2008年10月18日土曜日

医師賠償保険

 m3.comから;

    2008年10月16日       
「勤務医のための医師賠償責任保険(医師賠)入門」◆Vol.1
なぜ勤務医に「医師賠」が必要か
 勤務医・研修医個人が訴えられるケースも 
高月清司(IMK高月(株)代表取締役)
   


 ここ数年、医療事故や訴訟関連のニュースが日常的に報道されるようになっている。こうした医療訴訟などに対するリスクをヘッジするのが「医師賠償責任保険(以下、医師賠)」である。これは病院などの勤務医や開業医が加入する保険だが、勤務医の加入率はまだ高くはない。

 私自身も関係している、メディカルリスクマネジメント情報連絡協議会の推定では、2004年度の卒後臨床研修制度の必修化以降、研修医に加入を義務付ける医療機関が増えたこともあって、20-30代の医師では60-70%医師賠に加入しているもようだが、40-50代の加入率は50%を割っていると言われている。

 従来は医療事故に対する賠償金などの補償は病院が負担してきた。しかし、後述のように病院が医師の責任分まで賠償金を支払えない時代に入っており、自らを守る手段として勤務医の医師賠への加入価値は高い。

 一方、開業医が日本医師会に加入した場合は強制的に医師賠(日本医師会の賠償責任保険)に加入しているので問題はないが、"医師会離れ"が進んでいるとされる中、開業したら開業の形態に合わせた医師賠に加入する必要がある。また、開業して法人化したり、連携する地域の病院に出向いて診療・治療を行う場合、そこで起きた医療事故には自分の医師賠が使えないケースも出てくるので、業務の実態に合わせて勤務医用の医師賠と重ねて加入するようにしたい。

 1.訴訟件数の増加と賠償金額の高額化

 現在、医療訴訟で新規に提訴される件数は年間1000件前後。ここ数年はほぼ横ばいだが、それでも依然として高い水準にある。また、裁判所が抱える医療訴訟(民事)の係争件数は全体で約3000件とされている。弁護士数が急増している現状から、今後、訴訟件数はさらに増えるとの予測もある。

 診療科別では、従来から外科・整形外科、内科、産婦人科の3部門での訴訟が多かったが、今では診療科に"聖域"はなくなった。例えば、今まで訴訟リスクは低いと考えられていた精神科などでも、うつ病で治療中に発作的に自殺してしまった患者の家族が治療ミスを訴え出るなどのケースで訴訟が増加している。

 精神科医が一番心配するのが、診療中の患者が起こした事件が元で、自分の診察ミスとして責任を追及されるケースだろう(例:2000年の西鉄バスジャック事件では、精神科に入院中の少年が許可を得て外出中に殺人事件を起こしたため、この病院に対して批判が集中した)。しかし、日本の判例では賠償責任は直接責任に限定されるケースが多く、今のところ、こうした事例で精神科医の責任が認定されるまでに至っていない。

 賠償金額の高額化傾向も続いている。その算出の基礎となる平均余命(可働年数)や所得金額が増えるに従い、さらに高額化していくものとみられている。

 例えば、2005年2月、福岡地裁で、陣痛促進剤の過剰投与が元で脳性麻痺が残ったとして、9歳の男児の両親が介護費用なども併せて2億6000万円の賠償請求を求めて提訴している。10年前ほど前までは1憶円を超える賠償請求は稀であったが、最近では2億円を超える賠償請求は珍しくなくなった。

 また、最近の訴訟で特徴的なのは、患者側の損賠賠償の請求金額に近い金額で判決が出るケースが増えている点だ。判決は世論に流される傾向が見られるが、患者=弱者救済の流れから、世間一般に"リッチ層"と思われている医師にとって逆風は当分続くかもしれない。

 2.研修医個人も訴えられ、8400万円賠償金請求

 10年ほど前までは、患者側は医療機関を相手取って提訴していた。つまり訴状では「被告:A病院」となっていた。しかし、最近は関係した医師やコメディカルの名前を被告名に連記し、「被告:A病院、B医師」とされ、「連帯して支払え」と訴えるケースがほとんどだ。研修医についても例外ではなく、卒後臨床研修の必修化に伴い、身分と報酬が確立されたことを背景に、ハッキリと責任を課す判決も増えている。

 例えば、2005年1月の埼玉高裁の判決では、抗癌剤の過剰投与で患者が死亡した事件で、病院に加えて、実際に過剰投与した研修医の責任も認め、計8400万円の損害賠償の支払いを求めている。

 さらに、最近では、勤務医であっても医師個人が訴えられるケースも出ている。

 3.病院賠と医師賠の違いが影響

 個人の医師が加入する医師賠のほかに、病院が加入する「病院賠償責任保険(以下、病院賠)」がある。これは勤務医個人が加入する医師賠に、医療施設としての管理責任をカバーするもので、病院賠の補償内容は個人の医師賠と相違はない。 

 異なるのは保険料の仕組みだ。勤務医が加入する医師賠は個人が何度保険を使っても翌年度以降の保険料は今のところ変わらないが、この病院賠は自動車保険と同様、医療事故を起こし保険金の支払いを受けた場合、次年度以降の保険料に大きく影響する仕組みとなっている。

 従って、全国の病院の7-8割が赤字経営に苦しむとされる中、個人医師医師賠加入を義務付け、なるべく保険料に増減のない医師賠の保険から保険金支払いを受けようとする病院が増えるのは、経営上無理からぬことと言える。

(以下、psycho)

 psychoも医師賠償保険に加入しています。それは、医局を離れてまったくのフリーになったときにこれから絶対に必要になるはずだと思ったからです。

 余談ですが、「ER」というアメリカのテレビシリーズがあります。救急治療室の日々を描いたもので、現在第18シリーズまであります。私が見始めた当時は第5シリーズでした。その時にものすごく印象的だったのは、主人公が尊敬する救急医のDr.グリーンが医療ミスで訴えられていて、なんども、呼び出しをくらっていたことです。

 こんなに消耗することは、したくないと心から思いました。

 もしも医療訴訟で被告になったとしたら、それは感情的にも肉体的にもつらいと思ったからです。

 このシリーズを観た人はわかると思いますが、Dr.グリーン本当にいい医者なんです。それが、このような専門外の裁判に出向くエネルギーを使わされ、本業に影響が出ないわけがないからです。だから綿者できるだけ、医療訴訟に巻き込まれないようにしたい、と思い始めたのでした。

 閑話休題。


 医療訴訟の被告になって、敗訴した場合、私ならば補償額は支払いきれないでしょう。だとすれば、賠償できるような保険に加入するしかないと思ったのです。それが、だれも守ってくれないフリーの医者の処世術だろうと。

 アメリカがすでにそうなっている以上、いずれ日本もそうなる可能性があるのです。だから私はそのようにしていこうと思ったのです。

 個人の責任において施行した医療行為で訴えられる可能性は十分にあるのです。まして私は精神科医なので、「言った」「言わない」の世界に陥りやすい・・・。だとすれば、賠償保険の価値はありそうです。

 私は今のところ、医師会に未加入ですが、県医師会の主催する保険に加入しています。

 自分が誠意を尽くして行った医療行為であっても、何が起こるかわからないし、どういう解釈になるかわからないのです。それは、自分に悪意があったか、なかったではないと思えるので、私は保険に加入しています。

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