森達也著「メメント」;怖い著者
「メメント」 森達也著 実業之日本社刊
1600円(税別)
オウム真理教(現アーレフ)の信者たちと一緒に過ごし、彼らの日常の「普通さ」を描写した映画「A」「A2」の監督である著者のエッセー集です。
私は著者 の善と悪の二元論ではない、むしろ善人が悪行をすることが大いにありうるという視点が、本質的なのではないかと思えました。
それは特にp247にある一文 に書かれていると思えました。
≪特異点を作ってはならない。人は誰もが善性を持って生まれてくる。でもその善なる領域が、時としてとても残虐な行為への潤 滑油となる。人は人を殺す。憎悪や私益で、妬みや欲望で。でも人は人を悪意では大量には殺せない。人はそれほどに強くはない。ところが善なる領域が宗教的 な使命感や正義や大義や愛する人を守るとのセキュリティへと紅葉したときに、人は人をとてもあっさりと殺す。それも大量に。しかも善意には摩擦も働かない ≫。
もしかしたら、私は著者の今後の作品を読み続けられないかもしれません。こんなに本質を突いている人は、とても怖いですから。
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