の傾向がみられた。Palesh博士は,化学療法を受けながら仕事や育児をすることから来る日々のストレスの量や,時間的余裕のなさが関係しているのではないか,と説明した。
不眠症と診断された患者は,不眠症の診断基準に合わなかった患者に比べ,気分障害,うつ病,疲労が有意に多く認められる(すべての比較でP < 0.001),と研究者らは記している。
この患者集団のうつ病に注目した場合,26.4%がサイクル1の時点でCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D ≥ 19) のうつ病基準を満たしていた,とPalesh博士は指摘した。「不眠症の臨床症状を呈する患者ではうつ病の発症が多かった」と博士は言い,「パロキセチンなどの抗うつ剤は不眠症状に効果がなかった」と記した。
癌と治療以外にも不眠症の原因が?
「癌の治療中,不眠症が癌の治りに応じて良くなるとは限らない」とJack D. Edinger, PhDはMedscape Psychiatryのインタビューで語った。Edinger博士はデューク大学医療センター心理医学部精神科の臨床教授であり,VA医療センター(ノースカロライナ州ダーハム)の上級心理士でもある。
セッションの議長を務めたEdinger博士は,「不眠症はある程度治りにくい病気であるが,これは癌または癌治療の他にも不眠症を長引かせる要因があることを意味しているのかもしれない。このような要因にこそ目を向け,治療の焦点を当てるべきである」と強調した。
「この研究の論点は,癌治療を始めれば不眠症が治るかどうかである」とEdinger博士は付け加えた。「不眠はうつ病で最も残りやすい症状であるが,うつ病を治療したからといって必ずしも不眠は良くならない。その他の重篤疾患についても同じことが言え,不眠の改善は期待できない」と博士は結んだ。
同研究は一部,米国立衛生研究所の補助金を受け行われた。Palesh博士とEdinger博士は開示情報で同研究に関連する金銭的利害関係はないと報告した。
SLEEP 2008: 22nd Annual Meeting of the Associated Professional Sleep Societies (APSS). Abstract 0698. Presented June 10, 2008.
Medscape Medical News 2008. (C) 2008 Medscape
(以下、psycho)
がんにかかった方たちと何人か今もお会いしています。やっぱり不眠の方は多いです。そういうわけで、上の記事を読んで、やはり、と思ったのでした。
がんにかかって、今までと変わらない生活という方もあまりいないでしょうけれども、寝れないのはつらいと、皆さん同じ話をしてくれます。
夜って、不安が増すから。そうなると、単に眠れないだけじゃなくて、今後のことを考えたり、家族のことを考えたりするのです。それで、余計に眠れない。
私も、記事中のパロキセチン(=商品名;パキシル)はよく使います。効果があるように思うからです。でも、記事ではあまり効果ないようなお話ですし・・・。
でもやはり、がんにかかっている方たちは、うつや不安障害の人が多いと思うのです。それは、人間として理解できるし、当然だと思うのですが、ぴったりと合うお薬を紹介し続けるのが、プロというものではないかと思うのですが・・・。
でも、自分もプロとして、薬の話ばかりしていると嫌になるので、そういう業界関係者も多いと思います。
ちなみに、私はオランザピン(=商品名;ジプレキサ)を使います。意外といいです。がんにかかった人たちは食欲不振にも苦しんでいるので、それを副作用ですが、いい方向へ向けるという意味で。
私はやはり、がんにかかった方たちは、うつが多いように思うのですが・・・。
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