2008年9月24日水曜日

ホットフラッシュ;更年期の「ほてり」の意外な一面

2008/09/22(月)

No.C000087

更年期女性のホットフラッシュは新規の血管障害マーカーか?:SWAN Heart study

ホットフラッシュがみられる女性は血流低下による血管の拡張や大動脈の石灰化が進行しており、ホットフラッシュは中年女性における有害な血管変性を根本的に特徴づけている可能性があることが、更年期女性を対象としたコホート研究であるSWAN(Study of Women's Health Across the Nation)の補助的試験で判明した。ホットフラッシュがみられる女性は有害な血管変性を有することを示すエビデンスがあるが、ホットフラッシュと無症候性の血管疾患との関連は確認されていなかった。

492人の更年期女性で仮説を検証

更年期ホットフラッシュと無症候性血管疾患との関連の評価を目的に、ホットフラッシュ女性はホットフラッシュがみられない女性に比べ、血流低下による血管拡張や冠動脈、大動脈の石灰化が進んでいるとの仮説の検証を行った。SWAN Heart study(2001~03年)は地域住民ベースのコホート研究であるSWANの補助的試験である。対象は、臨床的に心血管疾患がみられず、子宮および少なくとも1つの卵巣を有する45~58歳の女性492人(黒人35%、白人65%)であった。血流による血管拡張の評価には上腕動脈の超音波検査を行い、冠動脈および大動脈の石灰化の評価には電子ビームCTを用いた。エストラジオール濃度の測定用に採血を行った。

おもな結果は以下のとおり。
●ホットフラッシュにより血流低下による血管拡張および冠動脈、大動脈の石灰化が有意に増加した(年齢および人種で補正)。
 ・血流低下による血管拡張:β=-1.01、SE=0.41、p=0.01
 ・冠動脈石灰化:オッズ比1.48、95%信頼区間1.04~2.12
 ・大動脈石灰化:オッズ比1.55、95%信頼区間1.10~2.19 
 
●ホットフラッシュと血流による血管拡張、大動脈石灰化の有意な関連は心血管疾患のリスク因子およびエストラジオール濃度で補正後も維持された。
 ・ホットフラッシュと血流による血管拡張の関連:β=-0.97、SE=0.44、p=0.03
 ・ホットフラッシュと大動脈石灰化の関連:オッズ比1.63、95%信頼区間1.07~2.49

(菅野 守:医学ライター)

[監修者のコメント]

本論文は、更年期の女性患者がよく訴えることが多いが、大したことないだろうと思ってしまいがちな、いわゆる「ほてり」感、ホットフラッシュが、3つの客観的血管検査で血管障害と関連していることを示した点で価値が高い。

このホットフラッシュは女性で月経が消失しかかる時期から閉経初期にかけて最も多く、20-40%の女性が経験するといわれている。ホットフラッシュは、熱感、発汗、さらに動悸として自覚されることが多く、これにより睡眠障害、抑うつ傾向が生じることから、QOLの低下に関わる症状としての認識しかなった。

しかし、本研究は、2週間で一回でもこのホットフラッシュを経験した45-58歳の女性では、血管内皮機能が低下しており、冠動脈・大動脈石灰を認めるリスクが高いことを示した。本研究で使用されたFMDにより測定した血管内皮機能の低下や電子ビームCT による冠動脈・大動脈石灰は、将来の心血管イベントのリスクに関連することが前向き研究においても実証されている。

このホットフラッシュが生じるメカニズムの詳細は分かっていないが、女性ホルモン・エストロゲンの低下と関連しており、発作時にはカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの強力な血管拡張物質が放出されていることを示す報告もある。本研究では血中エストロゲンレベルを補正しても、ホットフラッシュは血管障害と関連していた。

現在、性差医学が注目を集めているが、女性特有の症状である、このホットフラッシュを、今後、臨床医は心血管リスクの指標としてとらえることが重要である。


([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)

文献
Thurston RC et al. Circulation. 2008; 118: 1234-1240.
(以下、psycho)

 私の外来には、女性が多いです。大体、割合としては60%くらい、女性でしょう。そういう中で、ホットフラッシュ、つまり、更年期のほてりを訴える人も多かったですし、今もおられます。

 そういう人たちに対して、上記の記事の話をしたとしたら、どうなるのかなあと考えながら読んでいました。

 どの人もおそらくかなりびっくりするだろうなあと思うのです。ただ、大事なことなので、内科と連絡を取り合いながらやっていこうと思っていますが、「内科にも、受診してください」というのは、医療費も増えることですし、それほど軽く言えないなあと思っていますが・・・。

 他のことを軽く言っているわけではありません、念のため。

 おそらく、採血検査をして、中性脂肪やコレステロールが高い人たちに内科を勧めることになりそうだと思いますが。

 だとすると、今後はこの記事のことが日本でもいえるのか、日本ではどのくらいのものなのか、致死性のものとの関連がどうなのか、知りたいことが増えます。

 それと同時に、私も外来の人たちに対して、伝えていかないといけないです。
 女性医師だと、月経の話もしやすいようですし、閉経のつらさも話しやすいようですから、この強みを生かしていきたいものだなあと思います。

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