2008年10月31日金曜日

書評「ダイバーシティ」




 書評 「ダイバーシティ」 山口一男著 東洋経済新報社 1800円(税別)

 この本は二つの部分から成り立っています。前半はフアンタジー、後半は教育劇でゼミの場面を扱っています。

 好みがあるでしょうが私は前半が好きです。

 他 の人が持ち合わせているものをもたない主人公ミナが数々の論理パズルを解き明かしつつ、魔法使いに会ってそれを手に入れるという内容です。
 
 数々のパズルの 中には多くの困難が含まれています。その中で、うっそうとしたさびしい森を通るとき、ミナは幻覚を観るように昔のことを思い出してしまい、そのざわめきに より、孤独感に追い詰められます。

 その時に、ミナは「私はひとりぼっちじゃない。人は自分がひとりぼっちになることを恐れて、自分のことしか考えなくなる から、かえってひとりぼっちになるのです。私は、自分がひとりぼっちになるとは思わない。私はひとりぼっちは怖くはないし、自分のことだけを考える人間 じゃない。だから私は、絶対に、ひとりぼっちにはならないわ!」と口にします。

 この場面が、自分と自分の周りとの関係を肯定的にとらえ、人との関係を気付 くという意味をあらわしているのではないかと思えるのです。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

psychoさん
  拙著の感想をありがとう。最後の部分「この場面が、自分と自分の周りとの関係を肯定的にとらえ、人との関係を気付 くという意味をあらわしているのではないかと思えるのです」というのは、著者にはとても嬉しい感想です。
  論理的には孤独には予言の自己成就の側面があることを「ミナ」が認識した形ですが、その理由はおっしゃるように自己の社会性の肯定的認識なのです。「孤独の森」で「やぎ乳チーズ」と「ランジェのパン」によって喚起される肯定的アイデンティティーには、一方で愛、利他、信頼などポジティブな人間関係への自分の関与の認知とともに、他方で否定的アイデンティティーを生む社会的状況への批判精神も獲得することが大切だということを、どの程度うまく表現できたかは分かりませんが、比ゆ的に描こうとしたのです。

psycho さんのコメント...

 おもいがけず、著者ご本人からのコメントを頂き驚きつつもとてもうれしかったです。ありがとうございました。
 私にとって、ミナの物語は外来に受診してくれる子どもたち全員に伝えたいものです。はからずも彼らは、今はさまざまな大人の思惑により苦しんでいることが多いのですが、実際の彼らには強さや、自分を信じる力があることを伝えたいので。

匿名 さんのコメント...

psychoさん
  ありがとう。素晴らしいお仕事をされているのですね。「ミナ」の物語がそんな風に使えるとすれば嬉しいです。あ、それからChabo!応援ありがとう。