2008年10月29日水曜日

育児不安

 昨日の外来で、3歳の男の子が再度外来に来ることになりました。以前から、多動や発達の遅れなどを主訴にしていた方です。

 と言っても、本人がそういう訴えをしていたのではありません。もっと言うと、親御さんたちでもありません。具体的には、その周りの人がそういう訴えをしていたのです。だから、親御さんたちも病院受診をためらっていました。

 それはそうだろうと思います。私は以前にこの方のお父さんに会ったのですが、かわいがってるなあというのが一目でわかるのです。一緒に遊んだり、一緒にいて話を聞くのが楽しいという方でした。私にはあんまりそういう穏やかな様子では接してくれませんでしたが、周りから言われての病院受診ですから、当然ですし、彼との関係性を見せてくれただけで私はよかったですし。

 ただ、お母さんが以前からなんとなく、子どもと接するのが苦手、ということをぽつぽつと話しておられました。ただ、お父さんがかなり子どもさんの受診を強烈に嫌がり始めたので、いったん中止せざるを得なくなりました。

 その後、別のきっかけで受診再会の運びとなったのです。それが昨日のことでした。

 子どもさんのほうは、落ち着いてきたなあという感じでした。ひとりで穏やかにブロック遊びをし、うまくできた「作品」を見せてくれるのです。「なかなか、かっこいいね」と私が言うと、照れてしまいました。かわいい・・・。

 ただ、お母さんは泣いていました。「自分はこの子がかわいいと思えないし、接し方もうまくない」とさめざめと泣くのです。

 事情を詳しく聞くと、「できちゃった結婚」でなぜか産婦人科医にまで入籍のことで説教されてしまいやり切れない気持ちになったこと、こどもさんが産後すぐに保育器に入るほどの重症となってしまい、全然授乳ができなくてとてもさみしかったこと、初めて授乳したときに看護師さんにこてんぱんに叱られて泣きあかしたこと、2,3か月目にあまりに育児ばかりでつらくなってしまい、人に子どもさんの世話を頼んで外出したところ、夫(子供さんのお父さん)にひどく叱られてしまったこと、をとつとつと語るのです。

 「それって、誰でもあることだと思うよ。若くしてお母さんになったんだし、そういうことあっていいのに」と私が言うと、ますますさめざめと泣くのです。

 実は私はこの方のことがちょっと苦手でした。おそらく、この方自身も発達障害があるのかもしれないのですが、全然コミュニケーションが取れない感じだったのです。

 でも、「なんとかしたい」というこのお母さんの気持が伝わってきて、とりあえず、いっしょに今後もお話をしていくことにしました。一応、お母さんには宿題を・・・。

 それは、叱ってしまったことを書いて、フォローをどうしたか日記にしてもらう、ということです。できるかどうか、まず、やってもらって、ということにしました。

 次回、またお会いできるのが楽しみになりました。

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