2008年7月11日金曜日

「見えない障害」

最近になって、ようやくという感じです。

「見えない障害」救済を 言語や記憶に後遺症 高次脳機能障害

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2008年7月10日】

高次脳機能障害:「見えない障害」救済を 言語や記憶に後遺症 /奈良

 ◇認定条件欠きながら、勝訴も

 交通事故で脳が傷つき、怒りっぽくなったり聞いたことをすぐ 忘れるなど、さまざまな症状が現れる高次脳機能障害は、周りから障害を負ったように見えず、「見えない障害」とも呼ばれている。昨年12月末、札幌市の 20代の女性が交通事故で高次脳機能障害を負ったとして、トラックを運転していた男性に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は男性側の上告を退け、約1億 1800万円の支払いを命じた判決が確定した。女性は脳の損傷の痕跡がないなど、障害認定の条件を欠きながらも、症状から事故で障害を負ったと判断され た。県内でも同様に、条件を欠きながらも障害認定を求めて裁判で争っている人たちがいる。原告の中には、家族や仕事を失い、経済的に追いつめられている人 たちも多い。当事者らに思いを聞いた。【石田奈津子】

 札幌市の女性の裁判では、女性が97年に母親が運転する軽乗用車に乗った際、市内の交差点で男性が運転するトラックに追突され、記憶力や集中力が著しく低下する高次脳機能障害になったとして、加害男性に損害賠償を求めた。

 1審はMRI(磁気共鳴画像化装置)で脳の萎縮(いしゅく)が見られないなど、女性が障害認定の条件を欠いていたことなどから訴えを退けた。

 2審は事故後の症状や日常行動から同障害と認め、男性に約1億1800万円の支払いを命じた。最高裁は加害男性の上告を棄却し、2審の判決が確定した。

 「時々死にたいと思うことがありますよ」。上牧町緑ケ丘1、無職、森英樹さん(57)はつぶやく。

  森さんは03年6月、最寄り駅のJR王寺駅前からミニバイクで自宅に帰宅途中、交差点で男性が運転するミニバイクと衝突した。頭部外傷、首のねんざなどの 後遺症の他、失語症や記憶障害などの症状が現れた。しかし、自賠責法に基づく後遺障害認定では、労働能力の5%が失われたなどとする「14級」にとどま り、高次脳機能障害など、精神面に関する障害は認められなかった。

 「事故後、私は以前の私とは大きく変わりました」と森さんは話す。勤務していた金融機関で客との約束を忘れてしまう、筋道を立てて話せない、感情を抑えられない--といった症状に悩まされ始めた。

  「自分にとって衝撃だった」のは、事故後、勤務先でとった自分の行動。周りからは「温厚な性格」といわれてきたという森さんだが、仕事上のちょっとした口 論から5歳年上の男性の先輩を怒鳴りつけ、突き飛ばした。「感情が高ぶってコントロールできなかった。今までなら考えられないことだった」と振り返る。

 家族との関係も壊れた。事故当時、森さんは妻と長男夫婦らと同居していた。05年4月、復職を巡って妻と口論。頭を殴り、床に転倒させてしまった。幸いけがはなかったが、妻とはその後、協議離婚した。

 仕事も辞めざるを得なかった。今は、障害基礎年金などを受給し、一人で暮らしている。「次男の子どもがこの先月生まれたのに、何もしてやれない。働けるのなら働きたいが…」と話す。

 森さんは、このような症状は高次脳機能障害の特徴で、自分の後遺障害は5級以上だとして、昨年4月、男性を相手に損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。男性側は「事故と障害との因果関係はない」として争っている。

 最高裁へ上告し、認定を求めていた女性もいる。御所市、無職、根比恵美子さん(59)。06年1月、最高裁で敗訴が確定した。「悔しい。あの事故で私の人生は変わったのに…」とため息をつく。

 根比さんは95年6月、自らが経営する喫茶店の前で、高専生が運転するミニバイクにはねられた。深夜、客を見送っていたところだった。救急車で県立医科大に運ばれ、後日、別の医院で歩行障害、味覚・きゅう覚低下などの診断を受けた。

 事故で根比さんはさまざまな障害を負った。右手の握力が失われ、タバコを持つ手もふらつく。きゅう覚と味覚が失われたため、何を食べてもおいしいと思わなくなったという。

  他にも変化が出てきた。新しい言葉を覚えられない、自分がしたことを忘れてしまう--などだ。「やかんを火にかけていても、そのことを忘れる。きゅう覚も 味覚もないから、気づいたらやかんが真っ黒」。何十人といる僧侶がお経を唱える夢を何度も見るようになった。今は精神安定剤や睡眠薬など1日12錠の薬を 飲んで眠る。

 根比さんも事故後、自賠責法に基づく後遺障害の認定を求めた。認定は労働能力の14%が失われたなどとする「12級」にとど まった。根比さんは高次脳機能障害で7級が妥当として、2000年12月に奈良地裁葛城支部に提訴。以来、裁判で争ってきたが、結果は最高裁での棄却だっ た。問題点は「意識障害が軽度など、高次脳機能障害の判定基準に当てはまらない」という点だった。

 高次脳機能障害は、脳が事故の衝撃で傷つき、認知障害や人格変化を起こす。典型的なな症状としては、注意力や集中力の低下、新しいことが覚えられない、感情や行動の抑制が効かなくなる、的確な言葉が出にくいなどがある。

  高次脳機能障害の認定には3条件あり、(1)MRIやCT(コンピューター断層撮影)などの画像で、交通事故による脳の損傷が認められる(2)事故後、刺 激を受けても反応しないなど、意識障害が一定時間継続した(3)現在、高次脳機能障害に当たる症状がある---のすべての条件を満たす必要がある。

 同障害の患者を多く診てきた「やまぐちクリニック」(大阪府高槻市)の山口研一郎医師は「高次脳機能障害は時に、MRIなどの所見に表れないこともある」と主張する。山口医師が今までに診てきた患者約270人のうち約30人は(1)(2)の症状がなかったという。

 根比さんのケースも同様だ。「頭を強く打ち、傷はないにもかかわらず、事故後様子がおかしいという人がいる。私の検査結果を全国に広げて考えると、事故後、障害が生じても、高次脳機能障害と認められていない人は10%ほどいるのではないか」と話す。



(以下、psycho)

交通事故による外傷やけがで、これまでには予想もできなかったことがおこるのです。

私は、高次脳機能障害の方には外来であったことはありません。でも、自分がそのような人を見逃しているかもしれないし、今後外来でお会いするかもしれないと思ってはいます。

精神科の中には、本当は高次脳機能障害で、精神症状があるという人も多いのではないかと思います。そういう人たちに対して、障害年金が10級台というのは、私にとっては信じられないことです。

障害年金でしか生活を立てられないこともあるだろうし、そうなったら、どうなるのだろうと不安でしかないのに、受給額があまり高くない状態になるなど、考えると自分ならば怖いです。

私の外来にも、交通事故でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまった、高校生の女の子が来てくれてます。私は、極端に言うとこの人も高次脳機能障害に陥ってしまったかも、とおもっていました。いえ、今もその考えはぬぐえません。

交通事故後に、性格が変わったなあと家族も本人も話されるのです。

確かに、少しずつ良くなったのですが、このあとどうなるかなあと思っています。
彼女の診療費は、事故によるもので保険(加害者の方の)で賄われています。

交通事故、つらいです。

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